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奥山にもみぢ踏み分け鳴く鹿の声聞く時ぞ秋は悲しき

猿丸大夫

奥山にもみぢ踏み分け鳴く鹿の声聞く時ぞ秋は悲しき

(おくやまに もみじふみわけ なくしかの こえきくときぞ あきはかなしき)

 遠くで鹿の声がする時、秋のもの悲しさが身に染みる。鹿は奥深い山を色づいた萩の葉をかき分けながら孤独に歩いているのだろう。

奥山…人里を遠く離れた奥深い山。深山
もみぢ…黄色く色づいた萩の葉
ぞ…強意を込める

もの悲しい気分が漂う歌。
鹿なのか人なのか、どちらが歩いているのか分からないが、わざわざ人が深山に入る理由がないので鹿が歩いていることにした。
もみぢは「紅葉」の字が当てられていることも多い。散り敷いたカエデを鹿が踏ん付けて歩いているのだろうか。黄色く色づいた小さな萩の葉が所狭しとついている枝陰から鹿が顔を出している方が良いように思う。
オス鹿はメス鹿を求めている。高い声も低い声も出すけれど、ここは高い声が合っているように思う。

猿丸大夫(古今和歌集では「よみびとしらず」の歌。詞書に「これさだのみこの家の歌合せ」。是貞親王は宇多天皇の兄。…猿丸大夫という方も誰なのか分からない。結局誰が詠んだのか分からない)

出典 古今和歌集、百人一首5番歌

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