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30代最後の一週間で、ぼくが見つけたこれからの行先

「30代最後の1週間を、こんなところで過ごしているなんて昨年は考えてもなかったな…」

7泊8日の岩手県への出張。盛岡バスセンター「HOTEL MAZARIUM(マザリウム)」のベッドで一人寝ころびながら、ふと我に返りました。

昨年の11月に書籍「まちづくり戦略 3.0」を出し、それからあれよあれよという間に色々な話が飛び込んできて、あまりの忙しさに振り返る余裕もないまま、気づけば目の前の風景が1年前とは全く違うものになっていました。

10月28日は、ぼくにとって特別な日でした。40歳の誕生日であり、10回目の結婚記念日であり、会社の7周年でもあります。

悩んだり、躓いたり、失敗したり、脱線したり…色々なことがあった40年でしたが、ここにきてようやく自分の目指すべき道が見えてきたような気がしています。

まちづくりのことだけを考えた30代最後の一週間

30代最後の一週間は岩手県の紫波町で「まちづくりのことだけを考える」時間を過ごしました。

前半は行政職員さんや議員さんに加えて民間メンバーが集まる「公民連携」の勉強会に参加し、後半はまちづくり事業を行う工務店さん向けの勉強合宿を行いました。

地域課題を解決したいと本気で考えているメンバーと密に交流するのはやはり刺激的で、たくさんの学びがありました。日本には、こんなに地域のことを真剣に考えている人が、公共(自治体の職員さんや議員さん)にも、民間にもこれだけいるのかと、頼もしい気持ちになりました。

また、30代は「自分は社会に対してどんな貢献ができるのか」ということに悩んでいた時期でもあったのですが、いよいよその方向性が定まった時間でもあったように思います。

まちづくりを行っている工務店さんが岩手に集結!

40代に入ったこれからの僕の役割は

① 住宅業界全体を変えていくための育成・教育事業
② 「ローカルディベロッパー」という新しい工務店の形を提案
③ 行政と工務店の間での翻訳・編集・連携

なんだな、と道筋がはっきり見えました。

① 住宅業界全体を変えていくための育成・教育事業

「株式会社SUMUS」は、先日7周年を迎え、いよいよ8期目に入りました。支援先は全国に500社以上。一緒に働く仲間も増え、社員数は50人を越えました。

規模が大きくなってもコンセプトは変わらず、これからもさらに気を引き締めて住宅会社の経営課題解決にコミットしていきます。目の前のお客様一社一社に向き合うのはもちろん、そこに加えて住宅業界自体をもっと良くしていくための仕組みづくりにも注力していきたいと考えています。

特に
・後進の育成
・住宅に携わる方々への情報発信、教育コンテンツの提供

が大きなテーマです。

これまではぼくがプレイングマネージャーとして全国を飛び回っていましたが、社内メンバーの育成に力を入れ、住宅経営を熟知したコンサルタントを輩出していくことは大きな課題の一つです。10年後には、今の社員の中に僕を超える人も出てくるだろうと思うので楽しみです。

また、人口減少やウッドショックなど住宅業界を取り巻く情勢は必ずしも追い風ではありません。そんな中、既存の住宅会社の枠に囚われず、新たなことに挑戦しようとしている経営者の方々への支援も今以上に充実させていきます。

住宅業界に限った話ではありませんが、基本的に誰しも自分の事業(仕事)の範疇以外のことはほとんど知りません。

例えば、不動産事業に乗り出して「人気のパン屋さんにテナントに入ってもらおう!」と考えたとします。ほとんどの工務店さんはそのための建物を造ることができたとしても、そもそもパン屋さんがどうすれば儲かるのかといったイメージが全く分かないのです。

人件費もろもろ考えて、月に150万円は売上が必要
→そのためには、200円のパンを7500個売らないといけない
→1日250個のパンを売るためには、どんな厨房機器が最適で、どれくらいの広さが必要なのか・・・

