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「マスメディアを主体としたビジネスモデルの進化系」を目指した新規事業。“自分ごと化”して取り組める環境整備が重要に

コロナ禍では、さまざまな産業で「デジタル化」が大きく推進されました。

事業変革を求められた企業も多いなか、実演販売士によるプロフェッショナルな接客を武器に企業成長を遂げてきた株式会社コパ・コーポレーションは、新たな取り組みとしてライブ配信型のクラウドファンディングサービス「わくたん」を2023年8月にリリース。

独自の接客で培ってきた知見を生かした顧客体験。そして、今までにない付加価値を創造するために、Sun*とどのようにプロジェクトを推進し、新規事業を作り上げたのか。

コパ・コーポレーション  取締役営業本部長の磯貝翼氏と、Sun Asteriskの杉本大輔による対談を通して、掘り下げていきたいと思います。


テレビ通販などマス主体のビジネスモデルをより進化させるために新規事業を立ち上げる

── はじめに磯貝様の現在の業務についてお聞かせください。

コパ・コーポレーション  取締役営業本部長 磯貝翼氏

磯貝:弊社の組織体制は、営業本部と管理本部の2つに分かれていまして、私は前者の部門を営業本部長として統括する役目を担っています。

弊社は「実演販売」のリーディングカンパニーとして、自ら商品を企画するところから、テレビ通販や量販店、インターネット通販といった各チャネルを通じての商品販売までを一貫して行うビジネスを展開しています。

その中で、Sun*と新規事業を立ち上げ、責任者として一緒にプロジェクトを推進してきました。

商品に関して開発を行うチームはありますが、システムを専門に担う部門は存在せず、今回はSun*の開発メンバーとともに0→1でプロダクトを作ってきたのです。

── 御社が新規事業を立ち上げようと考えたのは、どのような経緯があったのでしょうか。

磯貝:弊社は今年で26期目を迎える会社ですが、創業は問屋業からスタートしていて、テレビ局やホームセンターなどに商品を卸す事業を主軸にしていました。とりわけ、実演販売という手法を用いているため、テレビ・ラジオ・雑誌に取り上げていただく機会が多く、メディアを通じて商品の魅力が波及していき、購買につながるという商流ができていたわけです。

しかし昨今は、コロナ禍の影響でリアルの現場での実演販売は減少したほか、原材料費の高騰など商品開発に関する課題にも直面しています。
今以上に事業を拡大していくにあたり、マスメディア以外からの集客の仕組み、新たな商品の開発ベンダーを発掘する、これらの課題を解決する新たなビジネスモデルの創出が急務となっていたのです。

杉本:コパ・コーポレーション様から新規事業のご相談をいただいた中で、「新しいチャネルを増やしたい」という要望が事業計画書にも記載されていたものの、当初は具体的な新規事業の内容までは決まっていませんでした。その辺りは「要件をヒアリングしながら柔軟に体制構築できる」というのを提案していきましたね。

また、本プロジェクトはBloom&Co.さんも参画することが決まっていたので、ビジネスデザインはBloom&Co.さんに一任し、開発はSun*で行うという棲み分けを意識しました。

「実演販売のIT化」を実現したライブ配信型クラウドファンディングサービス

── 改めて、Sun*をパートナーとして選定いただいた理由をお聞かせください。

磯貝:その当時に重要視していたのは「ダイナミックな計画が立てられること」「熱量が高くて共創していけるベンダー」という2つでした。

特に、新規事業に共感してもらい、一緒に事業を創っていきたいという思いが大事だと捉えていましたね。いくつかのベンダーにご相談させていただいた中で、Sun*が最も適任だと感じたのは、システム開発経験がない弊社でも、わかりやすく納得感のある提案をいただいたのと、伴走して新規事業を創っていくという体制面が決め手になりました。

──ありがとうございます。今回開発した「わくたん」のサービス概要について教えてください。

磯貝:新規サービスや商品のアイデアを持っている企業、あるいは商品の卸売を行う企業や製造を手がけるメーカーなどが多く存在しているなか、あらゆる産業でコモディティ化が進む時代に、いきなり大量の商品を作って販売してもリスクが高いわけです。

そのような課題を解決するために立ち上げたのが「わくたん」となります。

ライブ配信型クラウドファンディングサービスとして、新規性や話題性に感度の高いアーリーアダプターとなるユーザーにアプローチすることで、新商品を世に放つ前のテストマーケティングや販路の拡大、市場ニーズの調査などに活用できるものとなっています。

クラウドファンディング自体は2010年代から、日本でも根付いていたものですが、弊社としては「ライブ配信 × クラウドファンディング」というコンセプトのもと、安心・安全にユーザーに商品を届けたいという思いがありました。

 ── 御社は実演を通してお客様に商品の魅力に気づいてもらい、購入いただく体験を追求されてきました。こうした中で、新たにデジタル上の接客を伴う新規事業を進めていく上での社内調整はどんな苦労があったのでしょうか。

磯貝:このプロジェクトを企画した際に、実は代表にも話を持っていたんですよ。というのも私が入社した当時、「実演販売をIT化してくれないか」と社長に言われていたのを覚えていて、新規事業を成功させることで、その要望を実現させたいという一心がありました。

今までWebサービスやシステム開発の素地がない中での新規事業立ち上げでしたが、特に社内からの反対の声はなく、社内調整にはそれほど苦労はしませんでした。

受発注の関係性ではないフラットな立場でプロジェクト推進ができた

── 具体的にどのような形でプロジェクトを進めていったのでしょうか?

