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財布ではなく、時間を狙え。いま渇望されている「時間を潰せる居場所」を作れるか?

この週末は、どのように過ごしましたか?より突っ込んだ質問をするならば、この週末、あなたは、いくらお金を使いましたか?

2021年は土日が104日。さらに祝日を合わせると休日が119日あります。この約120日の休日を、全て遊んで過ごせる人は一体どれほどいるでしょうか?

時間を潰せる場所を求めてさまよう若い子育て世代

家族4人で出かけようとすると、大きなイベントではなくても、映画や買い物などちょっとした外出でも1万円は軽くとびます。

1日1万円として、120日あれば120万円。年間120万円もの金額を「遊び」のために使える家庭は、残念ながら多くありません。もちろん間に旅行を挟めば、必要な金額はさらに大きくなります。

休みのたびに旅行や遊びにお金を使えるのは、今の日本ではほんの一握り。

特に若い子育て世代になると、この問題は深刻化します。

公園に行こうにも、禁止事項ばかりで遊べない。しかし子どもたちが家の中でゲームやYoutube三昧というのも気が引ける。お金はない。けれどどこかで時間は潰したい。

さて、どこに行こうかと考えたとき、最有力候補がおなじみの「イオン」です。

イオンを筆頭にしたショッピングモールは、食品から衣料品まで様々な商品揃っていて確かに便利です。しかし土日になるとモールにあふれかえる人々の大半は、「欲しい商品があるから、どうしても行きたい!」のでは、ないでしょう。

特に地方は、正直イオン以外に行くところがない、という声も…。

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暇だから。
他に行くところがないから。
なんとなく。

時間を持て余し、イオンに向かいます。そしてなんだかブラブラと歩いているうちに2~3買い物をしたりして、夕方になれば帰路につく。

そんな土日を過ごした人も多いのではないでしょうか。

「人の居場所を作る」思考を持つ

逆に言えば、「時間を潰せる場所」を作ることができれば、イオンに流れている何%かのお客さんを、こちらに引き寄せることも可能ということです。

この、「時間を潰せる場所」に「人と人との繋がり」を掛け合わせた「居場所」こそが、これからのビジネスを考える上での大きなヒントになる、というのが私の考えです。

私は、住宅業界専門のコンサルタントとして、主に地方の地場工務店さんの支援をしています。そこでは、「時間を潰せる場所」「居場所」を作るという視点で様々な企画を展開しています。

分かりやすい事例が、マルシェです。1回ぽっきりのイベント型ではなくいつも同じ場所で行う定期開催のもの。

「あぁ、日曜日はあそこでマルシェをやっていたっけ」

とまちに浸透するように、年間単位で時間と場所を発想します。

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そのとき、最も重視しているのが「滞在時間」の指標です。

訪れるお客さんも「何かを買いに来る」という目的を持ってくるだけではなくて、なんとなくフラりとやってくる。まさに時間潰しの感覚です。

(※矛盾しているようですが、時間潰しのつもりだったとしても、滞在時間が長くなれば結果としてそこで使う金額も比例して増えていきます。)

定期開催にすることで、常連さん同士が仲良くなったり、近所の人と偶然会ったり、店の人と顔見知りになったり、と人と人とが繋がっていきます。

何度か訪れているうちに、ただ「時間を潰すための場所」だったものが少しランクアップして「居心地が良い場所」に変わっていきます。

私が携わるマルシェの場合、主催は工務店さんですので、「自社で家を建ててもらう」という最終的な目的が、やはりあります。

しかしあくまでこのマルシェの中では、誰でも気軽に、時間を潰してもらうこと、訪れてくれた人々にとっての居心地の良い場所づくりに集中しています。

そしてこれも矛盾しているようではあるのですが、そうした居心地の良い場を提供することに注力するほど、滞在時間やリピート回数が増え、主催である工務店の存在も自然と浸透し、いざ家を建てるタイミングになったらお客様のほうから相談に来てくれます。

新築需要は、およそ人口の1%。その比率のままざっくりとした計算ですが、1回100人、年間で1000人集めることができれば、年間で約10棟の新規契約に繋がる可能性が生まれます。

服を売るユニクロが、公園を作った理由

この「時間を潰せる場所」や「居場所」づくりに関して、私はまちづくりの文脈で関わっています。箱モノを作るのではなく、人が集まる場・仕掛けをつくり、そこからまちに賑わいをもたらすという狙いで取り組んでいます。

しかし、まちづくりとは全く関係のない業種でもこの視点は活かせるはずです。人の集まる場に出ていくのではなく、自ら人が集まる場を作る、という考え方です。

その代表例とも言えるのが、横浜ベイサイドにできたユニクロPARKです。ユニクロとGUが入った建物の屋上が、子どもたちが思いっきり遊べる公園になっています。

「PLAY」というコンセプトに相応しく、すべり台、ジャングルジム、ボルダリングやクライミングなど、子どもたちが、楽しく安全に遊べる遊具も設置されています。

トータルプロデューサーは、佐藤可士和氏です。

ユニクロの服を買いたいだけなら、ECサイトで十分。しかしこのユニクロPARKには、あえてその店舗に行く意味があります。

ご家族連れ、お友達、地元のお客様など、あらゆる方に喜んでいただける商品やサービスをご提供するほか、ゆったりとお買い物を楽しんでいただける、憩いの場となることを目指した合同店舗です。

(※ユニクロプレスリリースより引用)

時間の奪い合いという異業種バトル

今、お金と同じくらい、もしかするとそれ以上に注目すべきであるのが「時間」です。自社のサービスにいくらお金を払ってもらえるかの前に、どれくらいの時間を費やしてもらえるか。

例えば、時間泥棒の筆頭、Youtubeの有料会員は世界に3,000万人(2020年11月時点 ※参考)。利用者数は20億人以上と言われていますので、有料会員比率はわずか1.5%。残りの98.5%は無料で利用しています。

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YoutubeやSNSを利用する際に、「お金」を払っている実感がある人は少ないでしょう。事実、完全に無料で使用している人の方が圧倒的多数です。こうしたサービスが奪っているのは私たちの「時間」です。

時間を奪っているサービスが、結局お金も稼いでいる。

これは広告収入というビジネスモデルだから言えるわけではありません。

時間泥棒といえばもう一つ、Netflixの名があがります。Netflixは有料サービスですが、KPIとしてユーザーの月間視聴時間を掲げ、非常に重視しています。月の視聴時間がある基準を超えると、解約率が大幅に減るそうです。

どのような「居場所」を提供できるか?

時間を追うことが、最終的に利益につながる。これは今私たちの身の回りで当たり前の起きていることです。

どんなお金持ちでも1日は平等に24時間。インターネットの世界もリアルの世界も、全部合わせて24時間です。その24時間のうちの何%を自社のサービスや商品に関わる時間にあててもらえるか。ここがポイントです。

競合は、同業他社とは限りません。地方の工務店も、Netflixも、町の商店街も、ショッピングモールもユニクロも、皆同じ土俵に立っています。

「いくら」使ってもらえるかももちろん大切ですが、「何時間費やしてもらえるか」という視点で一度自社のサービスを見てみると、新しい発見があるかもしれません。

私はいつもまちづくりについて発信していますが、まちづくりは特別で、そのほかの仕事とは別物と考えられがちです。しかし実際は、マーケティングも、商品開発も、営業も考え方は同じです。

ぜひまちづくり的な観点も、あなたのビジネスに活かしてもらえると嬉しいです。

あなたは今、どのような「居場所」を提供できていますか?

株式会社SUMUS 代表取締役
小林 大輔

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