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眠らずに頑張るのは逆効果? アスリートと睡眠の話

「ストレスに関連する化学物質を減らし、ヒト成長ホルモンを自然に増やし、回復速度を高め、パフォーマンスを向上させる治療法があるとアスリートに言えば、皆それを実行するでしょう。睡眠はそれらすべてを実現するのです。」 ケイシー・スミス (ダラス・マーベリックス ヘッドアスレティックトレーナー)

https://fatiguescience.com/blog/5-ways-sleep-impacts-peak-athletic-performance/

運動や食事と並んで、「睡眠」はアスリートにとって能力を最大限に発揮するために欠かせない要素です。皆さんは十分な睡眠をとっていますか?

なぜ睡眠はアスリートにとって重要なのか?

睡眠は運動後の消耗を修復するために不可欠です。私たちは睡眠中、ノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返し、脳と体の疲れを回復させています。ノンレム睡眠は寝始めの3時間に多く出現し、体を回復させる時間。この間に成長ホルモンを分泌し、筋肉の修復、骨の形成、エネルギー貯蔵の管理などにとりかかります。レム睡眠は記憶の整理や定着が行われたり、脳にかかったストレスを解消する、脳のメンテナンスをする時間。精神を回復させる時間となっています。

また、体内でサイトカインというホルモンが生成され、免疫系が感染症を撃退するのを助けるため、しっかり眠ることで病気を予防したり、病気からの回復も早くなります。

このほか判断力や集中力、意思決定などの高次認知機能を高めたり、トレーニング中に新しいスキルを定着させるのに睡眠は役立っています。

しかし残念なことに、最近の学生アスリートは十分な睡眠をとることができていないと言われています(European Journal of Sport Science)。全米大学体育協会(NCAA)のアスリートを対象にした調査によると、米国の大学生アスリートは平均して週に27時間から41時間をトレーニングや競技に時間を費やす他、学業面でも高いレベルを要求されます。また、多くの学生がアルバイトをしたり、他の義務を負っていることもあり、少なくとも42%の学生アスリートが睡眠不足を訴えており、5人に3人が夜7時間未満の睡眠で、日常的に睡眠不足であると報告されています。

さらに大会に対するストレスや不安、成績が振るわなかった後の苦悩などで不眠症に悩まされたり、逆に不眠症がストレスや不安の感情を高めるという悪循環になることもあります。他にも夜間の激しい練習が体温を上昇させ入眠を妨げたり、筋肉痛の痛みなどで深い睡眠が困難になってしまう場合もあります。

練習熱心で休めない人ほど陥りやすい睡眠不足。パフォーマンスの低下の原因をトレーニング不足だと安易に考えず、逆にトレーニングのやり過ぎではないかと疑うことも必要です。運動と休養と栄養のバランスを保ってトレーニングを行い、「回復」の時間を必ずトレーニングとセットにして捉えることが大切です。

アスリートはどれくらいの睡眠が必要か?

一般的には、毎晩7時間~9時間の睡眠が推奨されています。青少年は8時間~10時間の睡眠をとるべきで、特に学生アスリートの場合は少なくとも9時間か10時間以上とった方が良いという研究結果が出ています。プロアスリートは、毎晩少なくとも9時間の睡眠をとり、睡眠をトレーニングや食事と同じように重要視することが推奨されています。

「世界最速の男」ウサイン・ボルトやテニス界のヴィーナス・ウィリアムス、マリア・シャラポワの睡眠時間は10時間。彼らも睡眠を大切にしています。トレーニングとはいえ、1日の半分弱を寝て過ごすということはインパクトがありますね。

睡眠時間はトレーニングの度合いによっても異なります。つまり、激しいトレーニングや競技の後にはより多くの睡眠を必要とします。不眠症の人など睡眠が浅い人にはお勧めできませんが、不十分な睡眠の後に仮眠を取ることはアスリートにとって有益です。睡眠不足が予想されるアスリートは前日の夜に睡眠時間を延長することも効果的です。大会などのイベントの前、激しい試合の前、病気や怪我の時などは、追加で睡眠をとることをお勧めします。

睡眠がスポーツのパフォーマンスに与える影響

睡眠の質と量の向上がアスリートにとって非常に有益であるという証明が、複数の研究で明らかにされています。運動能力に睡眠がもたらすメリットを幾つか紹介しましょう。

  • スタンフォード大学で行われた男子バスケットボール選手の研究では、1日に平均2時間近く睡眠時間を増やした結果、ハーフコートとフルコートでのスプリントの両方において選手のスピードが5%向上し、フリースローの精度が9%向上した。反射神経もよくなり、選手たちの幸福度も向上した。

  • 睡眠時間を10時間に延長した男女の水泳選手にも多くのパフォーマンスの向上が見られた。飛び込み台からの反応速度が速くなり、ターンタイムが向上し、キックストロークが増加。15mのタイムも向上した。さらに、これらのアスリートの気分は改善し、日中の眠気や疲労が減少した。

  • 男女のテニス選手では、睡眠時間を9時間以上に増やした選手はサーブの正確さが約36%から約42%へと大幅に向上し、より良い成績を収めた。選手たちは眠気を感じることも少なかった。

アスリートのための4つの睡眠のヒント

十分な睡眠をとるにはトレーニングと同じように努力が必要です。アウェイゲームへの移動、早朝からの練習、夜遅くまでの試合、競技のストレスなど、アスリートにとってさまざまなことが睡眠の妨げとなるため、以下の4つの対策を日課にしてみましょう。

  1. 規則正しい生活をする。いつもの睡眠スケジュールを維持する。毎日、同じ時間に寝て、同じ時間に起きる。

  2. 旅先では新しい環境に慣れるための時間を確保する。スポーツ大会のために旅行する場合は、数日前、あるいは数週間前に現地に到着するのがよいでしょう。それによって体が慣れ、通常の睡眠スケジュールに入る時間も確保できるようになります。

  3. 睡眠薬は避ける。市販の睡眠導入剤は睡眠の質を乱し、翌日のパフォーマンスを低下させる可能性が高いです。深呼吸など、寝る前の自然なリラックス法に頼るのが、より良い方法です。

  4. アルコールとカフェインを減らす。競技の2~3日前からカフェインやアルコールを控えましょう。

せっかく練習で培った筋力・技術・知力も、睡眠不足が邪魔をして思うような結果を出せなかったらあまりに勿体ないですよね。スポーツでも勉強でも、「眠らずに頑張る」より「しっかり眠る」のが能力アップの新しい常識となっています。休養もトレーニングの一環として取り入れて、よりよく動く体を体感してみてください!

【参考文献】

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