Sun* 杉本 大輔

杉本:まずはユーザーストーリーマッピングを作成していき、ユースケースやプロダクト体験を整理するところから着手しました。だいたい1ヶ月半くらいかけてマッピングを固めていき、そこから要件定義の詳細を詰めていったんです。

チームの体制としては私含めてPMは2名配置していました。あとは、プロダクトのUIデザインを行うUIデザイナーや、ベトナムのエンジニアチームに開発要件を伝えるブリッジSE、さらにはライブ配信サービスを作る上で技術面でのフィジビリティ調査をするためにリードエンジニアにも入ってもらっていましたね。

その後は要件に沿って仕様書を作成するために、ドキュメンテーションを進めていったんですが、ユーザーストーリーマッピングが作り終わった段階で、我々が当初から想定していたユーザーの要件が膨らんでしまって。このままだと、コストも高くついてしまう状況だったので、磯貝さんに「スコープを縮めたり、機能要件を調整したりする方がいいか」というのを擦り合わせさせていただきました。

結論としては、一緒にユーザーストーリーマッピングを考えながら要件を固めてきたのを考慮し、アップセルする形で、プロジェクトを進めていくことで着地しました。

実際に開発フェーズへ入っても、要所で課題が生じましたが、お互い何か気になることがあれば相談を都度行い、しっかりとした目線合わせを意識していましたね。

「受注」と「発注」の関係性ではなく、垣根のないフラットな立場でプロジェクトを推進できたと思っています。このような関係性があったからこそ、我々のチームも当事者意識を持って、リリースまで走り抜けられたと感じています。

良いプロダクトを作っても、集客が伴わなければ成長できない

── プロジェクトの取り組みは事業開発支援だけに留まらず、当初は与件になかったクラウドファンディング機能の実装や、全員がビジョンを共有するためのユーザーストーリーマッピングなど多岐に広がりました。その過程で、どのような気づきや課題が出てきたのでしょうか。

磯貝:社内にシステム開発を専門に行う部門が存在しない中で、Sun*と共通認識を持ってプロジェクトを推進できるかが正直不安なところでした。ただ、その点に関しては実際に進めてみると、さほど課題には感じずにスムーズなコミュニケーションができたと思っています。

一方でプロダクトの集客面ではサービスコンセプトを活かしたマーケティングの視点を「どのように」「いつ」「誰が」システム開発に落とし込むか、という点ですごく苦労しました。
結果的に走り出しがやや遅れてしまったので現状も課題感として持っています。

せっかく良いプロダクトを作っても、集客が伴わなければ事業成長にはつながらないので、これからはマーケティング面を強化しつつ、プロダクトの認知度やユーザー数を増やしていければと考えています。

── ベトナムメンバーを含めると、40人規模の大所帯だったわけですが、磯貝さんはチームのメンバーとどのようにコミュニケーションをとっていかれましたか?

磯貝:ブリッジSEに入ってもらっていたこともあって、ベトナムチームとのコミュニケーションは特段困ったことはありませんでした。どちらかと言うと、システムよりもニュアンスの部分が強くなるデザインの方が、やりとりしていくなかで苦労したかもしれません。

杉本:そこはSun*としても課題に思っている点です。デザインの力で、お客様やユーザーをワクワクさせるというコンセプトを、サービスコンセプトやロゴに落とし込もうとしても、特に序盤はコパ・コーポレーションさんの要望をうまく踏襲できずに苦しみました。

磯貝:システムは数値化してお伝えすることもできますが、デザインはどうしてもニュアンスに寄ってしまう部分があるので、ここを擦り合わせていくのは難しかったところですね。

人数最大時の体制図

本気で新規事業にリソースやコストをかけられるかが大事

── 今後、接客に強みを持つ企業様がデジタル上での接客に挑戦していくことが想定されます。 御社と同様にこれから挑戦されていく企業様に向け、具体的にアドバイスができることがあれば教えてください。

磯貝:IT分野の事業をしてこなかった企業が、デジタル領域に参入していく文脈で話をすると、「本気で新規事業にリソースやコストをかけられるか」というのが肝になるでしょう。

どうしても、ITに疎い企業だと片手間で考えて、ベンダーに丸投げしてしまいがちになる。その点においては、会社ないし経営層が「自分ごと化して取り組める環境を整備する」ことが重要だと考えています。

弊社も、社内メンバーをアサインして新規事業のプロジェクトを進めていったんですが、既存の業務は一旦剥がして、新規事業だけに全てを注いでもらう環境を作るのを心がけていました。

── 最後にデジタル領域や会社全体として、これからどのようなことに取り組んでいかれるかについてお聞かせください。

磯貝:インターネットの普及やChatGPTの登場で「便利に買い物をする」という体験は当たり前になりました。ただ、インターネットでの購買は利便性に特化しすぎていて、「楽しさ」に欠けている部分もあると感じています。

我々としても、昔から世の中に埋もれている商品を見いだし、日の目を見る商品へと仕立てていくことをずっと意識しているので、「わくたん」を通じて商品の良さをユーザーに知ってもらえるような導線を作っていきたいと考えています。

杉本:「わくたん」はサービスとして生まれたてなので、ビジネスとして成長していくところまで伴走していきたいですね。単に開発の支援だけではなく、ビジネス全体の支援ができるようにこれからも一緒に取り組んでいければと思います。


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