と逆算して考えたり、周辺環境や他のパン屋さん・飲食店を調べたりと進めていくのですが、自社の領域以外のことに手を出そうとすると、途端に色々すっ飛ばして「とりあえず、ビレッジ(村)作っちゃった」となりがちです(そして失敗した事例もたくさん見ました…)。

一つの業界にずっといると、視野が狭くなるというのは、やはりあるあるです。特に住宅業界に従事する方々はその仕事の特性上、「ハード」を作るのは得意でも「ソフト」を作るのは苦手な経営者が多いようです。

幸いなことにぼくには前職時代に培った住宅業界以外も含めた広範囲の経営ノウハウや、独立したあとに手を出した多種多様なスモールビジネスの立ち上げ経験があります。また、僕が代表を務めるSUMUSという会社には本当に色々な経歴をもった人材が集まっています。

僕たちが「住宅業界」の常識にとらわれることなく、広い視野をもって中立な視点からお伝えできることには価値があると改めて確信しました。


② 「ローカルディベロッパー」という新しい工務店の形を提案

「コト消費からモノ消費へ」という商品のトレンドは住宅業界にももちろん訪れています。多くの住宅会社が家というハコだけでなく、そこでの「暮らし」を作ることを大切にされています。

ぼくはさらにもう一歩踏み込んだ「家の中だけでなく、家の外の暮らし」までを考えてほしいと思っています。

本来「暮らし」というのは、家の中だけで完結するものではありません。どんなに立派なお家でも、周辺環境が悪ければ資産価値も下がり、住まい手の幸せも減少します。

【敷地に価値なし。エリアに価値あり】という言葉もあるほどです。

・朝、近所のお気に入りのパン屋さんで出来立てのパンを買ってくる
・日曜日には公園でサイクリングをする
・通勤時に駅前のカフェでカプチーノを買う
・新鮮な魚介類が自慢のスーパーで、今夜の食材を吟味する
・木陰が気持ち良い広場のベンチで友人と将棋を指す

など、これまでは偶発的に起こっていた「豊かな暮らしのシーン」を、意図的に実現し、エリアの価値ごと上げていくという新たな工務店の形をぜひ積極的に提案していきたいです。

ぼくはお客様の望む暮らし方を実現するために、家だけでなくエリアにコミットする地場工務店を「ローカルディベロッパー」と呼ぶことにしました。

この「ローカルディベロッパー」が増えることで、仮に住宅ビジネス自体が縮小しても、また新たな可能性が広がると思うのです。

③ 行政と工務店の間での翻訳・編集・連携

工務店がどんな会社かと問われれば、多くの人が「家をつくっている」と答えます。もちろんそれは正しいですが、実はそれだけではありません。

住宅業界というのは非常に面白い産業で、誰もが聞いたことのある大手ハウスメーカーさんもありますが、他の業界とは違いトップ企業が市場を寡占しているような状態にはありません。この大きな業界を支えているのは、全国各地それぞれの土地に根ざした3万社以上の中小規模の工務店さんなのです。

彼らは全国的な知名度はなくても、その地域では絶大な影響力を持っています。分かりやすく言えば、「そのまちのスナックで一番お金を使っている人たち」(笑)。地域経済に及ぼすインパクトも大きく、例えばローカルスポーツチームのスポンサーには工務店や住宅会社の名前が並びます。

しかしこうした事実は自治体や他の業界の人にはほとんど知られていないという現状が、今回の勉強合宿の中でよく分かりました。正直に言うと、「自治体の人でさえこの程度の解像度なのか…」と驚きました。ですのでここの情報発信も強化していきたいテーマの一つです。

今はまだ、それぞれの会社がそれぞれで努力をしていて、「点」が全国に散らばっている状態です。その点と点を繋げば「線」になり、線と線を繋げば「面」になります。

一社単位ではなく産業として「工務店って、こんな仕事をしていて、こんなこともできるんだよ!」と社会に認知されることで、より皆が幸せになれるような地方創生の可能性が広がるように思います。

