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適応障害で休職していた2ヶ月間の過ごし方

2024年の1月から、わたくし夜風 (28歳女性) は、新卒から4年勤めている会社を休職していた。

休むことを決めた頃の私は、抑うつ症状、焦燥感、希死念慮など、おおかたの負の感情をコンプリートし続ける毎日で、とても生きた心地がしていなかった。

そして、2ヶ月間の人生お休みタイムを経て、当時の闇を懐かしむことができるくらいにはうまいこと回復でき(たと思っており)、本日から復職している。

休職を始める頃、さて、何をして暮らせば良いのやら、と何のガイドラインもない当イベントに少々戸惑った記憶があるので、経験者として休職中の過ごし方をまとめた文章を書こうと思う。

これから休職をはじめる方にとって、参考になったりならなかったりする。全て個人の見解ですわよ。参考にされる際はそこんところご注意あそばせ。人には人の乳酸菌。




何もしないをやる


序盤はとにかくこれに尽きる。

休まないと無理な崖っぷちまで追い詰められている辺り、脳みそがまるっきり正常ではないわけだ。まずは何もせず、何も考えず、できれば眠り続けることで脳を回復させる。話はそれからだ。と、医者も言っていた。

私は最初の一週間、とにかく眠り続けた。風呂にも入らず、食事もろくに取らなかった。入れなかったし、取れなかった。

しばらく横になり続けると、さすがにそろそろ縦になろっかな〜〜って気持ちが湧いてくる。湧いてくるまでは、本当に何もしなかった。

今思えば、この時しっかり休むことができたのが、のちの順調な回復に繋がったと思う。休むことへの罪悪感でしんどい時期だったが、とにかく何も考えないように、パンダが笹を食べる動画とかを見てやり過ごした。


生活をやる


何もしない期を脱した私は、体が痒かったので風呂に入った。

体力が赤ちゃん返りしていて、風呂に入るだけで息が上がったが、汚れが取れてサッパリするとなんだか生活をやる気力が湧いてきた。

荒れ果てた部屋に掃除機をかけ、買い物に行き、簡単な料理をして食べる。

働いている時はおろそかにしがちだった生活の動作は、丁寧にやるとそれだけで一日が終わる日もあるくらい、案外ボリュームのある営みだ。

そんな生活を一つ一つやっていくと、「この世界に大人をひとり生かせている自分、やるじゃないか。」といった、誇らしさ、有能感、自己操縦感のようなものが湧いてきた。

人生は生活の繰り返しだ。生活を大切にやるということは、人生を大切にすること、つまり自分を大切にすることに繋がる。

生活をきちんとやることで、生きている実感を少しずつ取り戻すことが、私はできた。


朝日を浴びる


生活リズムは崩さないで、なるべく朝日を浴びてくださいね。と、休職の診断書をくれた医者はそれだけ言った。

なので、ひたすらに眠る一週間を終えてからは、朝と呼ばれる時間帯には家を出て、10分ほど歩いた所にあるドトールに通うようにした。

人間の体は、朝日を浴びた14時間後にメラトニンという睡眠を促すホルモンが分泌される仕組みらしい。

それを信じてドトール通いを続けたことが功を奏してか、ほとんど健やかな睡眠を最近ではとれている。

何より、陽の光を浴びるというのは、単純に気持ちが良いんだよね。

私は暗い所にいると気分まで暗くなってしまうので、少し無理をしてでもお日様に当たった方が、その日いちにちを良い気分で過ごせた。

鳩も朝日を浴びていた



自分と向き合う


朝のカフェでは、コーヒーを飲みながらジャーナリングをした。

ペンを走らせて文字を書くことで、自分の感情や思考が輪郭を持ち、客観視できるようになる。そして合理的な解決策を見出せたり、自分をより理解できたりする。

この「書く」という営みが、私の休職を制したと言っても過言ではない。


書くことで本心が露わになり、生きる上での灯火が見つかった。あやふやなものごとに言葉という形が与えられることで、新しい世界が広がった。


私のジャーナリングのやり方は主に二通りで、一つは、自分の中の想いをただ吐き出すように書いていく方法。もう一つは、何かしらテーマを設けてそれについて考えることを書いていく方法。

後者においては、休職を始める際に購入した本がとても役に立った。仕事や人間関係、自分自身など、ジャーナリングのための適切なテーマを与えてくれるので、内省がとてもはかどった。おすすめ。



図書館で過ごす


おそらく多くの休職人(んちゅ)を悩ませるであろう「日中どこで過ごそう問題」の最適解は、図書館です。

ずっと家にいると気が滅入るし、体力も落ちていく。かといってカフェはお金がかかるので、一時的に収入がなかった私にとって、そう何度も利用するのは胸が痛んだ。

そんな私が通っていたのが、図書館だ。適度な人目があるので集中できるし、寂しさも紛れる。何より本に囲まれた空間は包容力があって、ゆったりと時間が流れていて心地良い。

