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長期米国債ETF(EDV,TLT)の投資戦略


はじめに

 結論から言うと、今から長期米国債ETFのEDV,TLTを購入するのであれば200日移動平均線付近の$73~74付近が良いのではないかと考えています。ただ現時点では、インフレ再燃⁉ 景気後退がくるのでは⁉ 雇用の悪化⁉ AIブームの終焉⁉ と米国債にとって良いニュースと悪いニュースが混在しています。テクニカル的には買いポイントに近いですが、ファンダメンタルズ的には買っていいのか?という疑問を抱く部分もあるため、情報を順番に整理していきたいと思います。

経済は強いのか⁉弱いのか⁉

 現在、米国経済は強いと言われつつも、弱い指標もあり、やや景気後退の足音も近づいているように思います。しかしインフレは一時よりも低下しましたが、ここ数か月は横ばい傾向です。指標は様々で、当然未来を予測するのは難しいですが、投資をするうえで、ある程度シナリオを持つことは重要です。まずは今月の経済指標を確認していきます。

ISM景気指数

 ISMが全米の製造、非製造業会社の購買担当役員に対するアンケート調査を実施し、その結果をもとに作成する景況感を表す指数です。50が好況と不況の分岐点を意味します。

  • ISM製造業景気指数 予想:49.7に対して結果:48.7

マネックス証券より引用
  • ISM非製造業景気指数 予想:51.1に対して結果:53.8

マネックス証券より引用

 製造業と非製造業で結果は正反対なものとなりました。製造業では、2か月連続で低下。米国のエコノミスト、マシュー・マーティン氏は「予想より高水準で推移する今年の金利が設備投資を減退させ、企業による在庫増を消極的にさせていることを示唆している」とあり景気の減退を予感させる結果となりました。

 一方で、非製造業では、予想を大きく上回り昨年の8月以来の高水準でした。さぞ非製造業は好調なのかと思いましたが、米国エコノミスト、トーマス・シモンズ氏は、5月のISM非製造業総合指数は「業界全体での幅広い改善を示しており心強いが、ISMのプレスリリースで示された回答者のコメントははるかに控えめで慎重だ」と述べています。やはり高金利下であり、企業も慎重になっているようです。

小売売上高(前月比)

 米国内で販売されている小売業・サービス業の売上高を集計したものです。米国の個人消費の動向を表しています。米国は個人消費がGDPの約7割を占めているため、注目度の高い指標となっています。

  • 小売売上高(前月比) 予想:0.3%に対して結果:0.1%

※4月分は0.2%減に下方修正、3月分もやや下方修正されました。

マネックス証券より引用

 5月はガソリン価格の下落が大きく影響している可能性もあります。しかし、明らかに金利高の維持により、個人消費は減速傾向にあると言えます。ただ消費の本格的な落ち込みまでは至っていないのが現状です。

失業率

  • 失業率 予想:3.9%に対して結果:4.0%でした。

マネックス証券より引用

 5月の米国雇用統計の結果は、雇用者数は増加し、賃金の伸びも加速しました。ただ失業率のみ予想:3.9%に対して4.0%と上昇しています。なんとも言い難い結果ですが、失業率はじわじわ上がってきています。ただ依然、完全雇用の状態ではあります。
 ひとつ言えることは失業率の上昇は急激になることが、過去のデータから言えるので注意は必要です。

経済は着実に減速方向へ向かっている

 FRBは経済を減速させるために政策金利を上げているので、当たり前と言えば当たり前なのですが、確実に経済は減速方向へ向かっています。いつ景気後退に陥るかは誰にもわからないですが、意外と早めに訪れる可能性もあるかもと考えています。具体的には2024年後半から2025年前半を想定しています。当然、米国債にとっては有利な状況です。

インフレ再燃に注意

 5月のCPIは、予想よりもインフレの減速がみられました。ただ全体的に均してみると横ばいの状況が続いています。さらに来月発表される6月のCPIには注意が必要です。

何故、6月のCPIは注意なのか?

  • 一つ目の理由は、原油価格の上昇です。6月に入ってからWTI原油は約12%上昇しています。やや短期的には上げ止まり感がありますが、原油価格にはCPIに大きな影響を与えますので注意が必要です。

Trading Viewより引用
  • 2つ目の理由としては、昨年6月のCPIは3.0%とかなり低かったことです。CPIは前年同期比で発表されますので、前年度が低ければ今年度の結果が上振れる可能性が高くなります。

マネックス証券より引用
  • 3つ目の理由として、家賃が再び上昇していることがあげられます。賃貸需要が底堅く、米北東部や中西部の都市の家賃が上昇してきています。住宅市場は複雑で、FRBはインフレを低下させようと政策金利を高止まりさせていますが、その結果住宅金利は7%を超える状態が続いています。そのため住み替え需要が低迷し、中古住宅在庫が減少⇒住宅価格上昇と高金利政策が裏目に出ています。つまり利下げをしなければ、住宅市場は逆にインフレ上昇に圧力をかけ続けることになります。

アパートメントリストより引用

次回、消費者物価指数(CPI)に注意

 2024年7月11日(木)の21時30分に6月分のCPIが発表されます。上振れリスクがあるので要警戒ですが、米国債の買い場となる可能性もあります。

テクニカル的な買い時を探る

株探より引用 日足チャート

 短期的な上昇トレンドは継続中で、直近では200日移動平均線を超えてきています。この200日移動平均線がサポートラインになるとすれば、$73~74付近が買いポイントとなりそうです。ファンダメンタルズ的にみても、景気減速、インフレ横ばい or やや鈍化を想定するなら$73~74付近が良さそうです。

株探より引用 週足チャート

 長期チャートを確認すると、やっと52週移動平均線を超えてきました。このまま上にブレイクできるかは、経済指標しだいですが可能性としては上に抜けるのではないかと考えています。

まとめ

 結論、$73~74付近が買いポイントとなりそうです。ただ今すぐどんどん上がっていくわけではないと思いますので、分配金を貰いながら長期で買い持ちスタイルが良いと思います。気になる現時点の利回りは、税込みで4.06%です。米国で10%の課税がありますが、確定申告時に外国税額控除を行えば取り戻せます。今後の値上がり益も考えれば良い水準ではないでしょうか?くれぐれも投資は分散を徹底し、自己責任でお願いします。

※投資は自己責任となります。
 
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