見出し画像

愛はコンビニでも買えるけれど

愛はコンビニでも買えるのだと、スピッツが言っている。
そう、愛はどこにもないように見えて、どこにでもある。

よく晴れた秋の日のことだった。
その日私は図書館で本を読んでいたのだけれど、こんなに晴れてるのになんだか屋内にいるのはもったいないな、という気持ちが起き、外へ繰り出すことにした。(晴れの日は人を外へ連れて行く力があるのだからすごい)

最初は人気(ひとけ)のない公園を探していたのだが、ふと定番の散歩コースにある川沿いに並んだベンチを思い出した。あそこなら人通りも少ないし、だいすきな水辺だしいいかもしれない。コンビニでおにぎりとサンドイッチと、ちょっと気取ってルイボスティーを買って感覚を頼りに川へ向かった。
たしかこのへんに、と辿り着いたベンチの周りに立ち入り禁止の柵ができていた。どうやら壊れてしまったらしい。これまで全てが順調に進んでいたので少しがっかりした。それでも空を見上げると笑ってしまうほど青かったので「まあいいや散歩がてら」と他のベンチを探すことにした。

少し歩いたところに、小屋のような建物があった。それは川沿いにあるのではなく、橋の途中に建っていた。なんだろうと思い近づくと、それは小屋ではなくて屋根のある立派なベンチだった。

まさに求めていたベンチ。
それは歩道から死角になっているし、屋根がしっかりあるので陽が直接差し込まないし、だいすきな橋の上にあるし、お気に入りの本を読むのにこの上ない場所だった。
早速腰を下ろしてちゃんとアルコール消毒をして、まずはコンビニで買ったおにぎりにかぶりついた。天候は文字通りポカポカとしていて、陽を一身に受けた水面はキラキラとしていて、かぜはそよそよとやさしく頬を撫で心地よくいつも食べているコンビニのおにぎりが叫びたくなるほど美味しく感じた。空と、太陽と、水面のおかげでさいこうのにちようびになりました。。と心で念じていると、いやちがうそれよりもこのベンチのおかげではないか、と気づいた。

思えば、ここにこんな立派なベンチを建てようと発案した誰かがいたということだ。その人は、もしかしたらこんな晴れた日を想像して、この立地だと日差しが強く当たるから屋根を立てようだとか、ここで1人で座っているのが恥ずかしく思わないように死角にしようとか、ここに座るかもしれない会ったことのない誰かを想像しながら、このベンチをつくったのかもしれない。なんて温かい話なんだろうと思った。
日本を代表するバンドが、「愛はコンビニでも買える」と歌っていたけれどまさにこう言う事なんだろうなあ。

このベンチをここにつくろうと思った人、あなたの細かい気遣いや優しさ、愛のおかげで、わたしは凄く素敵な週末を過ごせたよ、明日から仕事頑張れるよ、ありがとう。。

こういう何気ない毎日の中でも、やはり人は1人では生きられないことを教えられる。出会ったこともない誰かに、確かに今日もわたしは救われたのだ。
日々人の邪悪な行動やずるい姿に落胆してばかりで、こんな世の中やってられないよと思うことだってあるけれど、でも、やっぱりそれでもやっぱり、世界は綺麗だと思った。

たかがベンチ、されどベンチ。
わたしはこの日、穏やかで幸せな日曜日を過ごすことに成功した。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?