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【デザイナー対談】作っては壊すというマインドをクライアントと共有することで生まれる信頼と共感

Sun*のデザイン組織におけるケイパビリティのひとつであるコンセプトワーク。

デザイン思考を用いて、クライアントの本質的な課題解決につながるアプローチを考え、プロジェクトのゴールに向かって取り組んでいます。

今回はインテリア材料の専門商社として創業90年の歴史を持つ株式会社遠藤紙店の事例を紹介したいと思います。

Sun AsteriskでUXデザイナーを務める石川マーク健、竹本慶太郎の両名による対談を通じて、クライアントの課題をどう汲み取り、コンセプトワークを行ったのか。ユーザー中心設計に則って、どのようにUXデザインに取り組んだのかについて、掘り下げていきます。


DXやテクノロジーを活用した新たな販路拡大が必要だった

UX Designer / Marc Ishikawa

竹本:まず、あらためて遠藤紙店さんからオファーをいただいた経緯や、その当時の課題感について伺っていければと思っています。

石川:壁紙を売るにしても、「DXやテクノロジーを活用して新たな販路を拡大していかないと、事業として広がっていかない」という危機感をプロダクトオーナーが抱いていました。それを解決するために、どういう新しい売り方があるのかという視点から、プロダクトを作りにいったのですが、最初に考えていたARによるシミュレーション体験を提供して、ユーザーの購買につなげるアイデアは、後にピボットさせることになったんです。

というのも、ARはもともと存在してはいたものの、技術的な精度が発展途上で成熟していない部分も多く、それをプロダクトに組み込むのはユーザー体験としても良くないと考えたからです。そこから、課題解決につながる他のアプローチを考え、プロダクトに落とし込むためにプロジェクトが立ち上がりました。

竹本:バーチャル体験やARを用いて課題解決を図るという仮説があったものの、それだと課題解決できないと考えたわけですね。

石川:そうですね。ARによるシミュレーションはどこもやっていて、差別化できないというのもありますし、建築家という目線に立って考えても「ARアプリの精度は未成熟」ということも理解していました。

竹本:プロジェクトの設計や体制についてはどのように作っていきましたか。

石川:プロダクトオーナーのほかに外部のコンサルタントが2人いて、ビジネス面についてはカバーされていました。Sun*に期待していたのはデザイン面で、「デザイン思考を使って新しいアイデアをどのように考えるか」ということにフォーカスし、プロジェクトの設計を行いました。

プロダクト自体は、私が建築家としての経験もあるため親しみやすく、どういうプロセスで設定され、困りごとは何なのか・リサーチする上で対象となるターゲットやヒアリングする内容を把握していたこともあり、想像しやすかったですね。

次にプロジェクトの体制についてですが、若手デザイナーの2名、そしてPMに入ってもらっていました。PMはクライアントとともに、分科会形式でビジネス方面のディスカッションを行い、そこで出てきたものをSun*のデザインチームにフィードバックし、それをベースにデザインアプローチのアイデアを考えていく体制をとっていました。

クライアントからは、プロジェクトの計画を立てる際に「ビジネス面を考えるメンバーは不要」と言われたものの、コンセプトを創り上げたときに、ビジネス観点で精査してもらうプロセスも計画に入れるべきだと思っていたんです。そのため、ビジネスデザイナーとしてのスキルを持つメンバーにもプロジェクトに参画してもらった形です。

竹本:プロジェクトのフェーズごとに担当を決めていましたよね。

石川:スキルセットによって、フェーズごとに任せられる部分は任していくという意思決定をしていました。新卒でもリサーチしたものをまとめることはできるし、頭を使ってグルーピングしていきながら、デザインできるところはやってもらっていました。また、プレゼンテーション資料を作る上では、ある程度のスキルセットを持ったメンバーに任せるなど、うまく役割分担していましたね。

ユーザーの行動を疑似体験することで“自分ごと化”できる

竹本:建築家の経験があるからこそ、その知見をチームメンバーにインストールする際に意識していたことはありますか?

