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「もう二度と来ない」と誓った場所に、ふらっとこれちゃった件について

つい先日、妻と地元の駅前にあるファミレスに入った。外食する際はいつも事前に予約して、2〜3軒回ってへべれけで帰るのがお決まりなのだけれど、今回は妻が午後出勤ということもあり、「たまにはファミレスでさくっと食べていくか」という気持ちで入った。

そのファミレスでごはんを食べ終わり、食後のパフェをつまんでぼんやりしていると、あることをふと思い出した。「あ、ここのファミレス、もう一生来ないって誓った場所なんだった」と。


もう、5年前になる。当時勤めていた会社を退職すると社長に告げたとき、こっぴどく反対された。ここでは書けないようなスーパーミラクルパワハラも日常茶飯事で、とにかく疲弊していたのでこの際殴られようが縁が切れようが、さっさと辞めたいと思っていた。

退職予定日の半年前に、きちんと順序を守って伝えた。それでも社長は僕を止めてきた。

たしかに若い頃からお世話になっていたし、当時僕は右腕的なポジションで働かせてもらっていたから、社長としても単純に抜けてほしくなかったんだと思う。それでももう自分の意志は固まっていたから、今更説教など無駄だった。

それでも最後、「今日で引き止めるのは最後にする。ついてこい」と言って連れてかれたのがこのファミレスだった。
何時間も説得(説教?)を受けた。正直「この人の執念深さは異常だな」と思いながらなかば感銘を受けていたほど、執拗だった。

内容はほとんど右から左に流れていったけど、覚えているのは「恩を仇で返すつもりか」「おまえにいくらかけたと思ってるんだ」「まだ恩返しされてない」とか、そういうことばかり繰り返す人だった。

しまいには「地元を歩けなくしてやる」だの「おまえの親に言いつける」だの(子どもか?)さんざん言われた。胸ぐらも掴まれた。店員スタッフがわざと見ないように足早に脇を通っていった。

一体この人のどこに惹かれてついていったのだろうと、次第に冷めていく心を冷静に観察しながら、ぬるいビールを飲んでいた。よく世間で言われる「理不尽」って、こういう時に使う言葉なんだろうなぁと思いながら、「この人とはもう終わりだな。このファミレスにも二度と行きたくない。(ファミレスには罪はない)」そう思って外を出た。

なんでもないファミレスが、最悪の思い出の場所になってしまった。

あれから時が立ち、お互いに「縁は切れたし二度と会わない」と思っていた(と思う)。それでも5年も経つと、いろんな事情が重なってまた接触する機会があったりするものだ。人生は本当に不思議だと思う。

あのとき、「思い出したくないからここにはもう一生来ない」なんて思っていたファミレスにも、無意識に入れるようになった。時間が解決することは多い。(重ねるがもちろんファミレス自体には何の罪もない。)

当時、「二度と見たくない、一生会いたくない」と思っていたけれど、今は「葬式には顔だそうかな」くらいのレベル感になった。でもきっとまた、会ってしまうんだろうなとも思う。師匠と弟子の関係って、それくらいバチバチしているもんなのだろうか。

社長にはいろんなことを学ばせてもらった。悪いことばかりじゃない。良いこともたくさん。ぼくの人生を語る上で、絶対的に外せない人物だ。

当時されたことや言われたことはまだ忘れられないけれど、僕自身未熟で若かったからうまく立ち回りできなかったということも十二分にある。

ぼくがもっと成熟して圧倒的に人として達観したときに、もう一度会いたい、いやでも金輪際会わなくても、とも思う。複雑な心境。でも葬式には絶対行きたいという気持ち。こういう風に思う人、後にも先にもこの人だけなんだろうなぁ〜と、ファミレスのコーヒーを飲みながらそんなことを思い出した。

当時は頭を抱えて悩んでいたことも、未来の自分が見たら懐かしく思うだけ。時間が解決することって、思っている以上に多い。

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