カラス
生まれた時から嫌われ者で、
陰口、挨拶よろしくと、後ろ指をさされる。
不意に小石が飛んでくる。
生きるために、なにかが入った大きな袋を漁る。
それは食べ物の匂いを放っている。
不意に小石が飛んでくる。
仕方なく翼を広げて飛び立った。
視界は見えにくいが、空は広い。
高い電柱の先端で羽を休める。
石に当たった部分が痛む。
当分、この痛みは続きそうだ。
空は青い。
雲は白い。
私は、黒い。
きっと 生まれる世界を間違えたんだと思う。
どこに行っても疎まれて。
何もしていないのに嫌われる。
生きる為に餌を求めてなにが悪いのだろう。
食べ物を探していると、
他の生き物に吠えられて、私は空へと逃げる。
飛ぶこと自体は嫌いじゃない。
地べたを歩く生き物に比べれば、
幾分、空の上は自由がある。
ただ、それでも。
それでも、エサは地べたに転がるものの方が多い。
空で捕まえるよりも
地べたに転がる餌の方が取りやすい。
三日に一回の水浴びを始める。
体の傷口にしみた。
飛び立つために広げた翼で、
高い建物の上でひと休み。
仲間は居ない。
知り合いも居ない
だれも、居ない。
遠い昔に群れを追い出された記憶が蘇る。
長に逆らった罰。
片目はその時に潰れてしまった。
そのせいで、半分の世界はもう見えない。
生き物というのは醜い。
私が醜く思われるように。
私が他の生き物を醜いと思うように。
いや、私が醜いと思うのは、他の生き物の見た目なんかじゃない。
その眼の奥。
黒くてまがまがしいなにか。
それがひどく醜いものだと想う。
私の中にも芽生えてしまったそれは、
もう決して消えない感情。
そう。
誰も彼もが、醜い生き物だ。
人を変えることはできないけれど、誰かの心に刺さるように、私はこれからも続けていきます。いつかこの道で前に進めるように。(_ _)