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読書の秋その5

思春期のパワフルな時期、有り余ったそのパワーを発散する場所がない。また、全能感から自分以外の人間が馬鹿に見える。やり場のない怒りが湧いてくる。

そんなことは中学生、高校生では誰でも起こりうることではないか。

今回は、お勧めされて読んだ本「告白」(湊かなえ著 双葉文庫)について。
僕は普段自分が気に入った本しか読まず、人のおすすめはあまり読んだことがない。
しかし、この作品は読んでよかったと思う。

2009年本屋大賞第1位。翌年の2010年には映画化されている。

小説を読んだ後、映画もすぐに見た。松たか子の演技が素晴らしい。
序盤の独り言のような生徒に語りかけているような。絶妙なバランスが、奇妙な感じがして、興味をそそられる。

映画は小説の内容がそのまま反映されている。しかし、どちらかというと。、映画の方が最初の語り手でもある森口先生の復讐心が強く描かれ、後味の悪い終わり方となっているかなと思う。

誰かに、認めてもらいたい。そんな承認欲求は誰にでもあり、子どもに限らず、大人も持っている。現に、SNSなんてのは自慢大会になっていることもある。

ほんの些細なことでもいいから、世間に認められ、評価されたい。僕ですらそう思う。

きっと少年A(渡辺修哉)もそうだったに違いない。いや、より強い承認欲求だろうか。彼の承認欲求…母親に向けてのもの。

両親が離婚して、大好きだった母親に気づいて貰いたい。認めて欲しい。その一心で、発明を繰り返し、結果的に殺人を犯してしまう。

殺されてしまったのは少年Aの担任の娘。事実を知った担任(森口)が更生という名目の復讐をしていく物語。

直接的な暴力ではなく、人を使って間接的にひとの人生を壊していく様は何とも恐ろしい。

また、作中に出てくるHIVに関する中学生の無知ならではの反応がリアルだと感じた。実際は大人も大して変わらないかもしれないが…。

読んでいくと各人の語りが妙にちぐはぐになっている。誰かが(全員)自分の都合の良い解釈で語っているから当然そうなる。

そう言えば、僕なんかも会社で上司に報告する際、できる限りよく見せようと報告することがあるので、事実と判断が混ざっていると反省した。

そんな人間の習性もリアルに描かれた作品だった。

普段はSF、ファンタジー、ほっこり系の小説メインに読んでいるけど、こう言ったドロドロした感じの小説もたまには良いのかもしれないと思った。

それではまた👋

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