石川:チームメンバーは全員UXの経験がバラバラだったので、常にインストールするという意識を持って接していました。例えば、デザイン思考におけるリサーチで一番重要なのは「どうやって共感するか」という点で、コミュニケーションを大事にし、メンバーに理解してもらうのを心がけていましたね。

また、リサーチの一環として、メンバー自ら壁紙を貼ってみるというのも実施したんです。クライアントから壁紙を提供してもらい、実際に壁紙を貼る体験をすることで、ユーザーの行動を全て経験してもらいました。

また、カスタマージャーニーマップの精度を高めるため、リアル店舗に立ってもらうことも行いました。そこで得られた内容を後日チームメンバーと共有し、リアルとデジタルでの問題点の違いや課題の抽出、再現性の検証などを行い、解決方法を模索していったんです。

竹本:壁紙に貼る体験や店舗でのリサーチは最初から考えていたことなんですか?

石川:リサーチ計画の段階ではすでに頭に思い描いていましたね。どんなプロジェクトであれ、ユーザーの行動を疑似体験できるのであれば、絶対にやった方がいいと考えています。建築に携わっていない人でも、実際に自ら体験してみることでしかわからない学びがたくさん得られ、ユーザーの気持ちや真意を掴むことができ、その体験をプロダクトへ落とし込むのにすごく役に立ちますし、他の商材にも応用できることだと思います。

ある程度の知識を持っている状態で“自分ごと化”して考えられるようになれば、プロジェクトに対しての「問い」の精度がよくなり、さらにメンバーそれぞれが違う体験をすることで、問いの幅も広がる。

そうした疑似体験をしていないと、何か意見を言われた時に「YES」しか言えなくなってしまうんです。UXを突き詰める上では、ユーザーの行動を疑似体験するというステップを踏むのがとても大切になってくるのではないでしょうか。

竹本:遠藤紙店さんの場合は、最初の段階で疑似体験を行ったんですか?具体的なリサーチのプロセスについて教えてください。

石川:まずはユーザーターゲットを決めました。「壁紙を買う」という購買行動だけみても、建築家のようなプロのエキスパートが買うのか、あるいはDIY好きやインフルエンサーが買うのかなど、しっかりとターゲットの分類分けが必要になります。

各ターゲット属性のユーザーがどういう風に壁紙を選定し、貼っていくのかというインサイトは、建築家出身の自分にとっては想像しやすく、その過去の経験をもとにインタビュースクリプトを考えていきました。ターゲットの人たちが壁紙を買うまでのプロセスを分解し、各ポイントで聞きたいことを洗い出して質問事項をまとめていましたね。

ユーザーインタビューでは「人生話を語ってもらう」ことを意識していた

竹本:石川さんは普段、どのようにしてユーザーの「洗い出し」と「絞り込み」を実践しているんですか。僕の場合はクライアントとワークショップを開催し、どこが筋が良さそうかを探っていくんですが、そのあたりについてお聞きしたいです。

石川:まずは自分で考え、アイデアを広げたなかで、デスクトップリサーチを行ったりチームメンバーや知見のある方に確認したりとケースバイケースで対応しています。そのあとに具体的な道筋を立て、クライアントにチェックしてもらうのを意識しています。遠藤紙店さんは、もちろん当て勘みたいなのはあったので、クライアントに的を得たものかどうかの確認を挟みながら進行させていきました。

前提として、情報はいろんなところに転がっているので、それをいかに見つけ、アイデアに昇華させられるかだと思っています。その情報は日本語だけでなく、英語でも検索してリサーチの幅を利かせることも大事ですね。ちなみにデスクトップリサーチでは、YouTubeやInstagramをよく見るようにしています。特にInstagramは、ユーザーがどうプロダクトを使っているのかというのがリアルにわかるので、良質な情報源になっています。

竹本:ユーザーインタビューに際しては、聞きたいことや知りたいことを最初に設定すると思います。それはどの段階で固めていく感じですか?ターゲットを絞りつつ、疑問に思ったことを洗い出していくとか。

石川:一つひとつ質問を書き出していく際に意識しているのは、聞きたいことをなるべく広げられるだけ広げるようにすることです。壁紙の購入を考えてみても、子どもが生まれたのを機に新築の家を購入するところから始まるユーザーもいれば、リフォームで壁紙を新調するユーザーもいるわけで。

