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飯塚幸三という犯罪者

旧題:飯塚幸三という人間
最近、裁判が開かれたので話題になっている通称「池袋暴走事故」まわりについて述べたコラムだ。
タイトルがこうなっている理由は、最後まで読んでもらえれば分かると思う。


池袋暴走事故とは

知らない人も居るかもしれないので、最初に触れておく。

正式な通称は「東池袋自動車暴走死傷事故」らしい。
2019年4月19日に、東京都の東池袋で自動車の事故が起きた。
加害者は飯塚幸三だ。

Wikipediaには、以下のようにある。

高齢者の運転する乗用車が暴走して交差点に進入し[2]、歩行者・自転車らを次々にはね[1]、計11人を死傷(母子2人が死亡、同乗していた加害者の妻を含む9人が負傷)させた[7]。

注意! 簡単に言うと、Wikipediaは誰でも情報源で確認できる情報=書いてOK、という思想に基づいて編集される(皆が買うことのできるある本が、内容が嘘まみれだったとしても、そのまま引用するなら載せてOK)。

つまり、事実があるとは限らない。

このWikipediaページで気をつけたい単語は「暴走」だ。

暴走には「むやみに乱暴に走ること」という意味もあるし、「制御できない状態」という意味もある。

「加害者の車が制御できなくなって猛スピードとなった」、「加害者が車を猛スピードで走らせた」の2パターンに読み取れる文章だと注意しなければならない。どっちが真相かは、後述する。

騒がれる理由

世間で騒がれる理由を簡単にまとめると、以下の3つになる。

  1. この事故は11人の死傷者を出した大きい交通事故なのに、飯塚幸三は逮捕されなかった

  2. 報道の際に、容疑者ではなく肩書(元院長)で報道された

  3. 自分は悪くないと主張し続けている

3つ目は少し先で触れるので、先に1つ目と2つ目の理由を見よう。

1.飯塚幸三が逮捕されなかった

実は、逮捕には理由と必要性が要る。
理由とは、高確率で加害者であること。
必要性とは、証拠の隠滅や逃亡を防ぐこと。

飯塚幸三はこの事故により骨折し、直後に救急搬送されて病院に入院した。

警視庁は、状況的に逃亡はありえない、逮捕すると取り調べに耐えられないと判断して逮捕を見送り、証拠品などは確保して、回復を待った。

飯塚幸三は当時87歳。
老人は意外と「骨折→寝たきり→死亡」のパターンが多い。
このときの警視庁による逮捕見送りの判断は一応筋が通っている

退院後も事情聴取に素直に応じていたため、逃亡・証拠隠滅を図る恐れはないと判断して逮捕せず、11月12日に過失運転致死傷容疑で書類送検した。

私には、退院後も逮捕しなかったのは不適切に感じられる。

事情聴取に素直に応じていたと言っても、そう見せているだけの場合もありえる。
退院後は逮捕したほうが確実だと感じられる。
(ただ、当時の飯塚幸三の状態や環境を第三者が把握できないので、どちらが正しいと言っても悪魔の証明問題となってしまう)

2.報道に違和感

現行犯同然だったにも関わらず、報道には容疑者ではなく、肩書敬称(さん付け)が使われたことが違和感の原因だ。

有名紙の報道を見てみよう。

読売新聞は「警視庁による事情聴取が行われておらず、刑事手続きに入っていない点を考慮して実名+肩書呼称で報道したが、事故の重大性から敬称は使わなかった」と言っているうえ、事情情報があったと判明すると容疑者へ変更した。これは一応筋が通っている。

事故当初、朝日新聞、毎日新聞、東京新聞は実名+敬称(さん付け)で、日本経済新聞、産経新聞は匿名で報道し、職歴の裏付けが取れてから肩書に変更した。対応が不適切と思われても仕方がない。

この原因だが、TVを含めた報道各社では明確な規定が無い場合もあるようだ。規定は論理的な理由を基に作るものであり、それに従わない場合もまた、論理的な理由が必要だ。

報道である以上、テキトーなことは許されない。

そして、不逮捕と呼称が合わさり、特別扱いされているイメージを生み出し、世間に上級国民という言葉を広める原因となった。
この事故について「上級国民だから警察やマスコミなどがかばい合っている」と見たのだ。

上級国民とは

一般国民とは違う上級の国民を表す俗語だ。主に、国の上部に関わりがある職業のため、犯罪などに対する刑罰などが軽減される人間の事を指す。
「表社会では見えないがそういうシステムがある」と仮定されてできた造語だ(一応こう述べておく)。

上級国民として挙げられる職業は、各省庁の官僚、政治家、警察や裁判官、検察官、弁護士の上層などだ。

2020年には、黒川弘務検事長の賭け麻雀の処罰が軽いのではないかとして、再び話題に上がった。

公営賭博(競馬など)以外のギャンブル・賭けは違法だ。
賭けは規模と期間で罪の大小が決まるので、常習ではない単純賭博となると罪は軽いらしい。

しかし、公務員は国の職員であるため、他の職業よりも違法行為の罰則は厳しい。公務員の中でもより厳正であることを求められる検事が、それも下の見本とならなければならない「検事長」が違法行為をした。
しかも、コロナ禍の外出自粛制限中にだ。

