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君が夏を走らせる 瀬尾まいこ 読書感想

あと少し、もう少しの物語に出て来た大田のスピンオフ作品

不良というわかりやすい外見をした大田
金髪にピアス
そんな大田に子守を頼んで来た先輩
先輩も昔は不良だったが子供を持ったことで真面目に働いている
二人目を妊娠した奥さんは入院する 先輩は日中は仕事
まだ二歳前の子供・鈴香を夏休みの間に見て欲しいというアルバイトを頼まれる
子供の面倒なんてみたことないと言われるが、両親には頼めないからと頭を下げられる
先輩の頼みだからと引き受けるが、二歳前の子供を一日見るのは大変

泣きっぱなしでもその内疲れて眠るからと言われても、ずっと泣いている姿を見ると心配になる
食も細いからレトルトではと考え、自炊も始める
ずっと家に籠っていたら大変だろうと公園にも連れていく

大田と鈴香の距離がいい感じになっていくのが微笑ましい

大田は不良だけど走りたい、ただ入った高校はやっぱり周囲も不真面目でそんな学校に見切りつけて結局入ったクラブもやめてしまう
でも中学でやった駅伝が忘れられなくてくすぶっている
煙草も吸わず学校もさぼらずでも真面目にもなれなくて、という状況

顔見知りから声をかけられても悪いことは出来ずのらりくらり交わす
ここが真向から俺は今悪い事しないんだ、と言わないのが良いと思う
相手からしたら何を今更と言って絡まれてしまう
自分は自分、人は人、と区別しないときっと叩かれる
そういう環境にいる大田は卒業するまでの間、今のスタンスで走っていくんじゃないかな

奥さんも無事出産し、退院後にバイトも終わり鈴香とは多分(先輩が強引に誘いでもしない限り)会わないだろうときっぱりと決めるのは寂しいが新たなスタートを切っている感じで清々しい

別れは惜しむものじゃない。ただ日常にあるだけだ。鈴香はまた新しい何かに手を伸ばしていく。それは俺だって同じ。俺のフィールドがこれから先にしかないのなら、ここでの日々を握り締めてばかりもいられない。

君が夏を走らせる

新しいスタートは春というイメージだけど、大田のスタートは夏だろう
がんばれとエールを送りたい。

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