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履歴 セルフライナーノーツ


3rd Album
履歴

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 今まで場所がタイトルになってる曲を中心に作っていましたが、それと並行して、その時作りたくなった曲たちもたくさん作っていました。そんな曲たちが溜まってきていたので、ここらでひとつアルバムとしてまとめようとなり完成したのが、3rdアルバムであるこの〈履歴〉です。


 履歴というタイトルの通り、私が初めて完成させた曲〜最新の曲まで収録されています。動画配信サイトで投稿済のものが殆どであったため、ベストアルバムのような位置づけとしています。そしてベストアルバムには新曲が付きものということから、新曲を3曲(内、1曲は昔書いた未発表曲)を書き、収録しました。


 私は作風が広いと言われることが多く、自分でも自分の曲を新鮮に聴けることが多いことから、複数の人格を内包しているのではないかと思うこともあります。それでも身体は一つですから根底に通ずる何かがあり、それをこのアルバムでは感じていただけると思っています。


扇風機とか雨とか

 「中田ヤスタカは3分間の曲を3分で作る」なんて都市伝説のような話を耳にした日、「私もどれだけ早く曲を作れるだろうか」と〈一日で動画まで作って投稿する〉という挑戦をし、その時にできた曲です。
 当時はその縛りからワンコーラスしか作ることが出来ず「いつかフルで作ってやる」と思っていたのですが、そんな熱意もいつしかどこかへ行ってしまい。
 履歴を制作するにあたり、何年かぶりに押し入れを漁ったらこの曲と再会したのですが、アルバムの一曲目に相応しい尺と内容の曲ではないですか。ということで、そのままでの収録となりました。


手のなる方へ

 私の通っていた大学は、自宅から電車で片道1時間かかるところにありました。当時はスマホなんて持っていなかったので、通学中はガラケーでひたすらにたくさんの詩を打っていた覚えがあります。この曲もその時に書かれた歌詞を使っています。今思うと私の歌詞の殆どは電車の中で書かれているかもしれません。
 最初のデモではもっとテンポが遅くてもたついていましたが、BPMをあげたらしっくりきました。テンポが早くても歌ってくれるのは、本当VOCALOIDの良さですね。いつも酷使しちゃってごめんなさい。
 MVでは〈再放送〉という作業を省くズルイ手を使ったのですが、この曲以降もちょくちょく同じ手を使っていたため、〈再放送P〉という名前が付きそうになったことがあります。


うそつき

 私のはじめての作曲は、小学校の時。ピアノに向かっていたときに偶然生まれましたが、たった8小節のものでした。まだ覚えているので、いつかどこかで使いたいですね。
 次は大学生の時の「夏の泡」という失恋ソングでしたが、色恋に関する言葉を発している自分の声を聴いた時に目眩を起こし、完成を断念せざるを得なかった哀しい曲です。
 その次に出来た曲がこの〈うそつき〉でした。前二曲が非常に中途半端な形であるため、この曲を処女作ということにしています。
 歌詞は友人の遠距離恋愛の様子を聞いて書いたものです。
 MVはめちゃめちゃ気に入っています。是非最後まで見て下さい。


ボクハロボット

 カバーを除く今まで発表した曲の中で唯一歌詞が他作となっている曲です。歌詞はCamilleさんに書いて頂きました(ありがとうございます)。
 歌詞を頂いてから、1時間ほどでメロとコードが決まった安産曲でした。曲を書いた時は外出先で、持ち運べるペラペラのキーボードで作った覚えがあります(あれ、めちゃめちゃ押しにくいんです)。
 歌詞先曲後の人間なので、自分の頭の中に一切ない歌詞から曲を考えるのは、とても楽しい作業でした。また誰かと共作してみたいです(この文章を読んでる奇特なあなた、どうですか?)


あやつりしばゐ

 アルバム制作にあたり書き下ろした新曲です。後述する〈音楽の時間〉は『VOCALOIDについて歌った曲』だったので、その対比として『ボカロについて歌った曲』を作りました。どちらも同じではないかとの声が聞こえてきそうですが、女子アナと女子アナウンサーの違いに似ていると私は思っています。
 この曲の歌詞はなんとVOCALOIDに出会う前に書いたもので、ただの詩として埋もれていました。しかも何故かCoccoのライブの開場〜開演の間に書いたという謎の経歴を持っています。
 しかしそれが何年もの時を経て、何故か私の中のボカロにフィットし、メロディが付き、誕生することになるとは不思議なものです。またその性質から、作詞と作曲のラグがすごいランキング1位の曲となっております。


ブルーブルー

 歌詞の文字数をセクション毎で揃えるという挑戦で作った曲です。リスペクト元はもはや言うまでもありませんね。果物のお方です。
 題名の通りですが、青さについて歌った曲です。未熟であるということ、それに伴う後悔を、普段苦手であまり使わないストリングスに乗せて歌っています。もとい歌ってもらっています。
 個人的にインストバージョンが好きで、よく聴きます。


