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災害で水道・トイレが使えなくなったときの備え(東京都の場合)

2021年10月に和歌山市で水道橋崩落による断水がありました。

想定外の事態に6万戸13.8万人が約1週間断水の被害にあい、自衛隊や各地の給水車に応援に来てもらう事態に。10月3日の夜から断水が起こり、応急給水車は翌日朝から22の小学校に手配され、その後も中学校などに応急給水所が拡大されました。(中の人、調整などなど本当にお疲れさまでした!!まだまだ今後も大変だと思いますが…)

ただ今回、初動時点では13.8万人に22の応急給水所だったので、単純計算で1つの給水所を6,200人以上が利用することに。全員が利用したわけではないでしょうが、けっこう混んでしまったようです。
大都会で水道が止まったら、どうなるんだろう?と思って調べてみました。

東京は災害時の水の応急拠点について準備万端!?

今回、SNSで民間のボランティアの人々が水関連の支援の申し出ているのをいくつも見かけて胸が熱くなりました。でもそもそもは行政がインフラ停止級の大災害を想定し、備えとなる支援拠点を設け、わかりやすく告知しておくことがとっても大切だと思います。

たとえば東京都は水道管がやられたときも速やかに給水できるよう、50箇所以上に「応急給水槽」なるものを設置しているんだそう。(小規模応急給水槽は25箇所 *資料「飲料水の確保」より)

「え~“応急給水槽”?多くの人が一斉に水を汲みに来たらすぐ空になっちゃうんじゃないの?」と思ってしまいそうになったのですが、調べてみるとこれらは公園などの地下に設置されており、その量、1,500㎥。ちょっとピンと来なさすぎなスケールですね…。

新型の応急給水車の1回分が約3,000リットル(=3 ㎥、だいたい1000人分の1日の飲料に必要な水の量にあたる)らしいので、1,500㎥っていうと…応急給水車500台分、約1,500,000 リットル!?…それが50箇所分⁉

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2500万人分、つまり東京の人口すべての1日分をゆうにカバーできる水の量のようです。…計算合ってますかね??(文系ですみません。間違ってたらどなたかコメントでやさしく教えてください)

「で、でもそれだけの水備蓄してたらそのうち腐るやん?」という心配もご無用、水槽の水は配水管との間を循環する仕組みになってて、常に新鮮な水が確保できているんですって…!もちろん電気が止まっても、自家用発電設備で汲み上げます。

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Ⓒ東京水道局

つまり東京は有事の際に「そこへ行けば、水道管が使えなくなった直後に使える新鮮な水は基本ある(はず)」という状態が準備できてるようです。

ならあとは行政としてするべきことは、あらかじめそれらの情報をまとめ、マッピング・告知しておくこと‥それもきちんと準備されていて、東京水道局の災害時給水ステーションのマップにまとめられており、住所・写真・詳細地図の記載がありました。

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Ⓒ東京水道局

くっ…ばっちりですね…。「い、いざというときスマホだとちょっと見づらいもん!」くらいしかツッコミどころが見つからないです。はぁ~さすが人口多い大都会、税収の桁の違いを感じます。

トイレ問題

和歌山断水の時には、「水はエリア外で調達することもでき、なんとかなったけど、トイレに思うように行けなくて困った」という声がよく聞かれました。

マンホールトイレ

こういうときのために「マンホールトイレ」という設備が普及しつつあるのですが、これはその辺のマンホールのふたをあけて便器を設置したよ~、というものではありません。

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Ⓒ国土交通省 災害時使えるトイレ より

事前にマンホールトイレ化するための工事が必要なようです。小学校など、緊急避難場所となるところを中心に、マンホールトイレ工事をあらかじめしておいた場所にしか設置できません。
*和歌山市の断水エリアでは、その数、7つでした。13.8万人のお尻を受け止めるにはすこし心もとない感じです。
(10月5日には仮設トイレが10箇所追加されています。また、今回は水道を使えなくなったエリアが限定されていたので、エリア外に行ってトイレを利用することはできましたし、現役のぼっとん便所もあったようなので、それを利用できた方も多かったのが不幸中の幸いでした)

