【掌編小説】僕の器は
あの頃は、僕の身体の中に中心があって、吐く息は熱く、足だって四角い筋肉がついていて、呼ぶ声の元へすぐに走ってゆけた。周りには草があって、木があって、小石に躓くことはしょっちゅうだった。擦りむいた膝の傷は盛り上がって消えることはなかったけれど、そんなことはすぐに忘れた。日陰は休むところで、そこに座っていれば君がすぐに探しに来た。君の腕は日焼け止めを塗らないせいで真っ茶色に焼けていて、3丁目のパン屋のクリームパンより膨らみ美味しそうに見えた。夕暮れにただいまと言えば帰ってくる声が