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捜査線上の夕映え

フィクションの中、しかもシリーズ物に今のコロナ禍を描くのかと読む前は否定的でした。

フィクションなのだからコロナじゃない世界で捜査に参加して事件の解決でも良いじゃないかと。

しかし読み進めて、思った。

これまでこのシリーズを読んでいて現実じゃない(フィクションだから当たり前なのだけど)どこかの別世界の日本にいるような彼らが、あ、本当に今を生きていて捜査に協力しているんだなという感覚になった。もちろん創作なのだけど、まるでこのコロナ禍を一緒に生きているような。自分でも驚くような不思議な気持ちに。

コロナ禍だけど事件は起きる。ソーシャルディスタンスとか言われても人と人との諍いや悪感情がなくなるわけはないのだから。

警察もマスクをして消毒もきっちりとして、食事の時は距離を取ってを守る。

マスクした人達だらけの世の中。この人を見なかったですかと目撃情報で写真を出されてもマスクしているから、この人かな?と断言出来る自信はない。

証言を集めている間も陽性反応で入院中、話を聞くのもままならないとか、少し移動可能になった時に旅行へ行っていて連絡取れないのとかありそう、と思わせる。

火村先生達も話を聞くのは食事中は避け、食べてからしっかりとマスクして事情を聞きだす。

現実でコロナに苦しめられている私達とやっていることは同じなのである。

今、まだ先の見えない不安な時に寄り添ってくれるようなミステリー小説。

もう少し先で、と言わず今読んで欲しい。

それともコロナから解放されて、こんな時もあったねと思い出しながら読むのもありか?

気になるのはこれからずっと先の未来。

コロナ禍を知らない世代が読んだ時、この時の日本ってこんなマスクだらけで生活してたの?とどんな感想を抱くのか。

是非聞いてみたい。


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