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サービスデザインフェーズで、デザイナーはどんなことを考えているのか

Sun*が提供するクリエイティブ & エンジニアリングサービスでは、クライアントのビジネスデザインフェーズにおけるコンセプトメイキングからサービス開発までを一気通貫で伴走します。本記事では、Sun*のデザイナー・竹本慶太郎と三角由紀乃に、サービスデザインフェーズにおけるデザイナーの真価や、ビジネスデザイナーとの連携、クリエイティブ視点の用い方などについて聞きました。


一歩目から共に踏み出すSun*デザイナーの仕事

——サービスデザインフェーズでのデザイナーの目的を教えてください。

竹本:「プロダクトにどう反映させていくのか」を深めていくのがサービスデザインフェーズです。サービスデザインフェーズを経てプロダクト開発フェーズにつながっていくわけですが、もちろん、ただつなげればいい、というわけではありません。課題を捉えて、その課題を解決するソリューションを定義し、それをどう実装していくかを考えアウトプットするのが、僕らの仕事です。

三角:クライアントによっても、どの程度自社内でサービスの構想が練られているかは異なります。「ここまではちゃんと検討できている」、「ここは仮説が立っている」、「こっちは全くわかっていない」など、クライアントの現状を把握し、そこから自分達が取り組むべきことを探していきます。

——サービスデザインフェーズでは、不確定要素が多く、コストの見積もりも難しいのではと思います。どのように見積もっているのでしょうか?進行の見立て方が知りたいです。

竹本:サービスデザイン領域は、何時間必要という基準がありません。そのため、与えられた工数の中で、プロジェクトを設計するべきかと思います。人間中心設計、デザイン思考、リーンUXという3つの考え方をベースに設計をします。

三角:全体的な理想のタイムラインは引きますが、さっきも言ってもらった通り不確実性の高いフェーズであることが大前提となるので、その上で、その場その場でネクストアクションを臨機応変に変えていますね。足元のタスクを一つ一つこなしていくうちに、次に明らかにすべきこと・設計すべきことが見えてくるので、クライアントと密に相談しつつ動きを変えています。もちろん契約した工数の中での業務にはなってしまいますが、その工数内でできる最善を考えていくので、辿る道筋は常に変化していきます。

竹本:アウトプットの形も、インタビューやリサーチの量も、フェーズや案件によって必ず異なります。自分が今、立っているポイントで核心をついた動きが求められるんです。それに応えるには、何が必要なんだという観点を常に意識し、アクションを決めていくことが大事ですね。

——デザイナーが、サービスデザインフェーズで具体的にどのようなことをしているのかお聞きしたいです。三角さんは、ビジネスデザイナーと共同でプロジェクトにアサインされる機会が多いと伺っています。

三角:そうですね。竹本さんはデザイナーだけの体制でアサインされることが多く、私はビジネスデザイナーと一緒にアサインされる案件が多いです。現在私が入っている4つの案件のうち、3つはビジネスデザイナーと共同で進めています。

サービスデザインフェーズでデザイナーが特にバリューを発揮できているな、と感じるのは、まずユーザーの課題の有無を明らかにすることと、ある場合はそれがどんな課題なのかを特定し、さらにその課題が深いかどうかを探る部分ですね。いわゆるn1顧客の定性情報を取りに行く作業になります。市場性の算出や定量的に競合調査をしていく部分は、ビジネスデザイナーの方が長けているのでそこは持ち回ってお任せしたりしています。

あとは情報整理能力も挙げられると思います。クライアントの納得感を得るために、Miroなどを活用して分かりやすくビジュアライズするのもデザイナーの仕事です。

——デザイナーだけでアサインされる竹本さんは、定量調査などはどのように進めているのでしょうか?

竹本:プロジェクト進行の仕方は何パターンかあります。クライアントがビジネスチームを内包している場合は、三角さんと同じように定性部分に対してのアクションが私の仕事になります。ビジネス側の要件も並行して固まっていきますので、クライアントとコミュニケーションをとりながら合意形成に向けて動きます。ビジネスメンバーの所属している会社が違う、というだけのことですね。

——Sun*のビジネスデザイナーがアサインされることの利点はなにか感じていますか?

