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AKB48語がつないだ乃木坂46ファン

通じるかな、AKB48語?

グロービス経営大学院のリユニオン(卒業生の会合)に参加した帰り道、電車で隣り合わせた若い男性が、数本のスティックバルーン(チーム名などが書いてある棒状の風船)を抱えていて、どうやら乃木坂46のライヴの帰りらしい。

どうかな、通じるかな、AKB48語? と、思って話しかけてみました。

「ライヴの帰り?」
「はい、やっと行けました。辛かったです、オンラインとか。」
「だよね、オンラインじゃ、【認知】も何もあったもんじゃないモンね。」
「そうなんですよ、彼女ら【認知】してるって言ってますけど、てんで;
 見たことあるなぁ、程度だと思いますよ。まぁ、人数多いから...。」
「乃木坂(46)、人気あるもんねぇ。黎明期のAKB(48)の比じゃないからw」

-----ここでの、【認知】は、一般的な意味よりも一歩進んで、アイドル側から、よく握手会やライヴに足を運んでくれるファンのことを、自分を【推して】くれている人として、認知していることを指します。

そんなAKB48のファンの間での言葉遣い、ある意味AKB48語を知ったのは、その当時通っていた、グロービス経営大学院での、あるクラスでテーマに選び、同期4人でグループワークした時のことでした。

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黎明期のAKB48を【推し】た人たちの言葉


私を含めて4人のグループワークで研究したレポートなので、私が関わった部分を少しだけアップします。私たちが、AKB48をテーマに選んだ2010年初め頃には、デビューから4年ちょっと経っていて、それなりに話題になりつつありましたが、プロデュースした秋元康がその前に一大ブームを演出した、おニャンコクラブや、その当時にヒットを連発していた、モーニング娘。に比べたら、話題になり方が偏っていて、まだまだ静かなブームで、濃いAKBファンの間を除けば地味でした。

私たちの目的は、AKB48が、おニャンコやモー娘のようなテレビ番組を使ったマス展開をせずに、ファン達のどこに、何をどうやって届けて、ファンの心を動かしているのか、といういわゆる顧客インサイトが、どんな仕組み、考え方によって、作り上げられているか、というレポートでした。その研究の過程で、ファンに密着インタビューを何度か、エスノグラフィー的に行いましたが、その過程でファン達(感謝を込めて以後、【AKBヲタ】と呼ばせてください、私もその沼に少しハマりましたので。)から、学んだのがAKB48語とも言える、言葉たちでした。

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-----ここに掲げるシートは、AKB48誕生に背景として少し関わるかなぁ、と思った統計データ、です。国のGDPは大きく成長していきましたが、平均初婚年齢は上がり続け、生涯未婚率もかなり上がっていました。

(なお、AKB商法のヒミツ、を解き明かすのがテーマでは無いので、レポート内容は、このくらいにして先にいきます。)

「会えるアイドル」から【会いに来させるアイドル】へ


私たちが、人づてに【AKBヲタ】の方々を紹介していただいて、インタビューをした頃は、前年に初の武道館公演、前作で初のオリコン首位に続いてリリースした「桜の栞」も連続首位、僅か一週間で32万枚弱のセールスを記録(まぁ、みなさんのご存知の【AKB商法】だから、ですが)と、思いっきり上昇気流に乗っている頃でした。

ですが、【AKBヲタ】の方々は、何故か浮かぬ顔、でしたので、理由ワケを聞いてみると、そもそもの「会いに行けるアイドル」とのコンセプトを、【古参】(古くからのファン)と言われる古くからのファンが支え、その代わりにメンバーたちも【AKBヲタ】たちを【認知】して、いわゆる絆を感じられる関係だったけれど、売れるに従い、【新規】(最近のファン)が増えて、秋葉原のAKB48劇場での公演の抽選にもなかなか当たらず、握手券をたくさん集めても、大行列でやっと会えても5秒、と。コアな【AKBヲタ】は、東京ではもう無理、【柱】(ファンクラブメンバーのこと)でも、仙台の公演まで出向くなど、実は「会いに行けるアイドル」から【会いに来させるアイドル】になっちゃっているんですよ、と嘆くこと、しきり。

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「野澤さんは、【ダレ推し?】」と聞かれて、即座に
「あ、【まゆゆ】です。年甲斐もなくw」
「まゆゆ、可愛いですよね。【AKBヲタ】の間では
 バーチャルじゃね?って言われてますよw」

この【ダレ推し?】という問いかけに、その前のAKB48劇場のリサーチで話しかけた時は、即答できなかったので、今回は体験済み、心の準備が出来ていた成果で、【まゆゆ】と渡辺麻友さんの愛称を、答えられました。こんな風に、【AKBヲタ】たちは、AKB48語を使える人たちであれば、心の距離感を縮めてくれて、話しをしてくれました。

分岐点は「大声ダイヤモンド」?


