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あちこちの災害ボランティアセンターでデジタル支援をする人たちがいる(サイボウズ災害支援チーム イベント視聴レポート)

2021年10月27日、サイボウズ災害支援チーム主催で「ICTを活用した災害ボランティアセンターの運営事例」というオンラインイベントがあったので参加してみました。試行錯誤した経緯を気前よく共有してくださる方々のお話しはとっても興味深く目がハートに。素敵なイベントだったので、どんなものだったか、参加されなかった方にもシェアできたらと思います。(動画でもアーカイブされています!)

災害ボランティアセンター(ボラセン)とは

平和に暮らしているとほとんどその存在を知る機会がない“災害ボラセン”。災害が発生したときは、ボランティアの方々が被災地の人を助けようと手を挙げてくれます。その時、それぞれ誰をどう助けたらいいかわからないってことにならないよう、ボランティア活動をスムーズに推進するための組織が必要です。そこで様々なニーズ調査、ボランティア募集、マッチングなどを災害ボランティアセンターがやることになります。これは地域の市町の社会福祉協議会や、関係団体が運営することが多いんだそう。

※そういえば私も東日本大震災の時に何かできることはないか…とスコップ担いで被災地入りしたことがあるのですが、その時にボラセンの方が段取りの事前のレクチャーやボランティア場所の割り当て、ボランティア参加者の急病者の手当てなどをされていました。

災害ボランティアセンターの運営のたいへんさ

災害により「通常ではない体制」で「通常ではない要支援者のニーズの吸い上げ」「いつどれだけ来てもらえるかわからないボランティアのスムーズなコーディネート」というアワアワワな状態になるわけですが、ボラセンのなかにはその調整を「電話」「紙」でするところもあります。

すると、電話で聞き取ったニーズやボランティア希望の情報が大量の紙となり、必要な情報を紙の山から探すだけでも大変なことに…

なのでボラセンに従事する人たちは、長期間深夜労働、疲弊の日々…になることも珍しくなかったんだそう…。

コロナ禍で業務のあり方の変更が迫られ

コロナ禍に突入してからのボラセンは、それまでと大きく姿を変える必要がありました。これまでなら、大規模災害が起こると、全国からボランティアが1日3000人以上集まるケースもあったそう。でもコロナ禍においては県をまたぐ移動は控える必要があったり、受付で密を避けたりという必要がありで、これまでのアナログなやり方ではどうしても乗り越えられない状況になったのです。

サイボウズ災害支援チームとは

そこで、かつてよりもっとサイボウズ災害支援チームに注目が集まっているようです。コロナ禍以前より、被災地のボラセンなどでIT支援をしたり、リモートで情報収集、アプリ作成、データ入力、サイト制作等の後方支援…そういうことを、サイボウズ株式会社の有志の方がずーっとされているチームなんだそう。…なんてすてきなんだ!!(わたしがお金持ちならサイボウズ社の株を買っていたでしょう。)

そして前振りが長くなりましたが、今回のイベントは、2021年に災害のあった地域での支援事例を、静岡・広島・佐賀の県社協職員やサイボウズのパートナー会社の方々などが登壇し経験をシェアするという主旨。参加者は114名だったそうです。(県や市町の社会福祉協議会の人が多かったのかしら?)

※kintoneとは
自分でプログラム開発とかができなくても、業務に合わせたシステムをかんたんに作成できる、サイボウズのクラウドサービスです。

紙やExcelでリストを作っていて、「どれが最新版かわからない」「リストをある条件で絞り込みたい」「対応済かどうかが共有されない」「ある条件の人にだけ一斉に連絡メールしたい」と思ったことがある人や組織にとっても便利です。

災害ボラセンでどんなことがデジタル化できるか

ボランティア登録
名前、住所、携帯電話番号、参加希望日やできる支援やボランティア保険加入状況などを事前にフォームで入力してもらえます。
フォームに入力した内容は、そのままkintoneに連携され、ボラセン側で誰でも確認でき、自動的に集計もされます。

