沖縄から貧困がなくならない本当の理由を読んで

沖縄から貧困がなくならない本当の理由
樋口耕太郎著
を読んだメモ。

沖縄の社会問題とその構造を考えることが、日本を考えること、延いては自分自身、また自分の家族、コミュニティ、職場環境について考えることにつながる論考になっている。

沖縄と本土社会の関係が、そのまま日本と海外との関係に類似しており、本土から見た沖縄の社会問題は、海外から見た日本の社会問題そのものだという筆者の観点が興味深い。

沖縄は日本の問題が濃縮された場所と見ることができる。

沖縄県は、基地関連収入は、県民総所得の5%であり、基地経済に依存していないということを主張するが、ここには、観光プロモーション、支援金、税制優遇などは一切含まれていないという事実からスタートする。沖縄振興特別措置法というもので、免税店が建設されたりもしているのだ。こうした措置が引き起こすのは、支援、ではなく、守られた経済を作ることが、その内部に創造を生み出しにくくする環境を作っている。そしてそれは、事業性よりも人間関係、創造性よりも序列、個性より協調性が経済合理的になる、ということだ。

これだけ支援を受けている沖縄の社会問題が解消されないのは、それは、貧困であることに、合理性があるからなのだ。

沖縄社会が貧困なのは、貧困であることに(経済)合理性が存在するからだ。  これが、「沖縄から貧困がなくならない本当の理由」である。

という視点には度肝を抜かれた。
筆者の、問題に対するアプローチの仕方が面白い。

その後、本書では、自尊心を養い、自分自身を愛することが、社会問題を解決していくという、個々人への在り方へと問題を突き詰めていく。

こうして一つの社会問題を突き詰めていくと、自分自身の在り方を問うことに行きつく。

私たち一人一人が作る社会なのだということを実感できる鋭い指摘が満載で、自分自身も反省する点を持ったり、家族との関係やコミュニケーションを見直すきっかけとなる本。


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