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Design Salad vol.1~どうなるデザイン?最前線デザイナーたちが本気で未来を考える

「デザインの未来」について考える対話型プログラム「Design Salad」。背景や業界も種々さまざまなデザイナーが出会い・対話し・混ざりあい、実践から得た知見を共有しあいながら「デザインの未来」を探索していくプログラムです。

10月1日の記念すべき第一回目では、IDEO Tokyo シニア・デザイン・リードの堤氏、ヴィジュアル・コミュニケーション・デザイナーの進藤氏、元IDEOで建築家・UXデザイナーのSun Asterisk 石川マーク健、モデレーターとしてSun Asterisk UXデザイナーの早川 大貴が登壇しました。
今回は、このイベントの内容を一部抜粋しながらご紹介していこうと思います。

トークの始まりは、「デザイナーが活躍できる環境」についてのディスカッションから。良いクリエイティブが生み出される環境づくりについてや、過去経験してきたなかで「クリエイティブを追求するうえで居心地の良かった場所」について、各自の経験から議論が交わされました。

変なことを自由に言える、聞ける雰囲気づくり

堤さんは「”変なことを言える環境”(がいい)。間違っているとか関係なく変な事を言う事が良しとされていて、みんなが『いい!』『おもろい!』と言いあえる環境がないと、うまく自分を発揮できずに萎縮してしまう」と語りました。「だからこそ、みんなの変なところが出てくるようにファシリテーションをすることを意識している」

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たとえクライアントが伝統的な会社で新しいことへの挑戦が難しそうであっても、相対する担当者は心のうちにやりたいことを実は持っている、とも語ります。
そんな想いを開放するために、「今、全て(の制約)を取っ払ったら、本当は何がしたいんですか?」とあえて堤さんは投げかけると言います。正解のない、半ば無責任に”変な事”が言える雰囲気を意図的に作りだすことで、クライアントの本音を引き出して巻き込んでいくことができると話しました。

また、クライアントとのプロジェクトワークの話を受け、マークは「(クライアントの)意見を全て聞いてしまい、上下関係ができてしまうと、いいものを創るという本質が失われてしまう。そういう意味でも、ざっくばらんな関係性を築くことが大事」と語りました。

カジュアルなフィードバックコミュニケーション

デザイナーが活躍できる環境から派生し、デザイナーが成長できる環境についても言及されました。進藤さんはこの点について「大学時代のカジュアルなフィードバック文化をいつでも思い出す」と言います。

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進藤さんが通っていたアートスクールでは、パフォーマンスアートに精通している人やサウンドデザイナー、トラディショナルなアート系のデザイナーなどさまざまな人がいたそうです。カフェで会う友人に話しかけると、取り組んでいるスケッチや課題を見せられ、「どう思う?」とカジュアルなフィードバックを求められることがしばしばあったと言います。この体験を指して進藤さんは、「視点の違うさまざまなバックグラウンドの人たちが、カジュアルなフィードバックを投げかけ合うことができる場でこそ、初めてデザイナーは成長する」と述べました。

みんなでよくするクリエイティブ文化とは

『デザイナーが活躍できる環境』から、話は『日本と海外のクリエイティブ文化の違い』について展開していきます。「日本人は良いと思っていても、良いと言い切る事が苦手。たとえばデザインの現場では、良いと言われないことがデザイナーの疲弊につながってしまうこともある」と堤さんは語ります。

日本のプロジェクトにおいては「否定されがち」とマークは語り、「チームでアイデアを出す。それはないなと思うものであっても、どうしたらそれがもっと良くなるかをみんなで考える文化が大事」と話を受けました。

続いてトークテーマは『デザイナーの多様性と専門性』についてです。
専門性100%多様性100%というデザイナーはおそらくいないでしょう。スピーカーたちの、これまでの専門性と多様性の変化についてお話しいただきました。

好きなことや得意なことが専門性。好きな事をみんなとやるためのツールが多様性

遠藤さんは、「仕事を通じて専門性を広げた」といいます。
「最初はグラフィック、2D、タイポグラフィーなどトラディショナルなグラフィックデザインから入り、その後会社でデジタル体験を考えるところに関わる中で、3Dソフトやイラストレーションなどに携わり自分のクラフト領域が広がっていった」

また、堤さんは専門性を持つことに疑問を持っていたが、振り返ればと「専門性を持っていたことが良かった」と語りました。
「専門性とは『得意なこと』だと思う。好きな事があり、得意な事があるなら、それを突き詰めることはすごく大切なことであり、それが専門性になる多様性の部分は後からでも身に付くので、専門性は学ぶというより、自分の好きなことをとりあえずやっておこうということ」

好きなことを追求してみた事例として「高校生の時からすでに建築家になろうと思っていた」とマーク。「大学に進んだあと、建築事務所で働くうちに日本の建築業界の難しさを知って。インテリア分野に方向転換することになりました。インテリアでは人の行動や体験が重要になってくると知り、さらにIDEOで人間中心設計やデザイン思考という考え方に出会いました。建築は空間をどう面白く作るかに重点を置いていて、人間中心とは正反対の考え方で作られていると感じました。

