バイトの思い出シリーズ@デバッグ夜勤 前編

アプリゲームのデバッグのバイトをしていたことがある。

デバッグとは、リリース前のゲームを操作し、バグがないか確認する作業。キャラクターが壁にめり込んでいたり、壁を突き破って進んだり、壁の上に立ったりしたら「バグ」として報告する。
(一日中「壁」まわりのバグチェックを任されたことがあり上記のような例しか思い浮かばんかった)

ゲームしてるだけでお金がもらえるなんて、チョロ〜と飛びついたが、チョロチョロだったのは私で、当たり前だが好きにゲームができるわけでもなく、同じ動作を何度も繰り返したりと退屈な作業を行なっていた。

これは派遣会社から紹介された日払いのバイトで、前日に募集があれば応募して行くというシステムだった。

いつもは朝から夕方までだが、ある日、少し特別な募集があった。

「夜11時〜朝7時まで」

これを見た私は、深夜なら時給も上がるしいいかなと思い応募してみた。
するとものの数分でぜひお願いしますと返信があり、参加が決まった。

そして当日、夜10時40分。デバッグ会社の最寄駅に、同じ派遣会社に登録している参加者達が集まってきた。

名簿を持った点呼係と呼ばれる参加者に声をかける。若いフリーターばかりかと思っていたが、点呼係は40歳くらいのオシャレを勘違いしたようなメガネをかけた男だった。

参加者は全部で8人。女性は私含め2人だけで、美人な人妻って感じの人だった。

全員揃ったところで、会社に向かう。

皆初対面のため、会話はない。

途中、ちっちゃいhydeみたいな人がコンビニに入った。

hydeさんがそもそも大きくないのにそれより小さいのであえて「ちっちゃいhyde」と呼んでいる。

ていうか集団で歩いているのに断りもなくコンビニに入るか?

点呼係のオシャメガ(オシャレメガネの略)も驚いた様子だったが、誰も何も言わないのでそのまま進んだ。

その後、大きな横断歩道を渡ろうとした時、先頭を歩いていた男が、青が点滅したのに渡り出した。大きめの横断歩道なので、明らかに途中で赤になってしまう。

後ろを歩いてた私たちは止まった。先頭の胸ポケットになぜか耳かきをいれた男は誰もついてきていないことに気づいたが、引き返すのが格好悪かったのかそのまま走った。車道の向こう側でこちらを振り返る。胸ポケットから見える耳かきのフワフワが揺れていてウケる。

そのまま待てばいいのに、男は意を決したように歩き出した。信号が再び青になった頃には耳かき男の姿は見えなかった。

駅から徒歩5分ほどの会社に向かうだけなのに集団行動のできなさを遺憾無く発揮していくメンバーたち。

オシャメガもかわいそうに。点呼係は一応この深夜デバッグ隊のリーダーということになるので、もし誰かが粗相をすれば派遣会社にも、デバッグの会社にも謝るのはオシャメガなのである。

私たちが会社に到着したとき、耳かき男が入り口で立ち尽くしていてまたウケた。

深夜のため入り口がしまっていたのだ。

オシャメガが内線で連絡し、デバッグの会社の方が来てくれた。休日のホストって感じの方だったので以下ホスト。

「あれ?8人って聞いてますけど」

ホストは剃りすぎてもはや無い眉毛をひそめた。オシャメガがあわあわと話しだす。

「あの、ひとり、途中でコンビニに…。駅ではいたので来ると思うんですけど…」

来なかった。これは朝まで来なかったので先に言っておくが来なかった。

あの夜、ちっちゃいhydeは駅に来てコンビニに寄っただけなのである。何しに来たん・・・?

そんなこんながありつつ、やっと業務開始。やるぞ!

・・・と思いきや、2時まで待機ですと言われた。

夜11時から、3時間待機?当たり前だが一応業務中なのでネットもテレビもない。隣には2リットルペットボトルを持っている男と、手を永遠にグーパーしている男が座っている。この状態で3時間。“終わり”かよ。
死んだ目でひたすら時計を見つめた。

ここで、なぜ3時間待機なのか、また今回なぜ深夜なのか説明しておく。

とあるアプリゲームをユーザーが眠っているであろう深夜のうちにメンテナンスする。
メンテナンス後、デバッグ担当の会社(私たち)にデータが送られてきて、メンテナンスやアップデートが正常に完了したか確認する。
不具合があれば直し、何もなければそのままメンテナンス完了。

待機の3時間はゲーム会社が全力でアップデートを行なっているのだ。

待機している間、隣の2リットルペットボトルの男は、飲むこと以外やることがないので仕方ないのかもしれないが、夏場の野外より小まめに水分補給を行なっていた。その度に「ゴブッ」と音をたてて飲むので不快だった。「妖怪ゴブ飲み男」と名付け、ゴブッとなる度「妖怪ゴブ飲み男だから仕方ない」と心を落ち着かせた。

果たして無事に朝の7時を迎えられるのか。

まだデバッグすら始まっていないが、長くなってきたので続きは後半に。

次回

・デバッグスタート 〜お前ら話を聞いてたか〜
・休憩〜地獄の1時間〜
・朝方〜睡魔との攻防〜

以上の3本でお送りします。

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