そこで、ぼっとん便所が消滅してるであろう、1400万人の人口を抱える東京の非常時のトイレ事情がどうなってるのか調べてみました。

東京都下水道局によると、そもそも下水のインフラが壊れないような耐震工事をしていたり、マンホールトイレを設置できるように準備しているそうです。(マンホールトイレとして使えるマンホールには、青いゴムキャップがついてるんだそう)*

マンホールトイレ

*東京都下水道局のサイトより:https://www.gesui.metro.tokyo.lg.jp/business/b1/newstokyo/257/1/index.html

防災意識の高い東京都民は、青いゴムキャップがついてるマンホールトイレをチェックしておくとよさそうです。

ならあとは行政としてするべきことは、あらかじめそれらの情報をまとめ、マッピング・告知しておくこと‥です。都としてまとめたものはざっと探した限りでは見つけられず(あったらごめんなさい)、新宿区の解説ページが検索上位に引っかかりました。

災害用トイレ(新宿区)
https://www.city.shinjuku.lg.jp/seikatsu/midori02_001008.html

さすが都会だべ~、地図の用意もきちんとできています。
なんとかツッコミどころを探すとしたら、マップは用意されているのですが、PDF形式での提供になっています。

今回の断水でもSNS上でいくつか見かけたのですが、「スマホだとPDFが表示できない!」という人が一定数います。
インフラ停止となってから慌ててスマホで情報を見る人が多いと思うので、PDFに加えて、端末を選ばず表示できる地図形式も用意しておくと安心かな~と思いました。(都民の人、お住いの市区町村がどうなってるか調べて、必要がありそうならぜひ市区町村にお伝えください)

「東京は税収がたっぷりあっていいよね~…」じゃなくて…

「東京は自分の住んでいる小さなまちと比べると、インフラも事前告知もすごくきっちりしているな~、さすが首都だべ~」と感心しました。

でもたとえ小さなまちで税収が少なかろうと、あらゆる住民にとって水の提供より大事なものなんてないと思うんです。

東京みたいに大がかりなステキ施設じゃなくても、何かしら有事の際にすみやかに、全員に必ず水が行き渡らせようとする想定・準備には期待したい。そして、一人ひとりは「きっと行政があんじょうやってくれてるやろ」と他人任せにしないで、平時に自分の目で確認して問い合わせしたり、要求したりが大事なんだな~と思います。

※選挙の時は、断水してから「僕ら水道きっちりがんばります!」とアピールするだけじゃなくて、そもそもの断水リスクを減らすまちづくりを平時から提言してくれる政治家さん、有事の際も高齢者や障害のある人など、弱い立場の人たちが給水所に並ばなくてもよいような、目配り気配りのある仕組みを提言・実行できる政治家さんにも注目が集まるといいな~と思います。

個人としての備えも重要

もちろん都民の皆様におかれましては、すてきな設備があるとはいえ、有事の際には殺到するので、数時間は並ぶことになるでしょう。そして、水は東京都民全員に必要な量の2日分弱しかありません。
直下型地震になったら道路も寸断されることが予想されるので、Amazonでぽちっとしても通常通りの配送など期待できません。
平時に1週間分くらいの飲料水と、非常事態のトイレ袋なんかも用意しておかれると安心だと思います。

あと、いち市民としては、災害時に役立つ給水スポットやトイレ情報をGoogleマイマップにまとめるような、まちあるきの活動なんかができたらいいな~と思います☺

参考
※地震のあと何時間後にトイレに行きたくなったか?という調査に、「6時間以内」と回答した人は73%らしいです。(特定非営利活動法人日本トイレ研究所 代表理事 加藤篤さんの記事より)

※家庭用の水洗トイレで、一度に使う水の量は約6リットルだそう。(TOTOのサイトより)飲料水だけでなく、雨水タンクなどで生活用水の備蓄もしておけると安心ですね。

※タイトル画像はいらすとやさんのイラストにお世話になりました。応急給水車とかポリタンク持って運ぶ人ととか、マンホールトイレとかの素材もあってすごい!と感心しました☺




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