【ネタバレ注意】「ジョーカー」雑感

恥ずかしながら「ジョーカー」が何であるか知らないまま本作を鑑賞した。元ネタがバットマンなどに登場する有名な人気悪役であることも鑑賞後に検索をして初めて知ったくらいだ。ので、これまでの「ジョーカー」とは一切関係なく本作単体での感想となる。


彼の笑い声は泣いているようにも聞こえた。
事実、ピエロのメイクが崩れて涙を流しているように垂れている場面もあった。

心優しい青年がなぜ「悪のカリスマ」に変貌したのか。というのが本作の触れ込みだが、むしろ彼が「なった」のではなく、環境が、社会が彼を悪のカリスマに「した」のだと思えた。

劣悪な環境に置かれ
同僚に陥れられ
職を失い
社会保障を打ち切られ
実の父と信じた人に母を侮辱され
その母にも騙されていたことを知り
心の支えのはずだった恋人は妄想で
憧れていたコメディアンにコケにされ
不幸以外の何物でも無い彼の人生をしかし彼は、「喜劇」と言った。
幸せか幸せでないか、笑えるか笑えないかは主観であると。
確かにそうだ。価値観は主観的で、それを決めるのは本人でしかないのだから。

彼は劇中多くの人を殺した。
己に暴力を振るった3人の若者に始まり、
自分を騙していた母を
職を失う原因を作った同僚を
憧れを裏切ったコメディアンを
故に「悪のカリスマ」なのか? 否、むしろその後。
ピエロ殺人鬼として担ぎ上げられた彼は暴動を起こす群衆から喝采を浴びた。
肯定された。
それはきっと彼の人生の中で初めてに近いことで。
自分の行為が及ぼした影響の大きさを目の当たりにして。
そうして目覚めたのだろう。「ジョーカー」が。

人は無意識に人を傷付け、踏みにじる。
本人にその自覚はなく。
最後まで「身に覚えのない」理由で報復される。
今「幸せな」人間は、それを肝に銘ずべきである。

悪を生んだのは他ならぬ、自分たちなのだということを。

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