これにより、ボランティア活動に必要な資材調達の予想も立てやすくなり、スムーズな支援が可能に。

ボランティア参加予定状況のリアルタイム公開
また、上記ボランティア登録してくれた人たちの予定を自動集計し日ごとのグラフを自動生成し「〇人参加予定」とリアルタイムでホームページ上で掲載することも可能です。
これにより、最大人数を伝えたうえでよりすいてる日に参加してもらうよう促すなど、日ごとの参加者数の偏りを少なくすることもできるんだそう。

ボランティアへの連絡
kintoneではボランティア希望者の居住エリアや支援内容、ボランティア保険の加入状況などで「絞り込み」ができ、さらにプラグイン(便利な機能拡張ツール)と組み合わせることで、その人たちにボタンひとつで「例文集」から選んだメールテンプレートを使って連絡メールをすることができます。

これにより、該当日が荒天だったときの中止連絡をその日の参加者に速やかに連絡したり、「ボランティア保険に未加入のボランティア登録者」のみに、事前にボランティア保険加入しておくようお願いするメールをボタン一つで送れる、みたいなことができちゃうわけです。

ニーズ調査
現地でのニーズ調査は、調査する人がタブレットを持って聴き取りしたり、写真を取ったりしてkintoneにその場で入力していきます。
それがリアルタイムでセンター本部で見られるので、速やかにボランティアをマッチングすることができます。

さらに、住所をもとに、支援ニーズのある人を地図上にマッピングすることもできるため、ハザードマップと重ねて「このあたり浸水してるはずなのになんでニーズがあがってきてない?」とか「このあたり支援完了報告が少ないのはなぜ?」ということが可視化され、支援のパワー配分の判断スピードが上がるんだそう。(というわけで、県社協にはでかいモニターがあるととても便利、という話をされていました)

デジタルが苦手な人対応は?
特に地方や年配の方だと、デジタルが苦手という人もいますが、そういう方々向けには職員のスマホで代理入力してあげるスタッフを配置するか、無理なら従来の方法を用意していれば問題ありません。

ボランティア保険のクレジット決済などにもなじみがなく、当日現金で、という方もいらっしゃいます。そういう人向けには小銭をぴったり用意してきてね、と事前に連絡しておくこともできます。
※ボランティアの当日受付(チェックイン)にもスマホを使うそうなのですが、ボランティアする際に落としたり壊したりしたらまずいから、と当日車にスマホを置いてきてしまう人もいるそうなので、そのあたりも事前に周知することもできます。細かいけど大事!

質疑応答からピックアップ

質疑応答で「へ~」と思ったことをピックアップします。

【準備】

Q:災害ボラセンでは、ノートパソコンやタブレットは何台くらい必要?

A:規模にもよりますが、メガセンターではないのであればタブレット5台~15台、ノートパソコンは1台~5台のところが多かったようです。(今回の各県社協さんなどが回答)

※タブレットはSIM入りだったので、Wi-Fiがなくても使えるものだと便利です。(合同会社 HUGKUMI(ハグクミ)さん)

Q:紹介いただいた一連の業務にあるとよい、具体的なプラグインは?

A:フォームをkintoneに連携する「フォームブリッジ」、
kintoneのデータから一定条件の人に絞り込んで一斉メールを送れる「kMailer」(メールワイズのことも)、地図と連携する「カンタンマップ」です。(サイボウズ柴田さん)
※上記は通常有料ですが、災害ボラセンには厚意で使わせてもらえるものもあるようです。

Q:ゼンリンの住宅地図とkintone連携はできないか?

A:有料ですが連携可能です。(サイボウズ柴田さん)
表札までわかるような精度のモノなので、大変役に立つと思います。(オフィス園崎 園崎さん)

Q:そもそも電気のインフラが止まってしまったら電波とか届かないのでは?それに備えられることは?