三角:やはり、コミュニケーションにおいて大きな役割を果たしてくれているなと感じます。我々はその日まで知らされていなかったけれど、「実は上が決めてしまって……」と、クライアントから突然降ってくるビジネス要件の変更が結構あるんです。でもSun*側にビジネスデザイナーがいれば、要件変更の可能性を事前に確かめながらやりとりを進めてくれますし、それによってデザイナー側もプランB、プランCを用意しながら動けます。懸念事項を前もってリスクとして認識した上で準備ができていないと、作業の遅延につながりかねません。

竹本:ビジネスデザイナーがいないとデザイナーが情報共有のスムーズさまで気にしてカバーする必要が生じてしまいますね。

三角:まさに。あとは、クライアントがビジネス要件を固めきれていない場合ですね。それが判明したとき、デザイナーには壁打ちできるほどのビジネスの専門知識はないので……。ビジネスデザイナーがいてくれると、そこまでカバーしてもらえて助かります。


クリエイティブ視点をサービス開発に活かす

——サービスデザインフェーズで、クリエイティブの視点を用いるとは具体的にどのようなことなのか知りたいです。実際にサービスデザインフェーズでは、なにを考え、発言しているんでしょうか?

竹本:前述したように、人間中心設計・デザイン思考・リーンUXの考え方を基準としています。WHO・WHY・WHATを整理しながら、柔軟かつスピーディに動くことを常に念頭に置いています。

三角:基本的に、クライアント側では新規事業プロジェクトの担当者を立てています。その担当者の方はどうしても、売り方のHowや、売上のフォーキャスト、何年で投資分を回収できるかなどを優位に考えて動いてしまいがちです。一方で我々は、自分達がどんなサービスを作るべきか、を描くのがとても得意です。そこを描くために、クライアントがどんな希望を叶えたいかよりさらに前段階から伴走し、ユーザーの課題の有無、課題の深さはどうか、じゃあn1顧客ってつまり誰で・彼らのこんな課題を解決しないといけないよね、を特定するところから考えています。

竹本:あとはクリエイティブ視点でイメージ図などを用いたアウトプットが用意できることで、クライアント側も想像しやすくなっていると思います。ワクワク感を作れるんですね。

三角:社内の共通認識づくり、解像度上げですね。外部に向けたコンセプト検証の際にも役立ちます。

——それはどのような方法で行うのでしょうか?

竹本:手法はたくさんありますよ。共通認識って、単に同じビジュアルを見ているだけではありません。僕たちはクライアントと伴走することを大切にしています。プロジェクトの最初に行うリサーチの段階からクライアントと一緒に行うことで、プロジェクトメンバー全員が自分ごと化でき、同じ目線で議論できるようになります。

大事なのはずっとコミュニケーションをとり続けること。共通認識をどんどん増やしていく、という感覚ですね。

三角:共通認識の醸成は、開発チームがジョインしたときにインストールしてもらうアウトプットにもなり得るなと感じています。「過去の経緯を伝えた上で、結果的に今これをやろうとしているんだ」というのをインストールすることは開発の要件定義でも重要です。それがない状態で新しくジョインしたPMが主体となると、これまで描いてきたものと違う方向へ機能要件を固めていってしまうケースも過去に何度かありました。

サービスデザインフェーズで考え切っていたことを開発フェーズに活かしていくためにも、クリエイティブメンバーが共通認識を作ったり、ビジュアライズしたりと、きちんと言語化しておくことは欠かせないです。

——ここまで、デザイナーがバリューを発揮している部分についてお聞きしてきました。苦手意識をもっていることはありますか?

竹本:デザイナー個々人によりますが……。僕の場合は、ロジカルに話すのがあまり得意ではないと認識しています。それを自覚しているので、普段から、目的から考える習慣を意識しています。

三角:私はマネタイズの部分が全くわかりません。P/Lとかちんぷんかんぷんです。

竹本:いっぱいあるよね。スプレッドシートの整理も嫌いだし(笑)

——苦手な部分はビジネスデザイナーと分担してやっているんですね。ビジネスデザイナーのサービスデザイン視点と、デザイナーのサービスデザイン視点の違いはあるのでしょうか?

