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愛され方を知る(仮)①

※このnoteは、"愛され方を知る(仮)"という文章作品の原稿である


車道を横断しようとする歩行者。
それに気付き止まる車。
そしてペコペコしながら渡る歩行者。

この時、歩行者と運転手はどんな気持ちなのだろうか。

綺麗なストーリーを考えると、運転手が好意で「どうぞ」と止まり、歩行者が「ありがとう」と渡っていると考えるられるだろう。
しかし、歩行者は「すいません」と口が動いているように見えることが多い。
日本人特有なのか、「ありがとう」の場面で「すいません」と言ってしまうのは。

仮に「すいません」だとしたら、歩行者はどんな気持ちなのだろう。
自分がその道を渡りたくて止まったのに、望み通り車は止まってくれたのに、ペコペコ謝りながら渡るのはなんだか腑に落ちない。


もしかしたら、ぼくたちは恩を感じるのが苦手なのかもしれない。
言ってくれたこと、やってくれたことに対して、恩よりも先に申し訳なさが勝ってしまう生き物なのかも。
相手の手を煩わせてしまったことへの申し訳なさ?

しかし、車の運転手はそんなこと一つも考えていない。
歩行者がいたからブレーキを踏んだだけだ。
そんなことに申し訳なさを感じる必要はない。

むしろ、歩行者もニコニコしながら道を渡った方が、車の運転手も「止まってよかった」と思ってくれるだろう。
この場面で必要なのは、多分ペコペコではなくニコニコだ。


先日、ある人たちと「恩送り」について話していたとき、興味深いことを聞いた。

マラソンランナーは、見ず知らずの人からの声援を受けて走っていく。
その力強さを知ってるから、別のマラソン大会で誰かを無条件で応援できる。
これは恩送りそのものだ。

僕もランナーなので、沿道で声を出してくれる人たちや、給水所で水を出してくれる人たちの有り難みはよくわかる。
先日ハーフマラソンに出場したが、その時給水所で無意識で「ありがとう」という言葉が出たし、沿道の人の声援にニコッと反応したりした。
自分の力になっていることも理由の一つだが、この人たちの気持ちに応えたいという想いもあったのも事実だ。

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480字
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