見出し画像

広告動画のシナリオ作成法⑤構成を立てる

7-1.動画の構成を決定する
広告動画の作成において、最も重要な鍵となるのが構成です。構成とは、情報を「どのような順番で」「どのくらいのボリュームずつ」「どのように伝えるか」をおおまかに決めたページ1枚程度の骨組みです。シナリオを書く際にどれほど構成が重要かについては過去の記事でも述べているので、参照してください。

今回は広告動画における構成パターンを紹介します。構成の立て方は動画の目的やトーン、商品内容によって変わりますが、多く使われるのは下記の3つでしょう。
私自身は経験で学んできたことですが、後になってプレゼンテーションの手法として体系化されていることを知りました。広告用動画も基本的にはプレゼンテーションで使われているフレームワークと変わりません。このブログではインターネット記事などで紹介されているプレゼン手法に動画作成の際の視点を加え、解説していきましょう。

①SDS法: 90秒~5分の配信用映像に効果的

SDS法は、プレゼンテーションや動画制作において広く用いられるシンプルなフレームワークです。SDSは「Summary(要約)」「Detail(詳細)」「Summary(全体的な要約)」の頭文字を取ったもので、以下のような流れで構成されます。

  • Summary(要約): 最初に動画全体の要約を視聴者に伝え、どのような内容が含まれるかを簡潔に示します。これにより、視聴者は動画の目的を理解しやすくなります。

  • Detail(詳細): 次に、メインの内容を詳細に説明します。ここでは、具体的な情報やデータを提示し、視聴者に興味を持ってもらうことが重要です。

  • Summary(全体的な要約): 最後に、もう一度要約を行い、視聴者に伝えた情報を再確認します。これにより、メッセージがより強く印象に残ります。

このSDS法は、特に90秒~3分程度の短時間でメッセージを伝える広告動画に適しています。インターネット広告などで冒頭に要約を入れることで、視聴者が動画を途中で離脱するリスクを軽減し、最後まで視聴させるために役立ちます。また、展示会などの映像でも何を説明する動画なのか、冒頭で興味、関心を持ってもらうことでブースへのアクセス率が高まります。

②FABE法:BtoBの営業用ツールで威力を発揮

FABE法は、主に商品の特長や優位性をアピールするために用いられる構成法です。FABEは「Feature(特徴)」「Advantage(利点)」「Benefit(利益)」「Evidence(証拠)」の頭文字を取ったもので、以下のステップで構成されます。

  • Feature(特徴): 最初に商品やサービスの特徴を客観的に説明します。視聴者がその商品に関心を持つように、具体的な特徴を強調します。

  • Advantage(利点): 次に、その特徴が競合製品に対してどのように優れているかを説明します。差別化ポイントを明確にし、視聴者に優位性をアピールします。

  • Benefit(利益): さらに、その利点が視聴者にどのような利益をもたらすかを具体的に説明します。視聴者にとってのメリットを強調することで、購買意欲を高めます。

  • Evidence(証拠): 最後に、上記の特徴、利点、利益が信頼できるものであることを証明します。データや顧客の声を用いて、視聴者の信頼を得ることが目的です。

FABE法は、商品の詳細な説明が必要な場合に効果的です。特に、視聴者が購入を検討している段階で、この構成を用いることで商品の魅力を最大限に伝えることができます。経験的にはBtoB商材などの営業ツールとしてこの手法を取り入れる場合が多いように思います。動画尺としては10‐20分程度の分量である場合が多く、FABE法で作成した営業用ツールを映像配信用に3分程度の映像にSDS法で再編集するような事例もあります。

③DESC法:通販番組、ライブコマースでも使われる広告の王道

DESC法(デスク法)は、描写する(Describe)、説明する(Explain)、提案する(Specify)、選択する(Choose)の4つの頭文字を取った構成手法です。視聴者に明確で説得力のあるメッセージを伝えたい時に有効です。

  1. Describe(描写する)
    最初に、視聴者に動画のテーマや問題点を明確に提示します。視聴者が共感しやすい具体的な事例や状況を描写し、問題意識を共有します。この部分では、問題が何であるかを簡潔に示すことが重要です。

  2. Explain(説明する)
    続いて、その問題に対する自分の考えや感情を説明します。このステップでは、視聴者に対して問題の深刻さや重要性を強調し、なぜこれに取り組むべきかを納得させることを目指します。

  3. Specify(提案する)
    ここでは、視聴者に具体的な解決策や行動を提案します。例えば、動画を見た後に視聴者が取るべき行動や、問題解決に向けた次のステップを明確に示します。提案はシンプルで実行可能なものが望ましく、ハードルが高い場合は実行可能なように言い換えることもあります。値段が高い場合、「1日わずかコーヒー1杯分の投資で」…などといった表現をすることがその例にあたります。

  4. Choose(選択する)
    最後に、視聴者に提案された行動を実行するよう促し、次のステップに進むよう選択を促します。視聴者がこの提案にどう応えるかを自ら選び取る余地を与えることで、エンゲージメントを高める効果があります。

DESC法を用いた動画構成は、出演者が情熱を持って語り掛ける場合に有効です。多くはMCとなる出演者がカメラに向かって語り掛けるタイプの映像で採用され、お手本となるのは「ジャパネットたかた」の商品紹介でしょう。視聴者が楽しく話を聞くうちに引き込まれ、商品が欲しくなる王道の動画構成です。商品販売だけでなく、会員制サロンへの入会促進、ライブコマース、ウェビナーなどでも採用されています。

プレゼンテーションにはその他にも「TAPS法」「新PASONA法」などのフレームワークもあり、動画広告に応用可能です。さらに踏み込んで学びたい方は一度、詳しく調べてみるといいでしょう。

とはいえ、構成を組む際に「こんなややこしいことは考えたくない」という人が大半かと思います。次回は、理論はすっ飛ばして「とりあえずシナリオを作成したい」という方のために簡単にできる構成の組み方を紹介しましょう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?