A:最近はガスとか水道の復旧が時間がかかるのと比べると、ネット環境の回復については移動式の基地が被災地に来る形になったのもあり、かなり早くなっています。(オフィス園崎 園崎さん)

東日本大震災以降は本当に早くなったと思います。電気は被災の状況により異なりますね。最近はポータブルの蓄電器、発電機を用意する社協さんもあるので、それを資源として平時に把握しておくことは大事ですね。(合同会社 HUGKUMI(ハグクミ)さん)

ボラセンはだいたい電気が復旧してから立ち上がることがほとんどですね。(サイボウズ柴田さん)

【事前登録の運用など】

Q:事前登録者と当日受付のデータつきあわせは何をキーに行うのか

A:携帯電話の番号です。それが一番固有のデータになるので(サイボウズ柴田さん)

Q:ボランティア登録者が予定変更したい場合に備えて、各ボランティアにIDをふっておくのがよいのか?

A:IDは振りません。変更は、もう一回希望をフォームを入れてもらって備考欄に変更です、と書いてもらうようにするなど、柔軟にしたほうがよい。ユーザー自身で変更できるようにすると複雑になってバグが発生しやすいので。かっちり作りすぎないほうが良いと思います。(サイボウズ柴田さん)

Q:熱海では事前登録された方に専門性・スキルなどの追加情報を求めたと聞いたが、どんな内容?

A:最初に全部聞くとすごい項目数になるので、最初に全部聞いてしまわないほうがいいですね。活動してから様子がわかってから適宜さっとやるといいのかなと思います(サイボウズ柴田さん)

熱海では、多様な活動ができそうなタイミングで活動の幅を広げていくことができた。でも一日何千人とボランティアがいらっしゃる規模だと、ちょっと難しいのでは、と思う。(オフィス園崎 園崎さん)

【ボランティア依頼書の運用など】

Q:ボランティアさんへの依頼書からリンクするのはGoogleマップとのことだったが、田舎だとけっこう住所と緯度経度が異なることが多い。事前にポイントを地図をひとつひとつ確認してから依頼書にしているのか?

A:はい、住所のピンがたたないこともあるので、現地に詳しい社協職員さんが位置を調整したりしています。(合同会社 HUGKUMI(ハグクミ)さん)

避難所の案内時、小学校だったりするとどこが入り口を緯度経度で細かく示すのは隠れた大事ポイントですね。学校の裏側だとぐるっとまわらないといけないとか。(サイボウズ柴田さん)

事前にシミュレーションもできちゃう

とはいえいきなりのぶっつけ本番だと、ボラセンの人たちも慣れるのがたいへん…と思っていたら、ちゃーんとシミュレーション環境が用意されてるんだそう。愛!

“今回紹介された機能を体験・訓練できるようなスペースを用意しています。(地図データなどはダミーデータなので個人情報の心配はいりません)
危惧しているのは災害が起こったときに“kintone使うこと”にとらわれて、要件をしっかり考えられなくなること。
平時から事前登録の体験とか、仮予約のスキームを、受講者とやり取りすることを体験したうえで、取り組むのがいいと思います。
みなさんkintone持ってるとは限らないので、フォームブリッジも遣いながら体験して僕らの町ではどうしていこうみたいなきっかけ作りができたらと思っている。”(合同会社 HUGKUMI(ハグクミ)さん)

興味のある方はハグクミホームページからお問い合わせくださいとのことです!
https://hugkumi-llc.com/

感想:平時にこそ、備えよう

最後に登壇者の皆さんからもメッセージがありましたが、特に園崎さんが下記のような主旨のことをお話しされていたのが「愛や!!」とジーンと感動しました。この気持ちのバトンが、多くの社協関係者・ボラセン関係者や、デジタル支援できる人たちに届いて、平時に備えていけるといいな~と思います。

今日紹介したようなスキームで、支援の形が増える。県域や遠隔でできる支援が増えることで、一部のボラセンの支援者にかかっていた負担が分散できる。ツールのノウハウの話ではなく、これにより被災者への直接の対話支援に時間を使えるようになる。そこをゆるがない目的として定めたうえで、被災地社協の負担を軽減するために導入し変えていってほしい。

当日の動画はこちらから
https://www.youtube.com/watch?v=e2uaRdI92mY

災害支援サイボウズについて
https://saigai.cybozu.co.jp/








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