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SM日記①君の泣き顔が見たい

泣き顔が見たくてたまらない、と思うようになったのはいつからだろう。

小学生のころは好きな男の子に足をひっかけて転ばせたり、服の両袖を結んで手が出ないようにして頬を抓ったり、羽交い締めにしてくすぐったりと、ひどい悪戯をして遊んでいて(それでなぜか両思いだった)、思い返せばこのときには既にそんな想いを抱いていた気がする。

「男なんだから泣くな」と昨今口に出す人はそんなにいないものの、少なからずマッチョイズムを内面化している人はたくさんいて、そのマッチョな思想がSMの痛みや屈辱を通して“泣く”ことで、私の手によってぼろぼろに崩れる様子を見るのが好きだ。

よだれ、鼻水、血、精液にまみれてグズグズ涙を流す成人男性。みっともなくて汚くて情けなくて一番かわいい。ふだん誰にも見せられないその姿。困らせたい、泣かせたい、良い子だねって撫でてあげたい、でも、いきなり頬をぶってみたい。相手がかわいくて大切にしてあげたい自分と、強烈にわがままでサディスティックな自分の狭間でいつも不思議な気持ちになる。

でも最初から全員に泣くまで何かを与えていいわけではないのは重々承知していて、最初は小出しにしてしまう。頭とお腹にマグマみたいな熱い血が集まって胸が高鳴ってどうしようもなくなるのを、マゾをじっと見つめて、ブレーキとアクセルを握りしめ、調整して抑え込んでいる。あなたは私の愛に耐えられますか?応えてくれますか?途中で逃げたら許さないから、だからもうちょっと頑張って。頭の中で相手に語りかけながら暴力と快楽を行使する。

私がアクセル全開になってしまったら、マゾはどうなってしまうんだろう。一生消えない傷が残る?死んじゃったりする?さすがに死んじゃうのは嫌だな。いなくなるのは悲しいもの。
“やっていいこと”の枠組みのなかで、もっと自分の欲望を飼い慣らして、マゾが心の底から求めることと擦り合わせてみたい。

マゾをぎゅうぎゅう握り潰してぐちゃぐちゃにしてどこかに隠してしまたい。口に入れて咀嚼して飲み込んでしまいたい。全裸で繋いで監禁して檻に入れたい。血が滲むまであちこち叩きたい。心ゆくまでその肉に爪を立て、歯型が残るほど噛みたい。身体に残る痣や傷を眺めて、あぁ愛おしいと思いたい。頭の中は欲望まみれ。

現実でできることもファンタジーな妄想もひっくるめて、そんなことを考えながら歩くクラブからの帰り道でした。

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