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葉書の光 【短歌八首連作】


『葉書の光』

あ これはたぶん秋やなぁ 濡れている稲の香りが綴じられていて

絵画のある場所にめがけて悪気なくお前もお前も産まれてしまう

バイオリンの絶叫がまた挟まった なにか降りそうに夕暮れの中

不確かとつぶやく、横目にグッピー、ふたしか、声はまたぼやけつつ

一年に一回くらいは溜まりっぱなしの隅の埃に触れ、確かめる

ふるさとに無い存在は際立って 濃い白色のケトルの背すじ

祖母からの電話をとらず眠るたび僅かに足の指が浮き出る

選ばない言葉を奥へしまいこみ葉書に光るシニャックの岸


この連作は、岡山大学短歌会が発行した機関紙「岡大短歌9号」に掲載した作品です。

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