コロナでB2Bマーケティングはどう変わったのか?

おはようございます。
イノーバ代表の宗像です。マーケティングで日本を元気にすべく、今日も元気に頑張りたいと思っております。

今日は、「ドリルではなく、穴を売れ」という話をさせていただきます。(この言葉は、セオドア・レビットが「マーケティング発想法」の中で紹介した考え方です)

ドリルを売る時代は終わった

以下は、私が社内で営業チームのワークショップで使った資料です。

まず第一に認識しないといけないのが、経済が発達し競争もグローバル化し、異業種参入も進む中で、「昔のように商品を案内すれば売れる」時代ではもはや無いという事です。私も、1998年に富士通に入社した時には、パソコンのカタログを持たされて、浜松町周辺のビルに飛び込み営業をかけた事があります。(パソコンは売れませんでしたが、エクセルのマクロを組む仕事は取った記憶があります)しかし、今の時代にこういう売り方は通用するでしょうか?情報はウェブに溢れていますし、欲しかったら自分で買うよ、という話になるでしょう。

コロナで当たり前になってしまった売り込みアプローチ

上記の資料で書いている通り、「ドリルを売るのではなく、穴を売る」という発想が必要なのですが、多くの会社がいまだにドリルを売ろうとしているのが実態だと思います。なぜそう思うかと言いますと、以下のような事象があるからです。

a)コロナでメルマガが沢山届くようになった。ほとんどが製品の売り込みか、製品の売り込みセミナーのご案内。こちらは関心が無いにも関わらず、配信停止しない限り、永遠と届き続ける。

b)コロナで製造業の会社さんがホームページのリニューアルをするようになった。従来はカタログをウェブにアップしただけのカタログサイトだったが、今度は、「ITのトータルソリューションでビジネスをエンパワーメント」的な謎のスローガンサイトが乱立するようになった。何を売っている会社なのかさえわからない。(少なくとも商品がわかるという意味において)以前のカタログサイトの方がマシなのではないかとさえ思う。

c)HPの改修のお仕事をさえていただくと、例外なく、製品の詳細説明から入っていく。何の課題を解決するのか、お客様にとってどのようなメリットがあるのかが一切書かれていない。

要するに、コロナで以下のような事が起きたと思っています。
1)展示会に出せなくなった。どうしよう?
2)営業が訪問しにくくなった。どうしよう?
3)最近オンライン商談とかいうのが流行りらしい。やってみよう。
4)MAというのが今流行ってるらしい。やってみよう。
5)競合がサイトをリニューアルしてる。うちもリニューアルしよう。

上記から透けて見えるのは、結局、お客様不在であるという事です。お客様が今何に困っているのか?どのようにお客様を助けられるのか?という思考が一ミリもなく、自分達が困った。どうしよう。これやってみようという思考なのです。究極の場当たり思考なのです。

このような思考の結果、コロナで、大量の無関係なメールが届くようになり、多数の製品説明しかしないウェビナーが行われるようになり、問い合わせフォームなどに謎の売り込みメッセージが多数投げ込まれるようになったのです。

私は、このような売り込み型のアプローチは決して通用しないと思っています。なぜなら、人間は本質的に売り込まれるのが嫌いだから。服屋などに行って店員がすかさず近寄ってきて、「何かお探しですか?」って聞かれたら、嫌じゃないですか?「あ、見てるだけです。」って答えますよね?

そもそも何のための企業は存在するのか?

マーケティングにせよ、営業にせよ、ぜひ、考えないといけないのが、我々は、すべからく、お客様の課題を解決するためにビジネスをしているという事です。特に、BtoBビジネスの文脈においては、「顧客の経営課題」と「顧客の業務課題」この二つを解決するべくビジネスをしているのです。

例えば、介護用ソフトウェアを例に挙げます。介護用ソフトウェアは、介護施設で、診療報酬を得るための保険計算をするのを支援する業務ソフトウェアという話になるかと思います。紙で計算する事もできますが、システムで計算すると速いし、分析もできる、という話かと思います。

この介護用ソフトウェアの領域において、経営課題を考えるならば、介護施設の経営者が頭を日々悩ませているのは、介護職員の離職でしょう。一時は注目された介護施設ですが、今や典型的な3K職種として認識されてしまっている。高齢化社会を支える、自分の両親のような人達に幸せに人生を全うしてほしいという、理想とは裏腹に、日々離職が出て、採用に追われる毎日。職員数が定数を満たさなくなると、報酬の受給条件も満たさなくなり、施設経営さえ危うくなるのですから、これは本当に胃が痛くなるような毎日だと思います。(このような厳しい現実に直面しつつ、介護施設を経営している経営者の皆様、そこで働く介護職員の皆様には、心から頭が下がる思いです。)

介護施設のテーマが、「3K職種からの脱却」、「職員が辞めない職場」、本当の意味で、働いて良かったと感じてもらえる「魅力的な職場作り」だとしたら、どうでしょうか?当然ながら、介護ソフトウェアを導入する意味付けやその活用提案も変わってくるのではないでしょうか?

介護ソフトウェアを利用する事で、今までよりも効率的に仕事ができる。あるいは、事務コストが削減できる。この浮いた時間、余ったお金で職場の魅力付けに取り組む事ができる。職場が魅力的になり、職員さんが辞めなくなり、むしろ、毎日笑いが絶えないそんな職場になる、そういう目標を一緒に実現しませんか?というそういうアプローチになるんじゃないでしょうか?

もし、そうだとするならば、お客様にご案内するセミナーやメルマガの内容も必然的に変わってくるんじゃありませんか?

今までのように、介護ソフトの管理画面がちょっと便利になりましたというような新機能の案内や、製品デモセミナーの案内ではなく、職員が辞めない介護施設を運営している、先進的な経営者の話を聞けるセミナーのご案内であるとか、介護施設に強い組織作り・人事制度作りのコンサル会社のセミナー、そういう内容を考えないといけないのではないでしょうか?そういう内容であれば、日々、職員の離職に頭を悩ませ、自分の理想と現実の施設運営の狭間で苦悩している経営者の方に、「ありがとう、田中さん、こういうセミナーを見たかったんだ。これで明日からの施設運営に活路が見いだせる気がする。また前向きに頑張れる気がするよ」と言ってもらえるんじゃないでしょうか?

これは、自戒も込めてなのですが、我々は、「商品」しか見えていません。「自社の商品」が7割。「競合の商品」が3割。お客様の経営課題、業務課題は全く見えてないのです。コロナでマーケティングに取り組む会社が増えてきたのは喜ばしいですが、そもそも、間違った売り方をし続けるならば、むしろ、逆効果だとさえいえると思います。

「すべての商品・サービスは、顧客の経営課題・業務課題を解決するために存在する」
「自社の商品・サービスは、お客様のどのような経営課題・業務課題を解決できるのか?」

今一度このあたりを考えを深めていただきたいと思います。



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