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有料会員数1.13億!「Spotify」のマーケティングトレース

こんばんは、金森(@user_id_us)です。

マーケティングトレースAdvent Calender 12/11担当です。

さて、2019年において私が81788分(約56日!!)も利用しているアプリがあります。

それが、世界最大の音楽ストリーミングサービス「Spotify」です。

自分でも驚くほど愛用している「Spotify」について、簡単にマーケティングトレース(マーケティング分析)を行います。

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こちらの画像は、Spotifyのキャンペーン「My Top Songs 2019」のワンカット。インスタのストーリーみたいな感じで、自分自身が2019年に最もお気に入りだったアーティストや曲を紹介してくれました。「あなたの2019年をシェアする」というCTAが素晴らしいですね。

自分の好きな曲を他者に知ってもらいたい音楽ファンのユーザー心理を突いた & SNSを通じて非Spotifyユーザーにも届く設計で素晴らしいなぁ」と感心しました。

余談はさておき、本題に入りましょう。

Spotifyは、音楽ストリーミングサービスでシェア1位

Spotifyは、売上及び有料プラン契約者数の両方において、2019年上期の市場をリードし、業界の総収入の31%、有料プラン契約者数の35%を占めています。

同社を追いかけるようにApple Musicが業界総収入の25%、有料プラン契約者数の20%を占めています。

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参照:https://www.counterpointresearch.com/global-online-music-streaming-revenues-cross-us11-billion-h1-2019/

また、アナリストのAbhilash Kumar氏によれば、音楽ストリーミング市場の概況について下記のように述べています。

オンライン音楽ストリーミングは、2016年から2018年にかけてCAGR(年平均成長率)32%の見事な成長を遂げた。これは、こうしたサービスに対する需要が高まったことを示している。この業界の売上の8割はサブスクリプション契約によるもので、残りは広告や、端末メーカーやキャリアとの協業によるものである。この市場はまだピークに達しておらず、少なくともあと数四半期は20%以上の成長率を維持して健全に伸びると私たちは考えている。」
※参照:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000042.000033140.html

このように、オンライン音楽ストリーミングは成長市場です。日本でも人気アーティストが、「サブスク解禁」する状況が増えていることからも実感はありますよね。

ただ、ライセンスや著作権問題など課題はまだまだあるそうです。

次に、Spotifyの数値面について簡単に確認してみましょう。

有料会員の課金が売上の約9割を占める

Stockclipの記事を参照すると、下記のように整理できます。詳細が気になる方はStockclipを購読してください!図解がわかりやすくておすすめです。

売上高:2019年3Qには17.31億ユーロ(2,093億円ほど)

売上成長率:2019年2Qまでは、4四半期連続30%以上と高成長を維持

売上構成比9割弱が有料課金、残り1割が広告収益

全体MAU2.48億人有料会員数:1.13億人、無料会員数:1.41億人)

目を見張るべきは、全体MAUに占める有料会員数の多さ(約45%)です。基本はずっと無料で利用できるのに、です。ひとつの要因としては、無料会員に有料会員になるメリットを面白いオーディオ広告で伝えていることが考えられます。

また、有料会員数は、直近2年間でほぼ2倍に増加しています。ちなみに、競合のApple Musicと比較するとこんな感じです。

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画像出典:【米国株動向】アップルミュージックの会員数、6,000万人突破

有料会員の解約率は改善傾向にある

2019年2Qにおいては、月次継続率は95.4%(月次解約率4.6%)と過去最高を記録しており、解約率は年々改善されている傾向にあるようです。

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画像出典:SPOTIFY REALLY DOESN’T WANT YOU TO STOP SUBSCRIBING – AND IT’S GIVING AWAY GOOGLE HOME MINIS TO HELP MAKE SURE YOU DON’T

仮説ですが、この継続率の高さは下記のような要因があるのでしょう。

・初回登録からアプリ利用、定着までのオンボーディングが秀逸
・キュレーション、プレイリスト機能など、プロダクト自体にユーザーがずっと使いたくなるメリットがある
・音楽の趣味嗜好のデータが溜まることによって、スイッチングコストが日に日に高くなる

一年前の記事ですが、Spotifyの無料登録時のオンボーディングプロセスをスクショ付きで説明されている記事もありました。

ちなみに私自身、学生時代はApple Music(有料)を使っていた時もありました。ただ、「Spotifyのプレミアムプランが3ヶ月100円」というキャンペーンを見たことをきっかけにSpotifyに乗り換えました。そこからはSpotifyの有料プランを利用しています。お気に入り登録する曲やオリジナルのプレイリストが溜まるほど、プロダクトへの依存性が増すからです。

Spotifyが業界のリーダーになし得た理由

アナリストのAbhilash Kumar氏によれば、Spotifyが業界のリーダーになったのは下記の施策によると語っています。

Strong marketing campaigns(強力なマーケティングキャンペーン)
a focus on podcasts (ポッドキャスト重視)
expansion into emerging markets(新興市場への拡大)
partnerships with peers of different industries(他業界との協業)

※参照:https://www.counterpointresearch.com/global-online-music-streaming-revenues-cross-us11-billion-h1-2019/

なるほど・・・。これだけではよく分かりません。もう少し深堀りしましょう。

強力なマーケティングキャンペーン

SpotifyのCMやLP、アプリ利用中のオーディオ広告を簡単に紹介します。ここはざっくり「へー、こんなのあるんだ」と流し読みしてもらえば十分です。興味ある人は動画を再生してみてください。

