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君は、ほんとうは、いい子なんだよ


小学校の2年か3年の時に初めて本を買ってもらった。正確には、初めて「自分で選んだ本」を買ってもらったのだと思う。
『宿題ひきうけ株式会社』と『窓ぎわのトットちゃん』の2冊だ。もう20年以上前のことだが、今でも記憶に残っている。

特に印象に残っているのは『窓ぎわのトットちゃん』だ。講談社青い鳥文庫版の『窓ぎわのトットちゃん』は私の人生を変えた。

人と違う自分に寄り添ってくれただとか、多様性を受け入れられているのが素晴らしいだとか、大仰なことを言うつもりはない。
ただ、夢中になって、トットちゃんの物語に入り込んだ。
ただ、夢中になって、海のものと山のものを探した。

私が過ごした子供時代は、戦争はとっくに終わっていたし、キャラメルの自販機もなかったし、トイレも当然どっぽんではなかった。それでも夢中になれる魅力がトットちゃんにはあった。

もともと、本を読むのは好きだった。テレビゲームは一切ない家に育ったが、絵本はいっぱいあった。
なんだかよく分からない全集も何シリーズかあった。
小学校の図書室でもたくさん本を借りて読む、読書好きの女の子だった。

それでも「あとがき」まで読んだのはトットちゃんが初めてだった。
トットちゃんを読んで、もう一段深く読書が好きになった。

大学生になり、社会人になり読書以外の娯楽に触れることが多くなった。
インターネットやゲームや映画や…世界には娯楽があふれている。
それでも、時折本が読みたくなって。

実家に帰るとつい読み返してしまうのは、『窓ぎわのトットちゃん』なのである。

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