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大丈夫ですか?にツイテ

ある日、銀座に用事があって一通り済ませた後、
銀座線のホームで電車を待っていると、
ふと右後ろからペラペラと男性が話す声が近づいてきた。

初夏の午後、平日だったからか人気はまばらで、
そんな男性の声も響くほど閑散としていた。
私からは点々とホームの淵に電車を待っている人たちが見えていた。

ペラペラと近づいてきた男性は、
私のすぐ右横をすりぬけると、
そのまま線路に落ちていった。

ん?
あれ??

おいおい、なんだ。
どうゆうことだ?
スタスタと歩いていた男性は、
そのままのスピードで落ちていったではないか。
まさか、アレではあるまいな。
いや、、躊躇なかったもんな。

と、私の頭の中をぐるぐると疑問符が飛んでいた。
そして、うわ、、この場から立ち去りたい、、
という思考にかわり、
いや、待てよ。あとでニュースで人身事故なんてワードを見たら、
それこそ夢見心地が悪い。いや悪すぎる!
という思考にかわる。

ぐるぐるとしたあとに、
とりあえず、線路を覗いてみる。
すると、男性はうーうーと唸っているではないか。
懸念していたアレではどうやらないらしい。

そこで、電光掲示板の文字が点滅した。
「電車がまいります」

あ、やばい。非常にやばい。
これはどうすることもできずに見届けるのか?
いやいやバカな。そんなことできるわけないじゃないか。
一向に男性はうーうーと唸っているばかりで、
自力で這い上がって来れそうにない。

あ、、緊急停止ボタンだ!

私はすぐに周りを見渡したが、
緊急停止ボタンがない!
こうなりゃ爆走だ!と人気のないホームを全力で駆け出した。
とその結構な先に、黄色いあいつが、ふと目に入る。
こりゃ間に合わん!あかん!
しかしよく見ると、ボタンのすぐ横に女性が立っているではないか。
頼むしかないと思い、立ち止まって、ものすごい大きな声で叫んだ。

「その横のボタンを押してください!早く押して!」
「え?」
「だからそのすぐ横のボタンを押して!緊急停止ボタン!!」
※この時私はジェスチャーで押して押して動作をしました。
「は、はい!!」

ポチ

プーインプーインプーインプーインプーイン

あたりが赤いサイレンのような光に包まれて、
「緊急 停止 ボタンが 押されました」
という何とも冷たい女性のアナウンスが繰り返されると、
トンネルの奥の方でキキーっという甲高い機会音が聞こえてきた。

電車のライトが近づいてこないことを目視し、
ほっと胸をなで下ろして、
男性のもとに戻ると、
まばらだった人たちがちょろちょろと男性が落ちた地点に集まっていた。

「大丈夫ですか〜?」

皆さんは口々にホームの上から見下ろしながら、
男性に向かって力なく聞いている。

その場にいた5人くらいで一緒に男性を引き上げると、
※線路に降りちゃあかん、ぜったい。
謎肉より謎のおばさまが現れて男性を介抱しだし、
やっとこさ全部完了した後にゾロゾロと駅員の方たちがホームにいらして、
「緊急停止ボタンを押したのは誰ですか?」
と聞いて、
「緊急停止ボタンを押してないけど、押すように走っていたのはこの子よ!」
と、これまた謎のおばさま2が現れて私を突き出したけども、
「いやいや、押した人なんですよ。規則なので。」
となだめられて、
私はキョトンとしながら、そうなのね、そうゆうもんなのね、
と云々。。。。。

まぁ、兎にも角にも、
胸がザワザワしないで済んだからよかったよかった。
と思うのと同時に、
「大丈夫ですか?」って、
面白いワードだなーということに気づいた。

よく、使いますよね?
多分、今までもこの言葉について、
私もこのニュアンスで使っていたんだと思う。

明らかに大丈夫ではない人を目の当たりにした際に、
助けて欲しいと相手は思っているのかを確認するための
「大丈夫ですか?」

とても日本人らしいというか。
こっちはどう見てもやばいと思ってはいるけれども、
助けいるよね?だよね?ということよね?
的な。

そして、今回の事件でこうゆう意味もあるのね、
と気付かされたのが、
多分助けて欲しいんだろうなーとは分かるんだけれども、
いやー無理だわ、無理無理。
え、どうすればいいわけ?
まーでも聞いておかないといけないよね?
とりあえずの
「大丈夫ですか?」

こうゆう時に、結構動けないものなのかもしれない。
何故私が動いたかって、
そりゃたまたまだったわけで。

何だか皮肉な感じだけれども、
押し付けがましくならないようにする日本人の美徳的な言葉が、
こういった場面でも使えちゃうものなのね、と。
結構都合よく使えるのが日本語なのかもしれないなー。
なんて。


それにしても、
長々つづっちゃいましたけど、
、、大丈夫ですか、ね?