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雨夜の星たち 寺地はるな(読書感想)

雨音は同僚の星崎が辞めた直後に自分も仕事を辞めてしまう。

家主の霧島にスカウトされてお年寄りの身の回りを手伝う仕事を始める。

雨音の他人に共感しない、感情移入しない性格を見込まれてのことだった。


他人に対してこうして動いてくれたらとか、この返事で察してくれないかと思うことはある。

雨音には一切通じない。

仕事の前にきちんと説明はする。普通はこうするでしょというのが通じないのでちゃんと依頼してください。仕事だから遠慮しないで言ってくださいと。

それに苛立つ人がいるのも事実だ。

言われる前に出来る、察するという人はとても多い。

なんでそんなこともわからないのだろう。

一般の仕事をしていたらかなりの確率で壁にぶつかる。

雨音の前に仕事を辞めている星崎君は毎日のように失敗していると表現されているが、毎日失敗はちょっと無いレベル。その所為でいじられキャラになってしまう。

いじられというよりも苛めにも見える。やっている人達からしたら失敗をカバーしているからその分いじってもいいだろうと思っている。

とうとうアルハラにまで発展して耐え切れなくなったのか、辞めてしまう。

雨音もまた星崎君がいなくなったら今度は自分の番だと理解して辞める。

職場の人、家族、病院で出会う人、この世界では望み通りに行動をしないと「それが普通なんだから」と正義を振りかざして責めて来る。

二木とかいう最悪な登場人物はわかりやすく「君のために言ってるんだよ」と平気で悪意(とも思ってないだろうが)をぶつけてくる。したり顏で喋っているんだろうなというのも容易に想像出来て笑ってしまうくらい。

この先も何度も生き辛さにぶつかることもあるが、無理して同じ席に座ることはない。

距離を保って生きていてもいいと教えてくれた。

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