「で、野澤さんは【大声マエ? 大声アト?】」

これは意味が分からずに、教えてもらいました。ここで言う「大声」は、2008年10月にリリースされた「大声ダイヤモンド」のことで、この楽曲のリリース前と後でAKB48も変化し、【AKBヲタ】もどの時期にファンになったかで大きく異なるのだと。その後に、色々、後付けで調べてみると、なるほど、それまでAKB48として手探りだった事柄が、その辺りでクリアになって、大きく歩みを変えた時期のようでした。【AKBヲタ】の方々は、それを肌身で感じていて、黎明期を支えた人たちは、いわゆるアーリーアダプターとの意味で、【大声前】と呼んでいたのでしょう。

どう変わったかについてを書き出すと長いので、一つだけ。この画像をご覧ください。

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「ついに全国デビュー」と書かれた表紙、ご覧いただきたいのは、AKB48の題字の下の振り仮名が、「アキハバラ フォーティエイト」と書かれていることです。もちろん、誰もがAKBは秋葉原、SKEは栄、JKTはジャカルタの略称と知ってはいるのですが、当初はそのまま「アキハバラ フォーティエイト」とあり、劇場にもその記載が随所にありました。ある意味、秋葉原ご当地アイドルを名乗るかのように。ところが、【AKBヲタ】さん達が言う【大声後】と言われた「大声ダイヤモンド」の公式PV、下記リンクの0分47秒の劇中のセリフ、お聞きください。

「アキハバラ フォーティエイトさぁーん?」と、呼び出されたことに対して、何人もで明確に否定して、「アキハバラ フォーティエイトじゃないよAKBだよ。」と。これを観た【AKBヲタ】さんたちは、あぁ、時代が終わった、新しい時代になったのか、と感じたのカモしれません。この楽曲・PVは、それまでの不動のセンター・前田敦子さんではなく、当時11歳の松井珠理奈さんが抜擢されるなど、確かに大きな変化の時期でした。

「もちろん、私はドが付く【新規】ですから【大声後】ですよ。」

覚えたてのAKB48語を使いながら、アレコレとお話しをさせていただいて、結局、その【AKBヲタ】さんたちと、そのインタビューをした居酒屋の後、カラオケBOXに一緒に行き、当然のことながら【AKBカラオケ】(AKBの曲ばかり歌うだけw)を【ミックス】(下記動画参照)叫びながら、歌って、終電を逃して、満喫に三人で泊まりました。コロナ禍の今では、なし得ない楽しい暴挙でした。


「AKB48考」の小さな後日談

後日談ですが、この後、【AKBヲタ】のお一人に誘っていただいて、西武ドームでの大イベント(下記動画)にまで行く、ハマりようで、私自身もニワカながら【AKBヲタ】の一人に紛れ込んで、【サイリューム】振っていましたw
もう一つ、ちなみに、少し後に上海でSNH48が結成され、旗上げ公演が開かれました、とのニュース映像が流れた時に、驚いたのは初の公演だと言うのに、現地のヲタさんたちが揃って【ミックス】を叫んでいたことです。女の子たちをチーム編成するだけではなく、ファンの遊び方まで輸出しているのかとw

乃木坂46ファンと少し話せたAKB48語


電車で隣り合わせた人、たった駅三つの間くらいでしたが話しながら、同じ駅で降りて、エスカレーターを上がる間に、画像を一緒に撮りました。(が、アップの許可は得る暇がなかったのでお顔などマスクさせていただきました。)  右、左に別れる際に

「あ、コレ、どうぞ。」とスティックバルーンを一本、くれました。
「えっ、いいの? ありがとう」と、いただいてニコニコと帰って来ました。

エレベータピッチ的な短い時間で、小さな会話ができたのは、AKB48語と私が呼んだ、いわばスラングのおかげだったのだと思います。

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仕上げに【AKBヲタ】さんたちが語った、哲学的な言葉(枠内)で、締め括ります。もしかすると、それは世の中の全てがこうなのかもしれないですね。

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