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持久走みたいな恋をしていた。

持久走みたいに続けていた人間関係を今日、一つ終わらせた。最終的に辿り着くゴールというものは、常に綺麗な場所に留まる訳ではないのだろう。

...彼女と付き合ってからは3年目くらいに突入しただろうか、たしか1年ぐらい前から同棲を始めていたはずで、今に至っていて。最近の彼女との関係といえば、相変わらずだが、喧嘩をするわけでもなく、そうは言っても会話をする量は昔に比べ少なくなってきたかのようには思う。

そんな日々が続いていた最中での今日、仕事の合間に彼女から送られて来た「大事な話があるから、今日は早く帰って来て下さい。」なんて、敬語口調で距離感でも感じさせられるメッセージを見て。雰囲気的にも何となく、別れの類のような話だろうと直感的に僕は考えていた。そんなこんなで、午後になるにつれて僕はソワソワとし始めていたが、それは、どのような顔をして家に帰ればいいのかを気にしていただけであって。いつも帰る慣れた家であっても、今日に関しては、やっぱり気持ちがいつも通りに帰れる状態でもなさそうだから、足取りを重くしながら帰宅をするようにしていた。

家についてからは玄関に入る前に一息ついて。なるべく、いつも通りの感じを装うようにしていたが。あいにくリビングにいた彼女と顔を合わせてからは、みるみるぎこちない空気感にしてしまい。なんとも演技っぽい会話を振るようにしてしまったかのように思う。そういうことを向こうは感じていたのだろう「もう続けてる意味ないでしょ。」と、突然に切り出した彼女の切り口で、本当にこの関係が終わるんだろうなと思わされた。そうやって主張した彼女の本音から、それはそうだと納得させられる自分がいて。それは前々から僕も、この向かう先のわからない日常についての違和感を感じていたからで。向こうの本心としても、同じような気持ちとして抱えていたことに、意見が合ったような安心感があった。

身近にいたはずの関係ではあったとしても、気持ち的な距離なんかは縮まるどころか、いつのまにか、こんなにも離れていたものなのだと、しみじみと思わされる。

だからと言って僕の方は、早々とこの関係を終わらしてしまいたかった、とか思っていたわけでもない。ただ、今後も続けていけるものなのかと問われたら、それほど言い切れるものではない程度として、感じてしまっていたような想いで。だからこそ、今まで自分の気持ちをなぁなぁにしては、僕はなんとか今まで続けられるようにしていた訳だから。と、そうして頭の中で今までの自分の気持ちを整理するようにして考えていながら、中途半端な心理の中にいる僕が悶々として、彼女の答えに対する返答に少々戸惑っていた。でも、こうして彼女が打ち明けた本音を聞いたことと、この場の気まずい空気感から、最適解はなんだろうかと考えるようにして。

「そうだね。別れようか。」と、返事した。

そうやって伝えてから、僕から全部を終わらせたが。けど、本当は返事に困って逃げ出したかったから、絞るように出した答えだったと、少々後悔していた部分もあって。もしかしたら、僕の返答次第では、まだ続けられる可能性だってあったかもしれない。と、あーだこーだ、考えたけど最終的には「一度無理だと思った人とは、やり直しても無駄。」なんて言葉を、過去に彼女が言っていたのを心の隅のどこかでふと思い出してから。そもそも飽きられてんだと、思ってから。自分が言ってしまった言葉には、また否定を被せるようなことを言うのはやめようと思った。

僕は今まで別に辛かったわけではない。でも持久走のように続けてきた恋なんかが、終わってしまったのだから。今までに溜めてきた疲労感としての、過去の思い出がドッとのしかかってくるように思えてくる。

なんだか、未練はそれほどないのだけど。こんな自分の気持ちを正当化して素直に認めてしまえば、彼女に対して苦労して来たこれまでの過程を全て否定するかのようにも感じてしまう。でも、やり直そうと必死になるのは、どうも筋が通らないような気持ちにもなって。

「始めはさ、幸せにするって決めてたんだけどな。」と、僕はその本音だけを彼女に漏らしていた。

本当に幸せにしようと思えてたから、ずっと続けて来れた部分があったのだろうと思えてくる。でも、続けても続けても幸せには出来そうにもなかったのが、鮮明に分かってきてしまっていた。

彼女も幸せに出来なかったし、僕自身も別に幸せには思えやしなかった。

ずっと分からないままに、持久走みたいに恋でも続けてこれた。

でも、だからと言って「ようやく終わった」なんてことは思えなかった。

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