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ep.3 青春を取り戻そうとしていたサッカー部の顧問の先生

 最近、高校サッカー選手権の県大会が行われている。
僕も高校ではサッカーをしていたので、毎年大会の結果はチェックしている。
 その時にいつも思い出すのは、高校時代の顧問の先生のことだ。

 その先生はとにかく部活に熱心だった。
僕はとりあえず運動部に入って就職を有利にしようという考えで入部していたため、最初はすごい温度差があった。
練習時間も増え、週末は毎週のように試合、自由参加の朝練なども始まり、毎日キツかったので本当に辞めたかった。

 しかし、部活をキツくしたとはいえ、その先生は決して悪い人ではなかった。むしろみんなから愛されるようないい人だった。
 いつでも気さくに話してくれるしサッカー部員以外の生徒からも人気だった。

 自由参加の朝練習も最初は1人しか行っていなかったのだが、先生は毎日参加して草むしりをしていたらしい。
まさにリアル川藤である。

このような人格者であるため、僕としてもなかなか悪く言えず、ずるずる部活を続けて3年間を終えられたのだ。

 このような人格者を前にして僕自身、3 年間ダラダラしていたわけではない。
次第に朝練習にも参加し、居残り練習などにも参加するようになった。
体的にはとてもキツかったが毎日とても充実していた。

ある日、居残り練習しているとき先生が練習に入ってきた。いつも僕たちがボールを蹴っているとよく混ざりにくるのだ。
いつも本当に楽しそうにサッカーをする先生。
でも、僕はそうは見えなかった。
ただサッカーが好き、もしくは僕たちに上手くなって欲しいという理由かもしれないが、何故かそうは見えなかった。
自分が高校生の頃に戻ろうとしている気がした。
あの時の楽しかったことを再現するかのようにサッカーをしていた。
ただ、10代真っ只中の僕たちと混ざることで擬似体験してるようだった。
でも、先生は楽しかった頃には戻れない。そう思うと、
とても辛くなった。
先生の人生を馬鹿にしてるわけではない。そう感じてしまったのだ。

戻れないにもかかわらず執着するのは、それくらい部活というものや10代というものに魅力があるからだ。

仲間と居残り練習することも、歓声の中プレーすることも、部室でバカ話することもその時にしかできない。

だから先生を見て辛く感じたのだ。
もう二度と高校時代には戻れないのだ。


最後の大会では目標だった県大会に出場して初戦敗退という結果に終わった。
この試合はほぼ僕のせいで負けたのであまりいい思い出ではいが、それでも頑張ってよかったと思えた。

しかし今になって今年の県大会のハイライトを見ながら自分が不完全燃焼だったことに気づいた。
もう一度あの頃に戻りたいと心の底から思った。




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