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太平洋の上に「まち」をつくってしまおう!“これぞアメリカ”な大胆な発想で生まれたサンタモニカ・ピアの驚きと楽しさ

太平洋に突き出した巨大な桟橋。
その上には、なんと1つの「まち」がある―

アメリカ・ロサンゼルス近郊にある「サンタモニカ・ピア」。まさにアメリカ西海岸!と言いたくなるような開放的で心地よいビーチには世界中から観光客が集まります。

まちづくりに携わる身として一度は訪れてみたかった場所の1つです。今回、現地を視察をすることができました。

日本とはまったく違う発想でつくられたこのまちは、全てが規格外。人の訪れ方も桁違いでしたが、アメリカらしさを感じる大胆でぶっ飛んだ発想でつくられたまちには驚きがいっぱいで、とても楽しかったです。


桟橋の上には、お店がズラリ。なんと、遊園地まで。

「サンタモニカ・ピア」とは、その名の通りサンタモニカにある桟橋(ピア)のこと。ビーチに隣接する形で、全長329mの桟橋が太平洋に突き出すように設置されています。

画像引用:サンタモニカ・ピア

そしてその上には、カフェやショップがズラリとならび、なんと遊園地まで。

繰り返しますが、これが「橋の上に」あるんです。ぼくはよくnoteで「半径200mのまちづくり」の話をしていますが、それを橋の上で実現させてしまった事例です。

日本の海岸では砂浜の上に海の家が並んでいることが多いですが、海の上に橋をつくって、そこにまちを置いてしまう。アメリカらしい大胆な発想ですね。

巨大な桟橋を支えているのは無数の支柱。陸側は木製、海側は鉄筋コンクリート製です。横から見ると、その力業っぷりがよく分かります。藻まみれの支柱を見えっぱなしにしているところまで含めて、らしさを感じます。

実際にピアの上を歩いてみて感じたのは、圧倒的な「抜け感」です。海に突き出すようにつくられているので、視界を遮るものが何もなく、カリフォルニアのカラッとした心地よい風を浴びながら、青い空と海を全身で堪能することができます。

まさにこの場所の良さを最大限活かしたつくりになっています。

今回、このサンタモニカ・ピアには「海辺(水辺)の再生」のヒントを探しにやってきました。

日本には、海や川など水辺がたくさんありますが、まだまだその恵まれた環境を活かしきれていないエリアがたくさんあります。そこで海外の事例も積極的に研究し、活かしていきたいと考えています。

実は昨年、自社で千葉の九十九里浜にサウナ付きのヴィラをオープンしました。宿泊施設として運営しながら、工務店さんの民泊事業やエリア開発のサポートのための研究開発の場としても活用しています。

実際にサンタモニカ・ピアを自分の目で見れたことで、「こんな感じで『海の上にサウナをつくって、そこから飛び込む!』みたいなことができたら楽しそうだな~」とアイデアが次々に湧いてきました。

海辺再生の可能性の大きさを感じます。

日本でサンタモニカ・ピアのような事例ができない理由

まちづくりの視点で見たときに、このサンタモニカ・ピアがすごいのが、これを行政と民間が連携してつくりあげていることです。

サンタモニカ・ピアは今ではアメリカの西海岸を象徴する観光地の1つとなっていますが、もともとは地域住民のために構想し、つくられたものです。

橋の上の遊園地『パシフィックパーク』のコンセプトは「家族で楽しめる遊園地」。観光客だけではなく、地元の人もデートやファミリーでよく訪れていると聞きます。

地域の人が楽しみながら住めるまちを目指した結果、観光客からの人気を集めることにもつながった事例の一つでもあるのです。

【市】・・・治安維持やピア本体の維持管理
【ピアコーポレーション(非営利団体)】・・・イベントの開催、マーケティングなどピア全体の運営
【各店舗経営者】・・・各店舗の維持管理、マネジメント

このように、役割分担がされています。

仮に日本で同じようなことをやろうとした場合、自治体が桟橋を管理し、民間に「お金を払って」運営をしてもらうケースになる可能性がよくある方法です(指定管理制度)。そしてその運営費の大半が税金でまかなわれることになります。

サンタモニカ・ピアの場合は、横に広い駐車場が設置されており、その収入で維持管理がなされています。約5,000台が収容できる駐車場の収入は年間900万ドル(日本円で13.5億円!)にものぼるそうです。

右側に見えるのが駐車場です。

行政資本が入らなくても運営できる体制が整えられていることは、地方のまちづくり事例として素晴らしいポイントです。

水辺に“ちょっとはみ出す”まちづくりは今後の注目テーマ

日本で同じようなことをやろうとした際にネックになるのが行政の許認可の問題。特に海辺は、都市計画法や建築基準法で管理される用途地域とは異なり、主に港湾法で管理されており、土地の利用の条件も異なります。

(臨港地区は、港湾区域(水域)とセットで「港湾管理者」が管理しており、管理者になれるのは法律で地方公共団体のみと限定されています。)

用途地域のおけるまちづくりでも、行政と民間の連携には様々な課題があります。その上で水辺利用となると越えなければいけないハードルがさらに増えます。

しかし、こうした問題を乗り越えて水辺をうまく活用している事例も少しずつ増えています。その一つがと東京・品川で寺田倉庫さんを中心に行政と連携して開発された天王洲アイルです。

天王洲アイルの「アイル」は英語の"isle"で「島」という意味。海に繋がる運河に木塀を建て、その上にウッドデッキを敷いています。京都の川床のようにウッドデッキ部分は水辺に突き出している状態です。

運河に沿って敷かれたウッドデッキはそよ風が気持ちよく、ただ歩いているだけでもバカンス気分を味わえます。

画像引用:なぜ寺田倉庫は文化を興し、街をつくるのか――創業68年の企業が迎えた変革期

このウッドデッキ部分も実は公道。民間企業が行政から借りて運営を行っています。

サンタモニカ・ピアや天王洲アイルが面白いのが、敷地境界からちょっとはみ出していること。このちょっとした拡張が水辺エリアだからこその面白さを強めているように思います。


本来であれば、土地は黄色の点線内。そこから拡張させている。
画像:Googleマップより
上から見た図。赤枠で囲ったウッドデッキ部分は水の上にある。
画像:Googleマップより

この寺田倉庫さんのように、水辺にちょっとはみ出して、エリアを拡張した使い方が民間資本でできるかどうかは、これからの水辺再生における大事なテーマだと個人的に考えています。

日本には魅力的な水辺が本当にたくさんあります。水辺の活用について、公共と民間の連携モデルを改めて見直すことで、日本でも面白いことができるんじゃないかなと考えているので、今後も海外・国内の事例を調査していきます!

株式会社SUMUS 代表取締役
小林 大輔

<参考>
千葉市「アメリカ西海岸各都市視察報告書」

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小林 大輔/スムーズ代表 / Replan代表
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