2023年9月 山下清展に行ってきました【SOMPO美術館】
8月の中欧旅行についての投稿がまだ途中なのですが、先日ご縁があって訪れた「山下清展 百年目の大回想」(SOMPO美術館、6月24日~9月10日)について、忘れないうちに書かせてください。
実はこれより1週間ほど前の週末に一度、この展覧会に行こうとしました。ところがまだ午前中だというのに、美術館の建物をぐるりと回るほどの長蛇の列。しかもそれは地下道、そしてその先新宿駅方面に向かって延々と続いているではありませんか! 「最短で一時間半待ち……もっとか」と困惑の警備員さん。絶対そんなすぐに回って来ないと見て分かります。
正直にいうと、この時「山下清ってそんなに人気なの?」と思いました。考えてみれば誰でも名前くらいは聞いたことのある大家。しかしそれにしても、アイドルのコンサートでも見たことがないくらいのこの列は……
それから数日後、雨の平日にチャレンジ二度目にして入館しました!
それでも玄関前と玄関ホールにはうねうねと長蛇の列ができており、並び始めから展示に辿り着くまで1時間かかりました。
私は幼稚園に入る前から絵を描くのが好きで、小学校の高学年には油絵を描いていましたから、よく周りの人たちに冗談で「山下清を目指せ!」といわれました。それでもこの方の作品は数点しか見たことがなかったので、「ランニングシャツのぽっちゃりおじさん」のイメージしかありませんでした。
今回、最初から感動でした。
とにかく構図が素敵です。この方は幼少の頃からちゃんとものの位置関係を把握して描いていたんですね。ただ丁寧で綿密なだけじゃないんです。
それに10代の頃のペン画のデザイン性! どうにでもグッズに作れそうなカッコいい画ばかりです。それから真骨頂の貼り絵。私も小学校の頃ですが凝ったことがあったので少しは分かりますが、これ、子どもならやっているうちに飽きちゃうし、大人なら体中やっちゃうレベルです。
これだけの力とセンスに溢れた方ですから、放浪してもどうにかなるんですね。ヨーロッパなら時代によってはすぐパトロンがついたでしょうに。
この方は人の顔にはあまり興味がないんですね。正面か横か後ろ向きの三通りだけで、斜めとか少し上下に向いた顔はありません。しかも日本だろうがヨーロッパだろうがみんな同じ顔(ちょっと鼻を長く高く描いているものもありましたが)。山や建物はこんなに丁寧に描くのに。でも不思議なことに、そんな無機的な人間がたくさん集まっていると、そこで起きていたであろう歓声や感嘆が想像できるのです。この不思議な距離感は山下画伯ご本人と人々とのそれ、そのままなんでしょうね。
それに小学生の絵みたいに平面的な箇所と3D並みの奥行を描く箇所が混在していて、それが「味」になっているんです。色合いもいいですね。鮮明過ぎることがなく、かといって薄くて儚げに見えてしまうこともない。ご自分の構図、線一本一本に自信がある描き方です。
存分に楽しませて頂いたあと、ミュージアム・ショップで少しグッズを購入。ミュージアム・ショップ、大好きなんです。本音をいえば、あれだけの入場者数なのですからもう少し種類があっても良かったのでは。「ほたるの光」が聞こえていても「レジ待ち最後尾」の看板を持った方が遠くで立っていました。
もう少し山下画伯の勉強をしようと思った展覧会でした。
それではまた!
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