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【実録】撮影は3日後!ピンチヒッターで脚本執筆

脚本家・壽倉雅(すくら・みやび)でございます。

6年前、私はチバテレというローカルテレビ局の深夜ドラマの脚本を担当させていただいたことがありました。
今回は、その時のエピソードを披露しようと思います。


プロデューサーからかかってきた、1本の電話

全ては、一本のLINE電話から始まります。
家でデスクワークをしていると、プロデューサーから電話がかかってきました。

プロデューサーは言いました。
「撮影が3日後なのですが、脚本がないんです。キャストは決まっているのですが、脚本をお願いできますか?」

私は思わず「3日後ですか……!?」と裏声で反応をしてしまいました。
何故そんなスケジュールになったのか、他に脚本家がいる予定だったのか、詳細をプロデューサーに質問する時間すらもったいないと思い、「とりあず、キャストの写真を送ってください!」と伝えました。

ドラマや映画において、先にキャスティングを決めた状態で制作されるキャスト先行型というパターンと、先に脚本を執筆して役にあった演者をキャスティングする脚本先行型のパターンがありますが、この依頼は流れのとおり、もうキャストが決まっている状態です。
つまり、キャスト全員に、それぞれキャラクターを作らなければいけないのです。

プロデューサーの言葉が、ヒントになった

脚本を書くうえで、場面やシチュエーションは必須になってきます。でも3日後に撮影を控えているとなると、飲食店などのシーンはまず撮影許可を得る時間がかかってしまうと判断しました。プロデューサーからも、できれば飲食店などのシーンは控えてほしいと言われました。

「んー、どうしたものか……」と、私は心の中で考えました。そんな時、プロデューサーから「公民館などの貸会議室ならば使えます」と伝えられました。

『会議室』この言葉が、私の頭の中に革命を起こしたのです。

「そうか、会議室ならば撮影の負担にならない。そうだ、商社の話を書こう!」と、何となくの設定がこの時決まりました。
また、『会議室』という一つのシチュエーションにすれば、撮影場所の移動の負担も軽減されると思いました。

考え抜いた脚本対策

主演を務めていただいたのは、元SDN48の小原春香さん。主人公は若いOLというイメージが完成しました。他にもプロデューサーからもらった写真で、先輩OL、後輩OL、同僚のサラリーマン、部長、主任などそれぞれの役職や主人公との関係性を作っていきました。

登場人物ができあがった後は、いよいよ脚本執筆です。

いつもは登場人物の履歴書を作りますが、今回ばかりはそんな余裕もありません。
3日後に撮影、しかも30分の中で3話構成にしなければいけない中で、役者の負担も減らすようにしなければ……など、多くの条件が科せられている中での脚本執筆。

「あ、モノローグを多用すれば、役者の負担にならないかも……」

そんな考えから、「OLが使うモノローグって何だろう」と思い立った結果、『本音と建前』というテーマが生まれました。

建前としての短いセリフの後、心の中で思っている本音のセリフを多めに書きました。映像だからこそできた対処方法です。
『若手OLの本音と建前』という、日常でもありそうなシチュエーションの中で、より自然な会話、自然な雰囲気に持っていけるように、何とか第1話の脚本を完成させました。

1話脱稿後……

上記の通り、世界観や登場人物等の設定を創り上げ、何とか第1話の原稿をプロデューサーに送りました。ですが、その3日後に控えた撮影は、1話だけでなく3話全部撮ることを知りました。

「ヤバい。1話書いて、ホッとしちゃった……」

息つく間もなく、翌日の夕方から慌てて2話、3話の脚本執筆に追われることとなりました。
2項目にも書いたように、撮影場所の移動の負担軽減のため、シーンとしての場面も結果的に3話の中で『会議室』と、主人公が恋人と会う『街の中の道』の2つに抑えることが出来ました。

正直、初稿の状態でプロデューサーにお送りした原稿だったので、直しが来ることを覚悟していたのですが、この時は直す暇もなかったのか、脚本がそのまま採用されました。ちょっと不安だったのですが、数日後、プロデューサー無事に撮影が終了したとご連絡をいただきました。
キャストの方々も、ブログやSNSで「脚本が面白かった」と書いてくださり、とてもありがたかったです。

「短い期間だけど、良いものが書けたんだ……」と、とても安堵しました。
これが俗にいう、火事場の馬鹿力というやつかもしれません。

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※このDVDに収録されている『木陰の女たち』も、脚本担当作品です。

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次回もお楽しみに!

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