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人類最大の謎の答えを言う。浮気の基準はクリーム玄米ブランではかる

誰もが解けない謎。
人類最大の謎を今問う。

どこからが浮気ですか??

ケーキを囲み、かわいいくまさんが描いてあるラテをすすり、
女子が3人も集まれば繰り広げられる話題。

何をしたら、浮気か……

長年聞かれるこの謎に、私の答えを言う。

私が、浮気されたと思う瞬間は
クリーム玄米ブランを見て、他の女を思い出した時だ。

「ねえ、お腹空いてる?」
「……空いてる」
「やっぱり」
35歳。立派な大人になっているはず。身長も172cmもあって、どこからどう見ても私は大人だ。だけど、小さい頃からの癖が抜けない。お腹が空くと、極端に機嫌が悪くなる。無言になって、ちょっとしたことでイラっとくる。よその人にまで、態度を悪くすることはない。そのあたりは節度ある大人だと思っている。だけど、身内に気を遣えない。

この日は連れ合いとドライブしていた。
ランチでも夕食でもない14:00頃。朝ごはんを食べすぎて、ランチは止めた。変な時間にお腹が空いてきた。たくさんはいらない。ちょこっとだけお腹が空いている。
同じ正面を向きながら、静かにしながらじっと耐えている。

ダメだ。
やっぱりダメだ。
カバンを漁り、常備食を出す。
袋を破ると車内にカカオの香りが充満した。

「いつものやつですか?」
ちらりと私を見ると、連れは笑う。
「はい」
前歯でブランを挟みながら、返事をする。
空腹になるとイライラする私は、いつもクリーム玄米ブランを持ち歩いている。決まってカカオ味。体にいいか悪いかは分からないけど、玄米が入っているのが、お菓子を食べる罪悪感を減らしてくれる。

ぼりぼり食べると、胃が落ち着いてきた。
「お腹空くと、すぐ機嫌悪くなるからね」
連れは笑って、運転し続けている。一緒に過ごし始めて約1年。取り繕うとすることはない。
空腹になってイライラしても
眠たくて機嫌が悪くても
連れはいつも態度を変えない。
愛だの恋だのという関係ではなく、ただそこにいる。
のろのろとした関係が心地よい。
家に帰って、家事をして、横に並んでごはんを食べて寝る。毎日当たり前に過ぎていく。
平坦な毎日がこのままずっと続いていく。安心感があるだけで十分なのだ。

日常生活を繰り返す毎日。
薄暗い玄関を開け、自分で電気を点け、洗濯物を片付ける。
係が決まっているわけではないけど、先に帰ってきた方が何となくやることになっていた。
部屋でシャツを畳んでいると、扉を開ける音がする。

「ただいまー」
どうして夕方なのにこんなに元気なのだろう。
「おかえりー」
空返事をすると、彼は袋を漁る。
ティッシュ
綿棒
そして
クリーム玄米ブランが4袋。

「こんなに!?」
「非常食でしょ?」
得意気に袋を並べると、
「部屋に置いときなよ。非常食」
と言って自分の部屋に消えていった。

こんなに食べるかな……
積み上げられたブランたちを見て、ムダ遣いなのかもと思う。
ただ、浮かんできたのは
ブランを見て、連れは私を思い出してくれたということだ。

一緒にいる時なら分かる。そばにいれば、意識する。
いない時、関係するものを見て、思い出す。
思い出せるのは、常にその人のことを考えていなければ難しいことだと思った。

ブラン=私。
違う女のことを思い出したら……

2人でごはんに行く。
飲み会に行く。
キスをする。
体を合わせる。

あからさまな行動より、激しくイヤなのは
頭の中に違う女がいることだ。
ブランを見て私を思い出さなかったら、私は浮気をされたと思うと思う。

「お腹空いた……」
「!?非常食はお持ちですか?」
「あります」
今日も私にはブランがある。
そして、連れはいつもと変わらず、ブランを食べる私を見ていた。


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