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慣れていくのは、感情を一つ失っていくのと同じようだ。

自分の人生だ。だから、できるだけ好きだと感じることを素直に、自分で選んで生き抜いていくことが、最も幸せなことなんだろうと思っている。ただ、それにしても、自分の好きな気持ちで取捨選択をしてきたはずだったことが、本当は、その瞬間の自分の気持ちに取捨選択を握られていただけだったかのような。そんなふうに感じる時がある。

自分の"好き"というものは、当然ながら自分の気持ちによるものだ。だとするなら、その"好き"という気持ちを失った途端に、気持ちが失う前のことになんて、別にどうでもよさを感じてしまうのが当然なように思う。そうしたことを考えると、幸せの最善を選ぶように、自分の気持ちに取捨選択を委ねるようにしているが、気持ちが切り替わった途端に選んできた選択肢の価値の重みさえ、また自ずと変わってしまうことも当然で。だから好き好んで選んできた過去の選択なんてものは、単にその場の勢い的な想い任せた選択をしてきただけだったかのようなものに思えてしまう。

"依存してるかもしれない"程度に、人に対する好意を持つことがあったとして。その状態に居る人は幸せすら感じられているはずだけど。ただ、そうした気持ちが時間の経過と共に、幸せな感覚が麻痺していくかのように変わっていく。確実に感じていたはずの、以前の気持ちが冷めてしまうのを、ジワジワと実感して分かってくる。そうして冷めていく最中に思うのは、どんどん自分が冷静になっていっていることだろう。そうして自分が冷静になっていくなかで、その人を選んだ本当の理由について再度考えなおしたりする瞬間も訪れる。

そういう時に僕は、寂れていったその感情の流れに罪悪感さえ抱いていく、そのような気持ちが湧いてくるように思えた。ただ、どうして僕がその変化していく感情の中で、例えば何に対する罪悪感が湧いてくるのかと考えてみたけど。きっと、それを言葉に言い換えるのなら、自分が無責任な奴のように感じてしまうからだろう。自分の都合で好きになったのだ。自分が他人のことを、勝手に大切だと判断していながら、自分の都合が悪くなってきた頃には、大切に思えてこなくなっている、こんな自分の有り様について。他人さえ、振り回してしまっているんじゃないかと思えてくる要素から。そんな無責任な自分に対して、罪悪感が湧いてくるのかと、そう思えた。

「恋から覚めたら、愛に変わる」だとか。何処かで聞いたようなセリフと、そうした感情の構造変化を表した言葉からも考えるに。人の感情は一貫して成立はしていかないようだ、という感想が抱ける。良いように言うが、それが、始めに感じていた大切な気持ちなんかは、永続的には続かないのだという、証明さえされた気にもなれる。こんな不全さ加減が僕の中で、小さな違和感のように募ってくるようで。

この不全さの要素が、僕の中にある罪悪感としての形なのだろうかと考えていた。

僕自身について、他にも何が悪かったのかについて考えてみたりしていた。それは気持ちの変わっていく自分が悪いのかと確認するように、善悪のリトマス試で極論として自分の正しさや、不正さを判別しては、自責を強く感じることもあったし。しかし、無駄に吹っ切れて蔑ろにしてしまえる時もあって。

それにしても、可笑しなことだと心の奥底では小さく思っていた。それについて深く考えて、結局は誰しも、"誰かを傷つけないように"と自分本位な生き方だけで、幸せなんかを成立させないようにすることが美しいとしていながら。他者に対して、利他的に生きていくことが良いことだと信じているはずだからであって。それでも尚且つ、そんな考えに反して、感情だけは馬鹿みたいに、何一つ自分の理想とは関係もなく、時毎に応じて良くも悪くも大きく変化してしまうものなのだから。

僕は、一途にも誰かを愛しているべきだと。そう、考えていたし、そう在れることが正しいことのような気がしていたから。そんな思考と裏腹に、こんなにも変化していく気持ちに、大きな違和感すら感じている。

僕はこれから先も、このようにして、自分の気持ちに支配されるように、責任感のない愛でも求めて育んでしまうのだろうか。そうすることで、自分の気持ちが最善を選んでいるように思えても、気持ちが変われば最善ではなかったと思い込むように、何かしらの他人との不都合にも直面することになって。きっと、自分と他人との間の不都合に、また違和感でも募らせるのだろうか。

「あぁ今日は楽しかったねぇ」今日は久しぶりに出かけた帰りだ。隣に居た彼女が、そう言って今日を振り返るかのように。今日一日の楽しかった出来事を、繰り返し語りかけてくるのを聞いてから。

それに対して「そうだね」と言いながら。なんとなくだが、あとどれくらいまで、これだけ大切にしようと思えてしまえる、この感情を抱き続けられて。あと、どれくらいしたら不本意にも途絶えてしまうのだろうかと考えていた。

これに慣れてしまったら、どんどん失っていくように思えた。

大切にしたいのは、この瞬間にだけじゃなくて。今後にだって、今のこの気持ちを自分の中に残し続けたいな、とそう思う。

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