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そんな中、通っていた大学では、全ては空間デザインにつながるという思想で、建築学部だったが図面を書いたり模型を作るだけではなく、建築系のスタジオの他に映画制作スタジオやデバイス制作系スタジオなどがありいろんな表現ができる大学だった。その大学での経験と自分がグラフィックも3Dも作ることが好きだし、最近はコーディングをやっても面白そうとかやりたいことが次々出てきているので、結局色々繋がっていてなんでもできるんだな」と気づいたと語ります。

しかし、「自分の専門性は建築であるので、チームでプロジェクトがあり自分よりグラフィックの専門の人がいればその人に頼りたい。ただそこで大切にしているのはいろんなものを見ていく中で、何がいいか/悪いかを判断し、例えばグラフィックの専門の人がいいものを作ったと思っていても、自分が違和感を覚えれば、一緒にディスカッションする。それが、自分の専門性を深める学びになる」と話しました。

専門性の獲得の仕方

では、どのように専門性を広げていくとよいのか?
ずばり、「自分がやっていて楽しいことを突き詰めることが大事」と堤さんは語ります。

「例えば、大学にデザインリサーチ学科なんて学部はないと思いますが、私はデザインリサーチャーとして専門性を持っています。大学時代には文化人類学を学んでいて、コピーライターとしての経験も積みました。つまり、これらの学びや経験は全てデザインリサーチの一部で、これらが集まってデザインリサーチャーという専門性を獲得していると言えます」

好きな事がわからない人は、常に自分の感覚に問い続けること

とはいえ、好きな事がありすぎる人、反対に好きなことがない人はどうやって、専門性を身につけるべきなのでしょう?

この問題については難しいという前置きをしつつも「本当に窮地に立たされた環境であればみんなやりたいことをやると思う。いろんなものを学べる環境にあるからこそ、自分が本当に何がしたいか見失ってしまう。死ぬか生きるかの体験をするような、窮地に立つサバイバル体験をしてみるのもありかもしれない」という意見がスピーカーのディスカッションから生まれました。「いろんなことができる環境に恵まれているからこそ、とにかくいろいろやってみるのもいい。その中で大切なのは、【これは自分にあっているのか、好きなのか?】を常に考え続ける事」

では、この先デザイナーは変化の激しい時代でどのような存在になっていくのでしょうか?

リサーチを通して本当に良いものを見つける存在になる

マークは、「デザイナーにとってリサーチ部分が重要になっていく可能性」について言及しました。「Sun*のプロジェクトの中でもデザイン思考のプロセスを用いてリサーチをやっているが、この部分はどこまでいっても時間をかけて人間がやるべきこと」。

さらに自分の知識だけに頼るのではなく、リサーチから得られたインスピレーションが大事であるということに言及もしながら、「デザイナーはいいアウトプットを出すというより、どのようにリサーチをして、どうやっていいものを見つけていくかという役割に変わっていく」と語りました。
堤さんは「デザインリサーチには、ユーザーに全てを合わせたら面白いものなんてできない、平均的なものしかできないという意見もあります。でも、デザインリサーチの役割はとして、『まずはユーザーの頭の中をインプットし、自分の頭もユーザーになりきってってみて考える』ために必要であり、そのインプットの上でデザイナーは何ができるのかが腕の見せ所」と補足しました

ユーザーにサプライズを届ける存在になる

一方で堤さんは、「主観の重要性にも注目したい」と語ります。

「どのようなものを出してみんなをハッピーにしたいのかという主観(意志)がないと、世の中に面白いものが増えていかないと思っています。ユーザが何を求めているのか知ることは大事な一方、繰り返しとなりますが決してユーザーが全てを知っているとは限らないと理解しておくことが大事。もっと驚かせてよ、面白いものを見せてよと、ユーザーはサプライズを常に待っているので、サプライズをユーザーに見せてあげるのがデザイナーの役割であり、サプライズに行き着くまでの過程がリサーチ」

ちなみに、リサーチの中でデザイナーみんながエキサイトした部分を深ぼったり、自分は興味ないけど他の人がおもしろいと思ったところを共有し合うと、良いポイントが見えやすくなるというコメントもありました。

まとめ

第1回目のDesign Saladはいかがでしたか?
クリエイティブな環境を創造する話しから、実際にデザイナーに求められる視点まで終始ワクワクする内容ばかりでした。
今後もDesign Saladはさまざまなゲストを招きながら展開予定です。次回以降の予定もぜひこちらからご確認ください。

また、Design Saladでは日々デザインの力を信じてUI/UXを突き詰めるデザイナーの皆さんのためのコミュニティも運営しています。こちらの参加を希望する方は、フォームよりぜひ登録をお願いします!(一部審査が発生します)

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