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古井由吉『眉雨』 と 徳田秋聲『町の踊り場』

2月開催の装幀画展(パレットギャラリー麻布十番)は

23人の作家がそれぞれに1冊の本を選び、

その装幀画を描くという企画です。

樋口鳳香は古井由吉『眉雨』を選びました。


オリジナルのカバー画は伊東深水『三千歳』


以前から本棚にあった古井由吉の『眉雨』

代表作は他にもたくさんあるのに、どうしてこれを手にしたのだろうと

ボーッと読み返しながら、目次を眺めて

ああ、これだと思い出しました。

『眉雨』は短編集で、最後に『踊り場参り』が収められていて、

その内容を何かで聞き及び、読みたいと思ったのがきっかけでした。

『踊り場参り』は、徳田秋聲の『町の踊り場』を絡めながら展開していく物語で

舞台となる街並みは秋聲の故郷、金沢です。

秋聲の『町の踊り場』には、どうにも心に引っかかるシーンがあり、

古井由吉もそこに触れていました。

季節は夏。姉の弔いに夜行で駆けつけた主人公は葬家を抜け、

紹介された料理屋へ旬の鮎を食べに出かける。

「鮎を食べに来たんだが、あるだらうね。」

女中に聞くと

「あります。」

というので風呂に入る。

さっぱりした後、女中がやってきて

「鮎は何にしませうか。」と聞くので

「魚田が食べたい」と伝える。

引返した女中は、直ぐ再びやつて来て、

「鮎は大きいのが切れてゐて、魚田にならない」

と言う。

「そんなに大きくなくたつて……どのくらいなの。」

「さあ……ちょっと聞いてまゐります。」

また少し経つてから、女中が部屋に来る。

「鮎はございませんさうですが……。」

「小さいのも。」

「は。」

そのやりとり。

さっきあると言ったのに、なぜそうなる?

ちぐはぐで、たるい会話が、気になって仕方なく

さらに鮎がなかったと言う主人公に、葬家がさらっと答えたその理由がまた強烈で

物語の最後に登場する踊り場よりも印象深く刻まれるシーンです。


ともあれ、被災地は今日も雪。

一日も早く温かな日常生活が戻ることを祈るばかりです。


鏑木清方『築地明石町』 徳田秋聲の愛人だった山田順子は この立姿を彷彿とさせたと言われたほどの美人だったそうです


順子の恋人だった竹久夢二の「古雪のゆき」


【文学とアートの出逢い】
~髙橋千裕・御子柴大三・山本冬彦の選抜作家による装幀画展XI~
会場:PALETTE GALLERY パレットギャラリー
   東京都港区麻布十番 2‐9‐4
会期: 2/24 (土)~3/3 日(日)
   11:00~19:00(最終日は17:00まで)


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