また、ぼくたちも行政が捉えている地域課題を認識できていなかったり、彼らがやろうとしていることを理解できていなかったりすることがたくさんあることにも気づきました。

そもそも、行政と民間で使っている言語が全く違い、お互いに伝わらないまますれ違いが起きているんですね。

行政の仕事の本質は実はすごくクリエイティブなことなのに、それが事務的な作業になってしまっているせいで、色々ともったいない状態になってしまっているようです。

都市経営プロフェッショナルスクールの3日間合宿に参加しました!

例えば行政が民間企業と一緒に何か新しいことをやりたいと思ったとしても、そこで出てくる「公募要領」や「契約書」の類は全くもってクリエイティブではありません(笑)。そのため民間には届かない、伝わらないままになっているのです。

「もっといい感じに投げたら、応募も絶対たくさんくるでしょ!」と言いたくなるような話を聞きながら、行政が求めていることを、ぼくが翻訳・編集して工務店にうまく伝えることができたら、ここの連携がもっとうまくできるのではないか、という構想も浮かびました。

今はまだ構想段階ですが、そうした公と民の橋渡し的な役割も担えるようになれるといいなと思います。

人生のテーマが決まり、風景が一気に変わった

ぼくは30代後半になって、ようやくやりたいことが見つかりました。

20代はとにかく会社から求められていること、やらなければいけないことを必死にこなし「できること」を増やしていきました。

独立し、33歳で「株式会社SUMUS」を立ち上げましたが、はじめはとにかく今の自分にできることや、目の前にある課題に向き合っていた日々でした。

本音をいえば、自分自身の「どうしてもこれがやりたい!」というテーマが見つからず焦る気持ちがありました。

そんな僕のモヤモヤしていた時期のエピソードは、先日公開したnoteに赤裸々に書いています。

【まちづくり】というテーマにたどり着いたのは35歳のとき。支援先の工務店の方々とお付き合いをしていくうちに、僕は地方、それも「田舎」と言われるようなエリアのポテンシャルに気づいたのです。

「コンサルタントなのになんでまちづくりやってるの?」「もっとコンサル先にコミットしたら?」

というお声をいただくこともあるのですが、ぼくの中ではどちらも繋がっているのです。

ぼくの【まちづくり】の原動力は、地元や住んでいる場所など、自分自身の思い入れが強い特定の地域を盛り上げることではありません。

自分にはこれまで全く関りのなかった地域であっても、それぞれの場所に眠っている「価値」や「宝」を発掘し、磨き、世の中に広げていく―。そして、まちの風景が変わっていく瞬間が何よりも高揚します。

ある時「あぁ…僕はこういうことがやりたかったんだ。まだ誰も見たことのない景色をつくる仕事がしたいんだな」ということがストンと腹落ちした瞬間がありました。

これはまちづくりだけでなく、工務店の経営コンサルティングにも通ずることで、はじめる前には誰も想像ができなかった状態(=未だ見ぬ風景)を実現することが、自分の仕事なのだと心から受け入れられたのです。

なので、これからもクライアントである日本全国の工務店の課題を解決し、業績成果を追いかけていきたいという気持ちは全くぶれていません。

また、僕やSUMUSという会社だけが成功すればいいのではなく、産業全体の未来を考えて、より多くの人が幸せになれるような働きかけをしていきたいという気持ちも年齢を重ねるとともにどんどん強くなっていきます。

10年後、自分がどんな風景を見ているのか―

「きっと、日本全国で色々な人たちと楽しいことをやっているんだろうな…」という鮮明なイメージが今なら持てます。

歳を重ねるって、こんなにワクワクすることだったんですね。

ここ最近は酒席が続きすっかりバテてしまったので、体調管理をしっかりしながら40代も充実した時間を過ごしていきます!

株式会社SUMUS 代表取締役
小林 大輔



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