竹本:「n1なのか、そうでないのか」ですかね。僕たちはユーザー目線に立つことを前提として仕事をしています。そこが一番の違いなのかなと思いますね。

三角:Sun*が定めているVDS(バリューデザインシンタックス)の20項目に対して、全てに確かに回答できる状態まで持っていくことがビジネスデザイナーの1つのゴールだと思っています。一方でデザイナーとしては、「VDSにおける”コンセプト”の”ミクロ“の部分を深掘りするのが私たちの役目」ではないかなと個人的に思っています。「サービスデザインは誰かの課題を解決するものであるべき」という人間中心設計がデザインのベースにありますからね。

竹本:僕らは、思考とか、プロセスとか、そういうふわふわしたところから入っていって、発散と収束を繰り返しながら一歩一歩正解に近づけていくという仕事をしているんですよね。この“ふわふわ”である状態が、全然気にならないんですよ。でも、ビジネスデザイナーの方だとひょっとしたら、もっとかちっと決めたいと不安に感じるのかな。

三角:そうですね。ビジネスデザイナーの方は仕事をする上で、マル・サンカク・バツでわかりやすく評価をつけているのをよく見ます。評価とネクストアクションが常にしっかり連動しているのに対し、我々は、ここに何かあるからとりあえずやってみようか、で動いている場面が多いですね。

——もし工数がもっと多かったら、サービスデザインフェーズでやってみたいことはありますか?

竹本:プロトタイピングの少なさを課題に感じているので、そこに工数をかけられたらいいですね。プロトタイピングって紙とペンさえあればできるもので、この作っては壊すを繰り返すことで精度が上がると思います。ついつい最終成果物にばかり気をとられているので……。

三角:私は、コンセプトメイクの段階で開発の見積もりがとれるといいなと思ってます。クライアントからすれば「これ、いくら開発にかかるんだろう」と当然気になります。超概算しか出せなかったとしても、コンセプト段階から開発可能性のある機能を見立てて見積もりを出していけると、クライアントにとってもより現実的に次フェーズを見据えて新規事業開発を進めていってもらえるのでは、と思うことがあります。

あとは、コンセプトムービー作りにも取り組みたいですね。前職ではよくコンセプトムービーを作っていて、あるのとないのとでは説得力が全然違うなと感じています。アウトプットはムービーだけに限らないとも思っているので、さまざまなアウトプットづくりに挑戦してみたいですね。


0から100まで。伴走し続けるデザイナーを目指して

——Sun*では、共通言語として“Sun*のデザイナーが持つべき態度(Sun* Designers Attitude)”を定めています。Sun* Designers Attitudeで大切にされているものを教えてください。

竹本:「挑戦するためにチームをつくる」を頑張りたいと思っていますね。経験や年齢など関係なく議論できる雰囲気づくりや、同じ目線を持って推進できる環境を整えたいです。チームとして機能性や連帯感が向上することが、驚きの創造や成長につながるのではないでしょうか。

三角:たまに、クライアントのオーナーシップの不足に悩むことがあります。なので、共創スタイルで、クライアントの巻き込みをもっと強化したいと考えています。アイスブレイクも一緒にやって、ワークショップにも100%参加してもらって、我々と同じように脳に汗をかいてもらう。「自分たちが作るんだ!」という気持ちを、Sun*からジョインするチームとクライアントとで共に醸成することが大事だと思っています。

そのために、最近ではクライアントにも宿題を出すようにしているんです。相談し合って、一緒に作りましょうという姿勢を伝えられるよう心がけていますね。

——包括的支援を掲げているSun*のサービスデザイナーとして、今後の展望を教えてください。

竹本:一気通貫で、事業創造からサービスの成長まで包括的支援ができるのが、僕らの強みです。Sun*のビジネスモデルとしても、開発につながるのは大事なこと。一人のデザイナーとしても、0→1、1→10、10→100と継続的に携わっていきたいなという気持ちを抱いてます。サービス開発の一歩目からずっと共に走り続けることは、大変な部分がたくさんありますが、今後もクライアントと頭を付き合わせながら価値創造していきたいですね。

三角:我々はコンサルティング会社ではありません。机上の空論で終わらせず、作って世に出す、ちゃんと作り切る。それがSun*の価値だと考えています。もちろん、上流の設計だけをご依頼いただいたとしてもバリューは発揮できますが、やっぱり最後までデリバリーして、なんなら100まで持っていきたいんですよね。その方が、Sun*の強みをよりクライアントに還元できると確信しています。


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