![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/145621384/rectangle_large_type_2_1b842c1aa261a95622401143d62a6f7d.png?width=1200)
「1時間分の沈黙の苦しみ」〜忘れられない生徒との日記〜
先生として忘れられない悔しいできごとがある。
「学校行きたくないって言ってます。」
お母さんからの突然の電話。
(え?)
全くのノーマークだった。
いつもニコニコしている女の子。
誰にでも学校に「行きたくない」気持ちのときはある。
でも経験で知っている。
実際に学校に来なくなったときは、もう手遅れなことを。
(そうなる前にできたことがあったはずなのに。)
いつもそう思う。
高校生になると、自分の感情を隠せるようになる。
ニコニコして頑張ってたんだな。
「お昼からでもいいから来れそうですか。」
祈るような気持ちで聞いた。
1日休むと、 もう糸が切れちゃって、 次の日も休んじゃう。
それが続いてしまうかも、、、
でも、遅刻で来れたら、まだ大丈夫かもしれない。
「電話に出られそうですか?無理に出なくても大丈夫です。」
電話に出てもらえるかどうかも大事なポイント。
まだ私の方を向いてもらえる余地があるか、、、
結局、出てもらえなかった。
これはだいぶまずいかもしれない。
「お母さん、今日は彼女のそばにいれますか?」
「お仕事休みにしました。」
(よかった!!)
「お昼から行けるかどうか、声掛けお願いします。」
_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _
ここから彼女の友だちに聞き取り。
というか、お願い回り。
「行きたくないって電話があってん。
もし、昼から来たら、声かけてあげて。
行きたくないって言ってる話は
知らないふりしといてな。
話を聞き出そうとしなくてもええよ。
学校ってやっぱり楽しいな、
って気持ちになってくれたらいいな。」
「大丈夫!!」
その生徒はとても信頼できる。
彼女に任せよう。
こういうときは教員よりも友だちの力がとても大きい。
心強い味方がいてよかったなぁ。
_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _
お母さんの協力もあって、 昼から来てくれた。
こういう場合、
私は 「今日がこの子と会える最後かもしれない。」
という気持ちで本気で向き合う覚悟をする。
実際に最後になってしまうことも多い。
この来てくれた1日がめちゃくちゃ大事。
「話しよっか。」
放課後、個室に呼んで2人で話をした。
_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _
「今日はどうしたのかな?」
「なにかあった?」
、、、 、、、
一言も話をしてくれない。
でもこの子との関係性はできている。
言葉にするのが苦手だということも知っている。
ここは質問攻めにしてはいけない。
、、、 、、、
もう我慢比べだと思った。
私も黙ることにした。
、、、 、、、
ずっと沈黙が続いた。
「、、、クラブに行きたくない。」
泣きながら、 その一言がやっと出てきた。
沈黙の状態で1時間経っていた。
_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _
そこから、
クラブの練習がしんどいから行きたくない。
という話がどんどん出てきた。
こういうときすぐにどう対応するか動いてしまいそうになるけど、
ここはグッと我慢。
本人は自分の気持ちを言えただけでスッキリしたみたい。
「もう一度がんばってみます。」
そこから卒業まで1日も休むことはなかった。
自分の気持ちを言葉にするのが難しくて悩む生徒がたくさんいる。
高校生になるとつらいこともうまく隠せるようになるので、
こちらが気づかないことも多い。
特に、おとなしい生徒は正直に言うと先生の目に入りにくい。
だからといって、大丈夫なわけではない。
わかってたけど、、、
「1時間分の沈黙」
これが、この子の苦しみだった。
ここまでくるまで気づけなかった。
本当に悔しかった。
よろしければサポートお願いします! いただいたサポートは、高齢者施設で利用者さまの人生をイラスト化する「人生グラレコ」、または、障がい者就労移行事業所での「グラレコで鍛えるまとめる力グループワーク」の活動資金に使わせていただきます。