こうしたさまざまなケースがある中で「壁紙を変えようと思った瞬間」から考えるのを大切にしています。

竹本:インタビューの中では時系列に沿って進めていくやり方があるわけですが、家を購入するところから考えるのは、「流れの中で捉えたい」という思いがあってのことなんでしょうか。

石川:ユーザーインタビューを実施する際、念頭に置いているのは「人生話を語ってもらう」ということ。壁紙を購入するまでのプロセスを全て語ってもらうのを頭に入れながら、質問を組み立てていくんです。インタビューする側もプロセスを辿っていくことで、各ポイントにおける課題を思い出すことができ、新たな課題に気づくこともある。

Yes/Noの質問を単に聞いていくのではなく、ユーザーにどういう流れで話してもらうのかというインタビューの設計も重要になってきます。もちろん、想定通りに進まないことも多いので、そこをどうナビゲートし、実りのある時間にするにはインタビュワーのスキルも必要になるでしょう。

竹本:インタビューって、かなりライブ感ありますよね。全然スクリプト通りにいかないというか。

石川:自分の場合は「この人にはこれを聞こう」と設定してからインタビューに入るようにしています。もちろん、インタビューの最初の方は難しいですが、次第に慣れていくと聞きたいことにフォーカスできるようになるんですよ。ただ、インタビューの設計の中で、どのようにしてうまく引き出すかを考えるのも大事ですが、やはり場数をこなさないとインタビュースキルは身につかないと感じています。

遠藤紙店さんの場合は、ユーザーインタビューにクライアントも同席してもらい、インタビュー内容を共有することについてかなり気を配っていました。一回でインタビューの内容やサマリを送るのではなく、週2回くらいに分けて、できるだけ細かく複数名のユーザーインタビューのポイントや押さえておくべき点を伝えるようにしていたんです。クライアントにも、ビジネス観点で気になることについては付箋を貼ってもらったりと、どんどんプロジェクトに参加してもらうようなやり方で進めていきました。

今回やってみて感じたのは「付箋の量がすごかった」ということです。自分たちの方で気になったことをまとめてグルーピングしていくのと、実際のインタビュー全てをグルーピングしていき、この2つの山を軸にペルソナの作成をしていきました。

ペルソナに“タイトル”を付けてストーリー設定を行った

竹本:インタビューで出てきた仮説や学びを当てにいくという流れになるなか、そこはクライアントとも目線合わせしながら、プロジェクトを進めていっているんですか。

石川:自分たちが気になったポイントについて、「こういう回答も考えられる」というのを共有していて、そのようなアイデアを蓄積していくのをやっていました。5人、10人とインタビューを進めていくなかで仮説の重要性を見出していき、その仮説に基づいた質問をしていきながら、都度クライアントに共有、確認を行っていました。

ただ、リサーチで出てきたもの全てが、ユーザーの本音を捉えたインサイトになるわけではなく、アイデアとして活かせるものもあれば、課題として抽出できるものかもしれない。あるいはその課題がインサイトに変わる場合やインサイト自体がデザインをする上でのルールにもなるわけで。そういう意味では、色々なものがリサーチで出てくると思っています。

竹本:リサーチで出てきたものは分類するようにしていますか。

石川:そうですね。自分はユーザーが話したことについて全てまとめるようにしていますそのもの単体だったら大事ではないかもしれないけど、実は別でグルーピングしたものと掛け算すれば面白くなる場合もあるわけです。なので、グルーピングして蓄積する作業はしっかりと行うようにしています。

竹本:アイデアの種がグルーピングされていて、何か思いついたらいつでも繋げられるように管理しているわけですね。

石川:幼い頃に経験した、線と線を結んで絵を描くイメージに近いですね。結ぶ番号は書かれていないので、どう繋げていくかは腕の見せ所だと思います。

竹本:何かコツってありますか?結局は場数に勝るものはないと感じていますが、当て勘に頼るのも大事だと最近思い始めていて。

石川:鳥の目なのか、虫の目なのか。物事に対してズームイン、ズームアウトの視点で見ることが大切だと考えています。全体的なシステムとして見るのか、ひとつのコンポーネントに注目して見るのか。全体を把握しながら、詳細を把握し、異なるレイヤーで点を繋げていけるかが肝になると思いますね。