・CM:「今ならプレミアム3ヶ月100円」

SpotifyのCMです。多分、2019年6月頃に放映されたものです。

LPプレミアム3ヶ月無料

これは、リスティング広告の遷移先のLPです。おそらく、時期によって100円とか無料などいくつかパターンを用意しているのでしょう。

プレミアム3ヶ月無料___Spotify_Premium

画像出典:https://www.spotifypremium.jp/

・無料プラン利用中に流れてくるオーディオ広告

Spotifyの広告って、ちょっと面白いので何か好きです。


ポッドキャスト重視

2019年には、Podcast関連スタートアップ企業「Anchor」、「Gimlet」、「Parcast」の3社を買収しており、ポッドキャストに注力していることが伺えます。実際、Spotifyのポッドキャストのタイトル数は50万を超え、北米やヨーロッパ数カ国を中心にユーザーの試聴時間も急成長しているとのこと。また、ポッドキャストをきっかけにプレミアム会員にシフトするユーザーが予想以上に増えているらしいです。

参照:有料会員が1億人超え! 「Spotify」 2019年1Q決算

ちなみに僕も最近、SpotifyでPodcastを聴くようになりました。例えば、下記放送を英語の勉強目的に聴いています。

・Talks at Google
・解説!1日5分ビジネス英語
・Product Hunt Radio
・The SaaS Podcast

新興市場の拡大

Spotifyはローカライズ戦略が特徴的です。

例えば、2006年スウェーデン発のSpotifyは、2011年にアメリカ市場に真っ向から参入し、結果的に市場シェアNo.1を獲得しています。この戦略は競合のDeezerと異なります。Deezerはアメリカ市場に参入するのを避け、その代わり大量の小規模な新興市場をターゲットにしたそうです。それゆえ、参入マーケットの数だけで見るとDeezerの方が多いですが、ユーザー数ではSpotifyが圧倒的に多いのです。

他にも、インドネシアとフィリピンではクレジットカードによる支払いが主流でなかったことから、Spotifyでは初の現金払いを採用しました。また、地域によって有料プランの価格設定も変えています。たとえ、通常より低価格で提供しても顧客に満足してもらえれば口コミでユーザー数が増え、長期的に利益に繋がると考えているからです。

また、2019年6月頃、Android向けにSpotify Lite版もリリースされました。Lite版はインターネット接続が不安定な環境でも動作する特徴があります。これにより、インドなどの新興市場や古い機種を使うユーザーを獲得する狙いです。

Spotifyのローカライズ戦略の詳細はこちらに書かれているので、気になる方はご覧ください。

他業界との協業

新たな顧客層を獲得すべく、他業界とのコラボも進めているようです。

Xbox(ゲーム)の特定の会員限定で、Spotify Premiumの6か月間の無料トライアルを提供

・マッチングアプリのTinderとコラボ。音楽の趣味嗜好が会う前に分かるメリット


自分がマーケティング担当なら

Stockclipの記事を参照したところ、有料会員のARPU(顧客あたり売上)が低下傾向にあるらしいです。今回は有料会員の単価を上げる施策を考えてみます。(半ば、Spotifyヘビーユーザーの願望です)

◆ コンサート情報をアプリ上でユーザーに、ポップアップで案内

前提共有ですが、Spotifyはチケットサービスのイープラスと提携しています。たまにフォローしているアーティストのコンサート情報がメールで届きます。ただ、私用メールを見る機会ってあまりなくて、見逃すケースが多いんですよね。たまにチェックするとチケット売り切れ...、こんなことがざらです。(一応、アプリのアーティスト欄から直近のコンサートは確認できますが、そんな頻繁にチェックしないですよね...。)

ライブ情報

なので、Spotifyのアプリ上でポップアップでコンサート情報を紹介して欲しいです。もちろん、ユーザーのお気に入りのアーティスト限定です。要するに、チケット購入(=CV)の導線を強化しましょう、という提案です。

こうすれば、下記が実現されるはず。

・Spotify会員のメリット:好きなアーティストのコンサートに行くチャンスを逃さない。
・Spotifyのメリット:イープラスへの送客料(?)で、顧客当たりの単価がアップ。
・アーティストのメリット:Spotifyで自分たちの音楽を聴くファンと、コンサートの場で繋がれる。ファンとの関係値もさらにアップ

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以上、Spotifyのマーケティングトレースでした!好きなサービスについて調べるのは、モチベーション高く取り組めるので良いですね。また更新するかもです。最後までありがとうございました!


おまけ。好きな音楽を布教します

最初に紹介した「My Top Songs 2019」にランクインしている曲を紹介させてください。これはもう完全にエゴです。興味のある人だけ、よろしければ聴いてください。趣味が合えば幸いです。

Bearwear - e.g.

BearwearをSpotifyでチェックする


・Lucky Kilimanjaro - HOUSE

Lucky KilimanjaroをSpotifyでチェックする


・PAELLAS - Horizon

PAELLASをSpotifyでチェックする


・iri - Wonderland

iriをSpotifyでチェックする


・City Your City - neon

City Your CityをSpotifyでチェックする

最後にもう1人、ぜひ紹介したいアーティストがいます。

「AmPm(アムパム)」 - 世界で注目を集める日本発覆面アーティスト。デジタルマーケティングを活用してプラットフォームをハック

2017年3月にリリースしたデビュー曲「Best Part of Us」を契機に、日本を飛び越えていきなり海外でファンを獲得したアーティストそれがAmPm(アムパム)です。

2人組のクリエイティブユニットである彼らのうち片方は、デジタルマーケティングが本業らしく。音楽系プラットフォームのsoundcloudやYouTubeなどに広告費を投下して、プレイリストに楽曲が掲載されるようにしたそうです。詳しくはこちらの記事をご覧ください。とても面白いです。


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