近所の図書館だけでは飽き足らず、ちょっと足を延ばしてよさげな図書館を探したりと、その居心地の良さにすっかりはまってしまった。

デート中に図書館を見かけると、すぅーっと吸い込まれて行ってしまうほどに偏愛中である。

復職直前の時期は、オフィス近くの図書館に通ってリハビリをしたりと、納めた税金を最大限に活用させていただいた。


好きな作家の短編集を読む


休職前は、脳が文字を受け付けなくて本なんて読めなかったが、休んでから2週間ほどで短編集なら読めるまでに回復した。

カウンセラーさんから「好きなことをやりなさい」と言われたので、そういえば昔は本が好きだったよなあと思い出し、書店で興味の沸いた本や、有名な作家の本など、自由気ままに触れてみた。

そして今やすっかり江國香織フリークだ。江國香織はいいぞ。

読むことに限らず、好きなことをやる、というのが回復の手助けになった実感がある。

目的や意味に囚われず、ただ好きだからやる、という時間が、疲れ切った心をほぐしてくれた。

大げさな表現になるが、そういった”生きる喜び”みたいな時間を過ごすたびに、人間らしさに一歩近づく感覚があった。

出会いの一冊



歩きまくる


普通に生活ができる程度の体力が戻ってきた頃からは、さらに体力をつけるために、たくさん歩いた。

家の近所の未知のエリアを開拓したり、少し電車で移動してからお散歩したり。休職を終えるころには、1時間までなら喜んで歩くようになっていた。

歩いている時は、音楽などは聞かず、周りにあるものと、それらから受け取る感覚を意識するようにしていた。今ここに集中するというマインドフルネスの実践である。

足裏に感じる地面の感触を味わったり、木々の色や形を確認したり、知らない街の空気を嗅いだり。

そんな散歩を継続していると、何てことない道端の雑草なんかにまで気持ちを揺らせる自分に気付くことができて、そんな心を取り戻せたことが嬉しくて、またたくさん歩いた。

歩くと、思考がクリアになる、何かをやりたい気持ちがわいてくる、暗い気持ちが流されていく、といった効果もあって、私にとっては結構お散歩万能だった。



単価の安い買い物をする


私はお金を使うのが好きだ。

お金を出すのって気持ちいい。ちょっとした買い物依存症である自覚がある。

だが、休職中は一時的に無収入だったので、むやみに買い物をするわけにはいかなかった。だがだが、買いたい衝動を我慢し続けるのもストレスが溜まる。

そこで私は、100円ショップ、古本屋などで、単価の安い買い物をちょこちょこすることで欲を満たしていた。

100円ショップでは、ジャーナリング用のノートをデコるためのシールをよく買った。平成生まれなもんで、シールにはテンションが上がる。見ているだけでも楽しかった。デコ万歳。

古本屋は、文庫を100円から購入できる。休職中は、ぜいたくに一日一冊のペースで読んでいた時期もあったので、在庫補充も兼ねてよく通った。ブックオフ万歳。


お金を使う行為は、生きている実感をもたらすし、人との繋がりも生まれる。適度な消費活動は、自分を人間たらしめてくれる感覚があった。



つくるをやる


なにかを作ることができると、達成感がある。そして作っている最中は、夢中になれて楽しい。

まずハマったのは刺繍。ちくちくと針を刺して糸を縫い付けていくのは、無心になれてよかった。

いつかオリジナルの刺繍作品を売ってみたいという夢もできた。

料理もよくした。料理は、自分と今に注意を払い続ける営みだ。自分が何を食べたいか知る、どんな栄養を摂った方がいいか考える。

そして素材を切る、火を通す、盛り付ける。食材の様子を注視するので、今で頭をいっぱいにできる。


これまでの私は、疲労をリセットする方法が「だらだらする」しかなかったのだが、つくるという行為は脳を回復させることもあるのだなと、実感することができたのは大きい。

休職期間で塩パンを作れるようになりたかったのだが、3回チャレンジして結果まずまずといったところだ。


いびつなフォルムが愛らしい



おでかけをする


気晴らしと体力アップを目的に、行ったことのないエリアへ出かける機会を、お休み後半はちょくちょく設けた。

銀座を意味もなくぶらついたり、浅草かっぱ橋通りでうつわ屋さんを巡ったり、赤坂迎賓館の庭園をお散歩したり・・・

これはお出かけというよりは旅行だが、沖縄へも行った。


見知らぬ土地へ行くと、日常の輪の中にいる時とは違ったものが見えてくる。違ったことを考える。違った感情がわいてくる。新しい自分に出会うことができる。


そうやって世界を広げていくこと、そのために旅をすることを、これからの人生の灯にしていきたい、そんな指針を据えることにも繋がった。


とはいえおでかけばかりしていては体力がもたない。色んなペースを試したことで、日常とおでかけの配分のいい塩梅を見つけられたことも収穫だった。


***


以上が、私なりの休職中の過ごし方。案外暇しなかったので、働いている人は本当に偉いと思いながら休んでいた。


いや、生きているだけで偉いし、休んでいても、走っていても、何していても偉いよほんと。

お休みを終えての感想は、「みんなもっと休め!!!」だ。

でも、こんな長めのお休み、次はリタイア後だろうか・・・
欲を言えば、3-4年に一度このくらい休みたい・・・


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