竹本:ひとつ軸が決まれば、そこから考えやすくなりますよね。

石川:どこに軸を置くかも重要ですよね。ペルソナをベースに軸を定めるのか、それともストーリーをもとに軸を作るのかによっても変わってくるわけで。遠藤紙店さんのアイデア発想においては、ひとりのペルソナの軸では収まらず、6人くらいのペルソナを考えて、それぞれコンセプトを立てる必要がありました。

その中で工夫したのはペルソナに“タイトルを付ける”ということでした。「模様替えが好きなお母さん」、「DIYして後悔した男性」などのような形でタイトル付けし、それをベースにストーリーを作っていき、インサイトの中を解決するコンセプトを考えていったんです。そこから、ペルソナごとの市場規模や競合優位性といったビジネス観点を織り交ぜたブレストをPMにやってもらいました。最終的には「ビジネス観点」、「アイデア観点」、「ペルソナ観点」からクライアントに「どの道筋でいきたいか」を判断してもらう流れで進めていきましたね。

竹本:ちなみに3つ全て合体させた軸を作ってほしいという要望に対し、どのように応えたんですか?

石川:3つの軸は、ユーザー体験においてのワンセクションを切り抜いたアイデアだったりしたので、異なるアイデア同士を掛け合わせても、ユーザー体験の中では3つのタッチポイントである以上、どう繋げてひとつのコンセプトに収斂させていくかを考えれば良いことでした。なので、そこまで問題にはならなかったですね。

竹本:ペルソナに個性的なタイトルを付けるのはいい取り組みだなと思いました。最初から一貫して、クライアントと目線合わせしようとしている気概をすごく感じていて。

石川:やはり、クライアントに共感してもらうことが一番大事なんです。また、より良いものを創造していくためにも、クライアントのみならずチームメンバーにも共感してもらうことも心がけています。遠藤紙店さんの場合は、共感してもらうことを、いつも以上に気をつけていたと思いますね。

Sun*に入社する前にやってきたプロジェクトは、時間をかけていろんなことができていたのに対し、Sun*においてはひとつのプロジェクトに集中できないという短い作業時間の中で、クライアントからの共感が得られないのではという懸念があったんですよ。限られた時間の中で、いかに最大限の成果を出せるかを常に考えながら、プロジェクトに取り組んでいました。

訴求するターゲットを明確にするため、ユーザー体験に紐づく3つの軸を提示

竹本:「ビジネス観点」、「アイデア観点」、「ペルソナ観点」というのを決めたのは、どの軸でディレクションしていくのかというのを洗い出したわけですよね。

石川:「どのターゲットに対して訴求したいか」というのを、クライアントにあらためて考えてもらうために3つの観点から軸を作りました。遠藤紙店さんからは、どの軸も素晴らしいという見解を示し、3つを合体させた形でできないかという要望をいただいたんですね。結論、プロジェクトに対してオーナーシップを持ってもらうという意味でも、3つの軸を提案できたのは良かったと思っています。

竹本:この3つの軸に関しては、まだアイディエーションしていない段階だと思っていて、クライアントへの提示の仕方は具体的にどのようなものになるんですか。

石川:ペルソナ、ストーリー、インサイト、コンセプト、市場、ビジネス観点の6つのボードを作成し、クライアントに提示するようにしています。そのボードを見てクライアントに選んでもらうようにしていますね。例えばペルソナAの人は、「膨大にある壁紙の中から選べないので、その人に対しては壁紙を自動的に設定するアプリを作りましょう」といったような粒度まで落とし込んでいます。

そして、ペルソナが選ばれ、大体のインサイトの枠組みができ、コンセプトや狙う市場も固まってきた段階で、もう一度インサイトに立ち戻って「How Might We〜?」(我々はどうすれば◯◯できるか)の質問に変えていく。

そこから、さらにブレストしてアイデアを発散させ、ユーザーストーリーを作り、収束のフェーズでアイデアを洗練させていくというステップを踏みながら、プロジェクトを進めていくことを意識しています。

「作っては壊す」というデザインプロセスが肝になる

竹本:やはり「作っては壊す」というのを前提に、アイデアの選定を行っていくのが大事になってきますね。

石川:最近感じるのは「デザインプロセスに囚われすぎ」ということ。1回のアイデア発散で固まると思い込んでいる人が多いなと。本来、デザインは「作っては壊す」というのを繰り返していくプロセスであり、一発のコンセプトワークでプロジェクトの成功を導けるとは思っていません