一輪挿し

 〈世界は言葉でできている〉という番組をご存知ですか。簡単に言うと、穴あきになっている著名人の名言をパネラー達が「当てる」のではなく「超える」という番組なのですが、その回答者の中に歌人の方もよく出ていて。恥ずかしながらその時初めて歌人という職を知り、激しく憧れたのを覚えています。
 結果ただひたすらに短歌を書くという時期があり、その時に生まれたのがこの曲の「哀しみは連続すると言うのなら一輪挿しに飾りましょうか」でした。そこに五感の要素を加えて形にし、ポエトリーリーディングとして作ることにしました。
 (世界は言葉でできているのくだりは完全に蛇足なのですが、本当に大好きな番組で、新作の制作を切に願っているので書いてみました)


雨と別れのrit.

 私は気を抜くとすぐに失恋の曲を書いてしまうという病に冒されていまして、ポップな曲が多いのは実はその反動だったりします。というより、意識しないとすぐ暗い曲を書いてしまうので、意識して明るい曲を書いているといった具合です。
 この曲はその持病が出たって感じですね。歌詞もメロも動画も一気に思いついた感じで書きました。
 私は調声はあまりしないタイプなのですが、今作では気合入れて調声してみました。おそらく最初で最後です。良かったら意識して聞いてみてください。


だったらどうすんの

 書き下ろしの新曲です。iPodで曲を聴いているときに歌詞が降ってきて、その曲に合わせて替え歌のようにして歌ったのが最初でした。そのため、メロディを考えるときに引っ張られないようにすることが大変で、無事綱引きには勝てたと思っているのですが、未だに少々の不安があります。

何かが足りていないなんて
最初から備わってるものを
使い熟せていないだけの
言い訳に過ぎないのよ

という歌詞がとても気に入っています。


音楽の時間

 今までボーカロイドを使用した楽曲をたくさん作ってきましたが、ボーカロイドそのものをテーマにした曲を作ったことはありませんでした。そこでボーカロイドを一人称とした曲を書くことにしました。
 永遠の命とは、置いていかれるということだと思います。多くの死を見つめることになる。そちらへ、いきたくても、いけない。
 でもこんな経験、生きていれば誰しも経験することに気がつきました。大切な人が亡くなってしまうということは、多くの人が目の当たりにすることです。
 だから、結局はボーカロイドであるとか人間であるとかはあまり関係ありませんでした。死は、皮膚の色どころか、材質、有無までも超えて、心を憂させることに、気づかされました。


起きて叶える

 寝て見る夢ではなく起きている時に夢見る夢についての曲です。すなめり史上一番明るく前向きな歌詞なのではないでしょうか。ちなみに、ほのかに感じる性の匂いは完全にYUKI御大の影響です。
 実現させたい願い=幻覚体験と書かれると違和感しか感じないのですが、実はどちらも夢であり、夢なんですよね。不思議です。


ゲームオーバーの先で

 ゲームのメタ要素と向き合ったストーリーの劇中歌として書いた曲です。よって、MVに於いて画面に出てくる文章は歌詞ではありません(ニコニコ動画でコメントありにすると、画面下部に歌詞が出るようにはなっています)。しかし、後半、物語と歌詞が同期していきます。是非とも動画で視聴して欲しい曲です。
 制作の流れとして、ファミコンの会話時に鳴るSEを楽曲に取り込みたい→自身の歌詞ストックから歌詞を選ぶ…までは覚えているのですが、最終的にどうしてこうなったかは詳しい経過を思い出せませんでした。記憶をセーブし忘れたのかもしれません。


重たい回線

 元々詩を描きたい人間でしたが、いつしか曲を書き始め、気づけば動画も作るようになりました。この曲は衝動を丁度逆行するような形でアイディアが浮かび、〈動画を止めたい→無音を作ろう→止まるところを想定しながら歌詞を書こう〉という変遷を辿り、完成に至りました。
 2019年にソフトバンクのCMで同じようなアイデアが使われており、パクられた!なんて自分の中で騒いでいましたが、Youtubeで2桁再生のこの動画が見られているはずもなく、アイディア被りをただただ嘆く結果となりました。


軽い回線(ボーナストラック)

 重たい回線があまりにも止まってしまうので、止まらないバージョンも作成しました。
 音楽の受け取り方は様々だと思います。聴いて感じたことが正解で、作者の意図が唯一解ではない。じゃあこのセルフライナーノーツはなんだと言われてしまえばそれまでですが、それでも音楽は自由に聴いていただきたいし、私も自由に聴いていこうと思っています。

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