スキキライ*シンドローム⓪

 私の名前は美空アカネ、高校二年生。

 幼いころに両親をとある事件で亡くしてから、家がお隣だった夏目一家に引き取られた居候者だ。

「なあ、アカ姉(あかねえ)。そろそろ、時間。起きないと遅刻するぞ」

「んー……。もう少し寝かせてよ、セラちゃん……」

「ダメだって。そう言って、この間も遅刻しかけただろうが」

「む……。起きる」

「おう」

 この見た目が厳ついのはこの夏目家の長男であり、今年から同じ高校に入学した、所謂幼馴染の夏目星羅(セラ)。

 昔は病弱な可愛い男の子だったのに、今では喧嘩をしたら負けなしの不良になっていて、『強拳のセラ』の異名を持っている。

 彼の変わりようが凄まじすぎて、彼のお母さんにそれとなく聞いてみたけど、『さあ、どうしてかな? 私には分からないなあ』と、はぐらかされた。

 今思えば、この家族がなぜ私を引き取ってくれたのかが、甚だ疑問で。

 この夏目家と、私の美空家は本当に家がお隣と言う共通点しか無かった。

 そのことも、彼のお母さんに聞いたことがあったけど、それも前述の通りにはぐらかされた。

「アカ姉、行くよ」

「あ、ごめん。今行く」

 ご飯を食べ終えて歯を磨いていると、セラちゃんに声を掛けられる。

 急いで口を濯いで、その大きな背中を追いかけた。

 今思ったら、私の人生はこの瞬間に、家から飛び出した瞬間に変わってしまったのかもしれない。

 これは、私ととある一人の先輩との恋の話。