竹本:僕の場合も「問い」は何回も書き直すようにはしています。また、アイディエーションも1回では出尽くすことはなく、何回も実施してアイデアを発散していますね。アイデアが出てきても、チームみんながブレストに慣れているわけでもないですし。

石川:ブレストの中で気をつけているのは、価値がなさそうなアイデアでも、点と点を掛け合わせて価値があるものになりそうなものなら、一応考えるようにはしていますね。

竹本:なかなか難しいところですよね。結構、ブレストが頭打ちになっているのもよく見かけますし。

石川:アイデア同士の掛け合わせをするときに、人起点で考えることはすごく重要だと思っています。

竹本:プロジェクトのゴールはどのように設定していたんですか?

石川:完成品を作るのではなく、モックアップと主要画面を作ろうとしていました。ただ、ショートプロジェクトという短いスパンの中でモックアップを作るのは正直難しいことで、要点を抑えながら確認作業をしていくのが重要になります。最終的なアウトプットとしては、ワイヤーフレームのひとつ上のレベル感で、モックアップを作るのを想定していたので、細かい画面というよりもコンセプトが伝わる画面を作りにいきました。

その時は体験を重視していた関係で、選ぶプロセスを楽しくすることだったり、どういう価値を伝えられるかを考えたりと、壁紙を選ぶ体験の共感をいかに作れるかにフォーカスしていましたね。

モックアップで作ったものをPoCで回してみて、仮に成功しなくても、ユーザーに提供する価値さえ見出せていれば、他の方法はたくさんあるわけで、あとはテストを繰り返してブラッシュアップしていこうと考えていました。

工期の延長を言えたのは「作っては壊す」というマインドの共有があったから

竹本:遠藤紙店さんのプロジェクトは、当初予定していた工期から延長を行ったと聞いていますが、その理由について教えてください。

石川:成果物の質が、自分たちの中で納得のいくものに仕上がっておらず、「もう少しお時間をいただきたい」とクライアントにお願いをしたのが経緯になっています。遠藤紙店さんの場合、ワイヤーフレームよりも色付けはされていて、ユーザーにとっても「これだったら使いやすい」と思ってもらえるような体験を生み出すものを成果物として出したいと考えており、自分たちのアイデアや世界観伝わるものを目指していました。

そうなってくると、ビジュアルがとても大事になってくるんですが、そのクオリティに対して自分が納得できず、プロジェクトの期間の延長をお願いしました。

竹本:クライアントに期間の延長を言えるほどの関係性を構築できていたのはすごいなと思いました。最初のコンセプトワークからユーザーインタビューまで、密な連携を意識して動いてきて、「作っては壊す」というマインドの共有ができていたからこそ、クライアントも工期の延長を納得したんでしょうね。

目線合わせができているから、クライアントの共感や「頑張ってほしい」という気持ちの醸成にもつながっている。最後になりますが、石川さんにとって、クライアントとの協業において気をつけていることはありますか。

石川:今回学んだのは「コミュニケーションの量を増やさないといけない」ということでした。コンセプトワークはいろんな人の意見を取り入れて作った方がいいものが出来上がるわけで。プロジェクトの進行において「なぜこれをやる必要があるのか」、「目的は何なのか」を明確にし、コミュニケーションを活発化させないと、質の高いものは出てこないんです。最近もこれらのことを意識しつつ、ある種“指揮者”のような感覚でプロジェクトに取り組んでいますね。

仕事以外の部分でも「あ、これいいな」と思う体験を享受した際は記憶に残すようにしていて、どこかの場面でその体験を応用できないかと考えたり。見るものに対しては全て知識になるので、そういったマインドを持ちながら日常を過ごすことで、引き出しを増やしたり感度を高めたりしています。

竹本:僕も2年目くらいまで、「好きを分解できるようになりなさい」と上司から言われていました。「あ、これいいな」と自分が思ったことに対して分解してみて、周りに話せるようになった方がいいと。また、いい体験のほかにもちょっとした“違和感”にもアンテナを立てておかないと、本質を捉えたインサイトに気づけないと感じています。今日は貴重なお話をありがとうございました。


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