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隠居すごろく 西條奈加 読書感想

還暦を迎えた徳兵衛は隠居を宣言する
商売は長男へ任せ、家を出て隠居家に住む
妻は長男嫁の強い引き止めによりこれまで通り商売を手伝うことになるので気ままな一人暮らしになるはずだった
ある日、孫の千代太が訪ねてくる
可愛い孫の訪問に喜ぶ徳兵衛だったが、次から次へと厄介ごとが運ばれてくるのだった

徳兵衛は商売を隠居し、いわば悠々自適の隠居生活
暇でこれといって何かしたいこともない
しかし衣食住には困っていない状態
千代太も跡取り息子ということでお坊ちゃんだ
その千代太がお腹を空かしているといって見るからに貧しい兄と妹を連れてくる
徳兵衛のところなら食べられるものがあるからと

いわゆる現代だと放置子ということになる
今だととにかく関わないと助言されるだろう
しかしまだこの時代は貧しくとも誇りを持ち、哀れに思われるのを嫌う子供達だった
ずる賢く千代太からお金や食べ物を持ってくるよう立ち回れたはずだが、
それはしない むしろ情けを嫌い、自分が働くのだという気概がある
だからこそ徳兵衛は関わりたくないというスタンスだったのに、どんどん自発的に動いていくようになる
誰も心が貧しい人がいないというのがすごくいい
働き口さえあれば、学ぶ場さえあれば、と徳兵衛が与えるだけでなく、皆で考えて知恵を出し合う
人と人とが輪になっていく、とても素敵なお話

妻のお登勢さんの懐の深さにも感動
いざという時のためにとっていたお金
生かしてくださいと差し出した、なんて大きな心を持った人なのだろう

あがりのないすごろく(人生)の話

これで完結と思ったら続編もあるようで楽しみ

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