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ファンタジーアースゼロの日々 パニカス編

  今から20年近く昔、ネットを通じて50人vs50人の陣取り合戦を遊ぶことのできる三人称視点のアクションゲームがあった。それがファンタジーアースゼロだ。これは、そんなファンタジーアースゼロの世界で青春を過ごすたスナガガの思い出話である。

厨二心と役立たず

  ファンタジーアースゼロにはあまり役に立たないというジョブがある。その代表格がパニッシングストライクという技に全振りしたスカウトだ。ハイドという自キャラが対戦相手から見えなくなる技を使い、その状態からのみ使える技『パニッシングストライク』を放つことで、敵キャラクターのHPの7割近くを削り取ることができるという大技だ。
   
   役立たずたる所以は、MPをたくさん使い、ハイドで敵の後ろまで回り込む時間を使ってまでも得られる戦果は1キルだけという効率の悪さにある。さらに上手いプレイヤーには見てから避けられるという弱点まであった。しかしその厨二心くすぐるまさに暗殺者のようなジョブに魅了され、多くのプレイヤーがパニッシングストライクを使いこなし死体の山を気づくことに挑戦したのである。そして侮蔑と愛称をこめて彼らはパニカスと呼ばれた。

男の子はこういうの好きなんでしょ

派手なロマン技と地道な特訓

  スナガガもそんなパニカスに魅せられた一人だった。敵陣に単独で潜り込み、HPが半分ぐらいの敵キャラクターにパニッシングストライクを叩き込む。正直ここまでは簡単だ。問題なのはここから生きて帰らなければならない。何度も生還できずに自爆特攻となっていたスナガガはある方法を考えた。それが崖登りである。

  当時のゲームはポリゴンに少しはあらがあった。本来はキャラクターが登ることのできない崖のはずなのに、何故か崖の中腹ぐらいキャラクター引っかかり、そこからもう一度ジャンプすることで崖の上まで上がることができたのだ。もちろんすべての崖でできたわけではなかったが、多いと一つのマップに数十カ所あるなんてこともあったので、バグ技というよりはみんな仕様と受け入れていた。なんなら、その全てを記載している崖登り専用の攻略サイトなんていうのもあったほどだ。

まだ見られるぞ!


  そんな崖登りだが、すべてのフィールドすべてのポイントを覚えるというのは受験勉強以上に大変そうだったので、スナガガは1つのマップに絞り、徹底的に覚えることにした。戦争状態でない誰もいないマップに訪れ、ひたすらに崖にジャンプを繰り返し、MOBモンスターに追われながら焦ってるときも登れるようにとからだに叩き込んだのである。

パニカススナガガ爆誕

  そんな特訓の成果もあり、ダガー島というマップだけなら、崖を登って撤退するという芸当ができるようになったスナガガ。クリスタルの前で回復中の負傷兵にトドメを刺したり、戦場中央でキルを稼いで崖下へ撤退。着実にキルを稼いでゆく。

  そんな十数キルが安定してできるようになった頃、ある掲示板に書き込みを見つける。「〇〇とか言うパニカスがゴミ」今でこそ何言われてもあんまり気にしないスナガガだが、若かりし高校生にはヘビィに効いた。書き込みに怯えたスナガガはスキルを振りなおし、パニカススナガガの短い人生は終えたのである


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