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コロナ時代のライブハウスパフォーマンスについての考察

「コロナ時代のライブハウスパフォーマンスについての考察」というタイトル。
正直つけたくなかったけど、これしか出てこなかった。

今さら「コロナ時代の~」とかつけるのはダサいし、煽ってるようにも見えるし、僕は思考停止の言葉だと思っている。
でも、新型コロナウイルス感染拡大によって大打撃を受けた業界があり、その状況と真摯に向き合って対策を講じている。

だから、「コロナ時代の~」とつけるしかなかったのだ。

まえおき

今日11月5日、ZEPP TOKYOでおこなわれたUVERworldのライブを観に行ってきた。
もう何回目か数えるのが面倒にすらなってきた、大好きなバンドの大好きなライブである。

彼らも例に違わず打撃を受けていて、お客さんの前でライブをやるのは2月22日以来。
MCによると257日ぶりらしい。

彼らにとっても久しぶりのライブ、僕たちお客さんにとっても初めての”コロナ時代の”ライブハウス。
ライブが最高だったとともに、貴重な経験をさせてもらった気がするので、考察として記そうと思う。

※セットリストは明かさないよう、vocalのTAKUYA∞さんがブログに書いていたので、以下曲名は一つも出していない

整列~入場まで

まずは整列について。
いきなり以前と違っていて新鮮だった。

以前までは「整理番号100~200の人はこの辺に並んでくださ~い」といったざっくりとした整列しかしていなかった。
それもそのはず。
”座席番号”ではなく”整理番号”だからだ。
オールスタンディングのライブハウスでは、入場した瞬間に”整理番号”は無意味な数字に変化する。

だが今回チケットに記されているのは座席番号。
かつ、規制入場がおこなわれた。

「13:30~13:45では、1階〇列までの人が入場できます」といったように、時間差で入場するようになっていたのだ。
これに関しては完全に賛成で、コロナが落ち着いてもぜひ続けてほしいと思った。

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そして入場。
一つずつ間隔をあけた状態で座席が用意されていた。
ライブハウス=スタンディング、が僕のイメージなので、これも新鮮だった。

もちろん、人がパンパンに詰まって苦しい中歌い叫ぶのがライブハウスの醍醐味ではあるが、これはこれでありな気がする。
ちゃんとパーソナルスペースが確保されていて、必要以上に他人と密着することもない。

また、座席に荷物を置けるのもライブハウスでは珍しい体験。
ロッカー戦争に巻き込まれなくて済む。

さらに、開演を座って待っていられるのが大きかった。
1時間くらい立って待っていてもやることもないので、座って仕事ができるのは超ありがたい。

開演前は、総じて「これもありだな」という感想だった。
良し悪しどうこうではなく、「こういう楽しみ方もあるんだな」とわかったのが貴重な体験。

ライブ中

さあ、開演。
大好きなUVERworldが目の前に現れた。
でも、最初の5曲くらいはとにかく苦しかった。

なぜなら、声を出すことを禁じられていたからだ。
飛沫感染のリスクを避けるために講じられた策である。

大好きなアーティストが目の前で歌っているのに、大好きな曲を演奏しているのに、僕たちお客さんは声を出せない。
ライブハウスを、アリーナを、ドームを彩った曲たちなのに、あのときのようにコール&レスポンスができない。
声を出せないことはこんなに苦しいのか、声が出せるのは当たり前なんかじゃなかった、そう思い知らされた5曲だった。

冒頭は、楽しみ方がわからず、でもテンションは上がっていて、「どうしていいかわからない」が正直な感想だった。
中国語が一切わからないのに上海まで遊びに行ったとき以来の「どうしていいかわからない」。


でも、そのことはUVERworldは百も承知。
「皆の代わりに俺たちが声を出すから、皆は手拍子なり手を上げたりできる限りの表現をしてよ」と。
ファン想いの彼らは、これを理由にコーラスが多めのセットリストにしたらしい。

そこからは僕も段々慣れていき、一曲一曲を噛みしめるように楽しんだ。
また、声は出せなくても踊れはするので、アガる曲は精一杯のボディランゲージで喜びを表現できたはず。

余談だが、間隔を空けた少なめのキャパだったからこそ、声が出せないからこその楽しみもあった。
密集していない分、他のお客さんが楽しんでいる様子もよくわかる。
その姿を見ていると、なんだか自分まで楽しくなってくる。
それに、ライブハウスでは気分を悪くする人や怪我をする人が毎回必ずいて心配になるが、それがないのも精神衛生上良い。

また、ステージのセットや照明も注意深く見ることができた。
「こんな風になってたんだ」という新鮮な発見も楽しかった。
さらに、周りから声が聞こえない分、楽器の音がよく聴こえる。
音楽好きにはたまらない楽しみ方だろう。


そんなこんなで、ソーシャルキャパでのライブハウスパフォーマンスは大盛況で終了。
純粋にライブが楽しかったし、今までにない形だったのでいい経験ができた。

何をもって"エンターテインメントの成功"とするのか

よく「観客動員数〇〇人!」なんてことがニュースになるけど、"量"では測れない状況になってしまった。
ソーシャルキャパでも毎日ライブをすれば、そりゃ"量"は積み重ねられるけど、それは無理。
ライブをやりたいアーティストは山ほどいるし、毎日ライブするのはアーティストの体力が持たない。

また、「盛り上がった」かどうかも判断しづらくなった。
声が出せないライブで、それは測りようがない。

でも、今回のソーシャルキャパでのライブハウスパフォーマンスは「最高だった」と胸を張って言える。
観客が少なくても声が出せなくても、僕の心は満たされたし、僕の中では間違いなく「成功」。
ここに、エンターテインメントの真髄を見た気がする。

目の前の一人に全力で届けるのが「エンターテインメント」

UVERworldは、とあるライブで「客が1~2人しかいないときに全力でやってた俺らは、1mmもかっこ悪いところはなかった」と言っていた。
広いライブハウスでお客さんが知り合いだけ、という状況でも、彼らはその1~2人に全力を尽くして伝えていたのだ。

それを、今日のライブでも感じることができた。
お客さんが少なくても声が出せなくても、いつもと変わらぬ全力のパフォーマンスをしていたし、その時のギラついた顔は本当にかっこいい。
一人で噛みしめるように聞いていたら、心にグサグサ入ってきて涙が止まらなくなった。

そこで気付いた。
目の前の一人に全力で届けるのが「エンターテインメント」だ、と。

一人ひとりの心にを突き動かすのに、観客動員数は関係ない。
大事なのは、何人来たかじゃなくて一人の行動を起こせたかどうか。

だから、アーティストは全力で歌ってるんだ。
「目の前のあなたに届けるぜ」と。

あとがき

もちろん、これがライブハウスのスタンダードになるとは断言できません。
別に音楽業界に精通しているわけでないし、時代はどうなるかわかりません。

だけど、今できるライブハウスパフォーマンスがあるとわかったし、人の心を動かせるともわかった。
制約があろうが、届けたい人に届けることには変わりない。

UVERworldは「暗闇は必ず晴れる」と言っていて、最も心に残った言葉だ。
アーティストはそんなことを伝えてくれてるし、世の中の風潮を跳ね返してステージにも立っている。

現在の形が"ニューノーマル"なのかどうかはわからないが、エンターテインメントは、ライブハウスはいい方向に向かっていくだろう。
音楽が好きな人、ライブハウスが好きな人は、無理のない範囲でぜひ足を運んでみてほしい。
エンターテインメントの真髄が見られるはずだ。

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