減給や戒告より重い懲戒処分が下されるのが普通だが、下されたのは懲戒処分ではない訓告だった。
厳重注意の一つ上だが、実質ノーダメージ。
本人(当時63歳)はことが大きくなってしまったため辞職したが、退職金も満額だった。

このように、上級国民というものを伺わせるような事例が幾つかある。
しかし、実態は省庁内の人間関係や忖度だろう。

話を飯塚幸三に戻そう。

飯塚幸三は経済産業省の官僚だった(当時は通商産業省)。
経産省に属する公的研究機関に所属し、最後は院長まで昇進した。
元院長という肩書はここから来ている。

また、クボタの副社長や顧問になっている。実質天下りだ。

総合的に見て、上級国民と言われる区分に十分入る

無罪主張

世間を騒がせる理由の3つ目、飯塚幸三の主張について話そう。
以下は刑事裁判の内容だ。

飯塚幸三の主張は、自身の無罪である
・アクセルが戻らなくなり、人をひいた(事故直後の息子との電話内容)
・車に何らかの異常が起きたと思う

それに対して検察は、事故車の分析結果を述べた。
「事故直前(2019年3月)の点検でもアクセルなどに異常は確認されておらず、事故当日の記録にも異常が起きた記録・ブレーキペダルを踏み込んだ記録はない

記録というと分かりづらいかもしれないが、車の内蔵コンピュータには、動作の記録を保存する機能がある。
飛行機のフライトレコーダーのようなものだ。
メンテナンスや今回のような事故のチェックに役立つため、搭載している。

事故を目撃した証人もそれを裏付ける証言をしている。
「事故当時、加害車両は相当な速度を出しており、減速した様子はなかった。ブレーキランプも点灯していなかった」

捜査員(警視庁の交通事故解析研究員)は、以下のように述べている。

「被告人の車は事故現場手前から、事故現場へ向かうにつれて次第に加速していった」

「事故車両のデータ記録にはアクセル・ブレーキの電気系統の故障記録は確認できなかった。また、事故で破損した箇所を復元するなどして走行させたところ、ブレーキは利いた。仮に電気系統に異常があったとしても、ブレーキペダルを踏めば減速できたはずだ」

検証のプロが普通にブレーキは動いたと言っているのだから、ド素人の飯塚幸三の発言はおかしい。

飯塚幸三の主張は当初から一貫している。
しかし、言い訳でしかない。
しかも、現実とは異なる。
飯塚幸三は、事故当初からボケていて運転に不適切な状態だったか、保身のために嘘を付き続けている。

この姿勢が、世間から批判されるわけだ。
いい加減にしろ、と。

(裁判がこのまま行くと、本人の認知能力の低下が招いた事故として決着が付く可能性がある。つまり、有罪判決が下りないかもしれない。
意図的に暴走レベルまで加速し、その結果である事故の責任から逃れようとは、大変卑劣だ。)

トヨタの怒り

ネット上ではプリウスミサイルというスラングができた程だからご存知かもしれないが、飯塚幸三の乗っていた車両はトヨタのプリウスだ。

プリウスはシフトレバーの操作が分かりづらい、しづらいという欠点が以前から指摘されている。
しかし、飯塚幸三の事故には全く関係ない

最近は、車の電子化が進んでいる。
制御系統の電子化もそうだが、ユーザが直接操作するカーアクセサリなどの拡張もかなり進んでいる。(アホな日本の一部メーカーは遅れているが)

当然、電子化した機能のテストは十分にされる。
特に、故障が起きると致命的な箇所は重点的にテストする。
プリウスミサイルなんかには、なりようがない。

仮にミスがあったとしよう。
捜査員が再現できないなんてありえない

そんな手塩にかけた製品を販売しているトヨタは、大変ご立腹である。
飯塚幸三がプリウスに対して有る事無い事言って、結果的に誹謗中傷されているからだ。
ここまで来ると、流石に飯塚幸三に対して裁判を起こすかもしれない。

最後に私見

飯塚幸三が確実に日本に貢献したと言えるのは、事故後の運転免許証自主返納の増加と、高齢ドライバー対策の法整備だ。
元院長時代は知らない。

皆さんは上級国民に対して様々な意見を持っていると思うが、上級国民という制度は実質的に無い。
全ては日本の忖度体質が悪い
政治的な事柄は、人間関係と利権関係のせいで特にズブズブになりやすい。

飯塚幸三の際は色々とグレーだった。
黒川弘務検事長の例は、完全に黒だ。

各省庁も、報道各社も、論理的に規定をしっかりと設けてそれを公表し、それに従った行動をしたほうが良いだろう。

警察も、例外的な対応には警察自ら報道の機会を設け、先じて発表すれば、世間から理解されやすくなるだろう。

最後に、あまり公に色々と言えない身分なので、ここで言っておく。
いい加減にしろ、飯塚幸三。見苦しいぞ。
自身の過失を認めて早急に適切な対応をすれば、表に出られないような事態にはならなかっただろう。
家族も含めて死刑にしろなんて暴言も吐かれなかったはずだ。
今からでも過失を認め、改めての謝罪と賠償をする方が賢明だ。

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