「舛次崇 静かなまなざし/富塚純光 かたりべの記憶」展

舛次崇さんは、ちょっと読みづらいのですが、「しゅうじ・たかし」さんと読みます。いわゆる「アウトサイダー・アーティスト」です。私はあまりこの呼び方は好きではなく、いろんな理由で「アール・ブリュット(生の芸術)」という呼び方の方が好きなのですが、それはともかくとして、その個展が兵庫県立美術館で開催されたので行ってきました。

舛次さんはアール・ブリュットの総本山のような場所である、スイス・ローザンヌの「アール・ブリュット・コレクション」という美術館に作品が収蔵されているほか、ポンピドゥー・センターというフランスの、こちらは現代美術全般を収集している美術館にも収蔵されていて、つまりはアウトサイダー・アートとかアール・ブリュットといったジャンルを超えて、非常に高く評価されている作家です。

ご覧いただければ一目でわかるのですが、舛次さんの作品はとてもクールでセンスが良く、落ち着いています。静かな日常を落ち着いて切り取った、という感じの作品です。クール、と言いましたが、冷たい感じではなく、むしろ柔らかく、暖かな感じがします。ひんやりした小部屋のような感じ、とでも言えばいいのかな。いわゆるアール・ブリュットの作家としては、かなり珍しいタイプの作風だと思います。

これまで舛次さんは国内外のいろんな美術館で展示をされてきたのですが、今回は舛次さんにとって地元の兵庫県の美術館で、それも個展ということで、本当に記念すべき展覧会になるはずだったのですが、残念ながら個展を目の前にした今年の1月に亡くなってしまったのだそうです。本当に残念です。

会場には生前の舛次さんの制作風景もビデオで流れていたのですが、独特のユーモアの感覚があり(わざと周囲の人を無視して、何度も呼びかけるとチラッと見てニコッと笑ったりする)、こういう暖かい気持ちからこの作品が生まれるんだな、と思いました。

実質的にはこの展示は二人展で、富塚純光さんという作家さんの作品も出ていたのですが(やはりアール・ブリュットの作家)、富塚さんは逆に情報の洪水のような作風で、文字や風景や人物が隙間なく描かれていて、ちょっと圧倒されました。撮影禁止でしたので写真はありません。

「舛次崇 静かなまなざし/富塚純光 かたりべの記憶」展
兵庫県立美術館 ギャラリー棟3階
2021年6月30日(水)~ 7月6日(火)10:00 ~ 18:00

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?