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シナリオ「トニーにほえろ」

過去に書いてたシナリオ公開シリーズ!!
今回もせっせと書き溜めてた2017年の作品。てか、これはモデルがいてそのヒトをキャストにしてちゃんと作品として完成させたかったのですが…いなくなってしまわれました(涙)

ひとりでもやってみようと試みたのですが、動画で一人二役は撮影も編集もそりゃもうタイヘンで…

今からでもいい!そのヒトじゃなくてもいい!
キャスト募集中♡♡♡

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『トニーにほえろ』

   トニー(30)…フリーター
   女神(年齢不詳)…トニーの家に住んでいる

(音楽)
   ♪ダンス芝居コントなんでもできる
    舞台立てば彼のオンステージ
    だけど今はただのフリーターだよ
    遠慮してるうちに気づけばじいさんだよ
 
   女神、トニーの帰りを待っている様子。ハッとなり玄関の前にニコニコして立つ。
   やがてトニー、肩を落とし入ってくる。
   その様子を見て、自分も同じポーズでトニーについていく女神。
   椅子に座るトニー。
 
女神「彼の名はトニー。アルバイトで生計を立てている30 歳。真面目で勤勉なのでどんな 仕事も一通りはこなす。でも、この様子だと……」
 
   トニー、カバンの中から就職情報誌を取り出しめくり始める。
   ひとつの広告に目が留まり、携帯を取り出す。
 
トニー「……あ、お忙しいところ失礼します。わたくしトニーと申しまして、求人募集の記 事を拝見しましたのでお電話したのですが……」
女神「……やっぱり」
トニー「あ、大丈夫です!自分、なんでもやるんで!……え?あ、女性限定でしたか ……すみません、失礼しました。はい、失礼します」
  
   頭をさげながら電話を切るトニー。
   広告をじっとみる。そして雑誌を投げる。
   驚いて逃げる女神。
 
トニー「どこにも書いてねーし!女性限定なんて、どっこにも書いてねーし!」
 
   トニー、おもむろに腕立て伏せをはじめる。
 
トニー「ちくしょー、ちくしょー、ちくしょー」
女神「今日はまた、一段と深いわね……」
 
   トニー、腕立て伏せの次は腹筋。 それをじっと眺める女神。
 
女神「実は彼には、やりたいことがあるんです。それは、自分のつくる芝居で世界中の人た ちを笑顔にしたいという夢。若いころから台本を書いたり身体づくりのワークショップに 参加したりして、夢への努力を続けていたのを私はずっと見てきたわ」
 
   柔軟をはじめるトニー。ありえないポーズを連続させる。
 
女神「でもね、なかなか日の目をみなかった。そしてだんだん、目の前の生活に追われるよ うになり……今ではお金を得る生活が自分の中心になってしまっている。あのころの感情 を忘れてしまったままね……」
 
   さみしそうにトニーをみつめる女神。
   ふと動きを止めるトニー。おなかが鳴る。
 
トニー「腹減ったな……」
 
   カバンの中から財布を取り出し中身を確認する。
 
トニー「さ、さんびゃくえん……」
 
   ガックリと座り込むトニー。

トニー「……なにやってんのかな、俺。あんな年下の社員に馬鹿にされてさ。ふざけんじゃ ねーよ、俺だってカネのためなんだよ!すきでやってんじゃねーよ!」
女神「じゃあ好きなことってなによ!」
トニー「え?」
 
   あたりをキョロキョロと見回すトニー。
   ちょっとビビる女神。
 
トニー「だれ?」
女神「え?聞こえちゃった?」
トニー「うわっ!」
 
   女神の声を聴き、後ずさるトニー。
 
トニー「ごめんなさい、すみません!来週には必ず払いますから!」
女神「はぁ?」
トニー「大家さん……ですよね?」
女神「ちがうわよ!わたくしのどこをみて大家さんなどと」
トニー「(キョロキョロしながら)え?じゃ、じゃあ誰なんだよ!!」
女神「ったく、大家さんだったらみえるはずだろーが!」
トニー「ひぇーっ!ゆ、ゆうれい!」
 
   取り乱してあちこちに隠れようとするトニー。
   その様子を呆れてみている女神。
 
女神「取り乱すな!」
トニー「(ピタッと止まる)」
女神「そおぉ、いい動きだ。これまでの努力の集大成、ね」
 
   女神の手の動きに合わせて、中央に移動してくるトニー。
 
トニー「……え?」
女神「コホン。どういうわけか、私の声が聞こえるようになったようね。それはもしかする と、あなたが本当に今をどん底と思っているからかもしれないわ」
トニー「……どん底か……はっきり言うな(苦笑)」
女神「でもそれはあなたにとって……」
トニー「(笑いながら)どん底……なるほどな。いやぁ、わかってはいたけど、人に言われ るとダメージでかいな( 笑) そこまで言わなくても……」
女神「シャーラーップ!」
トニー「!」
女神「人の話をききなさーい!だからあなたは今まで失敗してきたのです」
 
   その剣幕に、思わず居住まいをただすトニー。
 
女神「いいですか、これはチャンスです。あなたが本来のあなたを取り戻すチャンス」
トニー「本来の……俺?」
女神「そうよ、そしてこれからの人生に輝きを取り戻すためのね」
トニー「あぁ、はあ( 笑) 」
女神「ふん、真面目に聞いてないわね。じゃあ言うわ。あなた、今日仕事をクビになって悔 しい?」
トニー「当たり前だろ!」
女神「(ムカッ)誰に向かって……まあ、いいわ。ま、悔しいわよねクビになったんだから」
トニー「クビクビいうんじゃねえ!」
女神「(苦笑)わかったわよ。……じゃあ。もう一度雇うと言われたら、行く?」
トニー「そりゃそうだろ」
女神「本当に?そんなにその仕事を愛していたの?」
トニー「愛するって……はぁっ?」
女神「本当にしたいことはその仕事なのか、と聞いているの」
トニー「何言ってるんだよ」
女神「いーい?ここは大事なとこだからよーく聞きなさい。あなた、もし今、時間的・経 済的・物理的になーんの制約もない状況だとしたら、何がしたい?やっぱり、その仕事が したいの?」
トニー「え……」
 
思いを巡らせるトニー。
(ゆっくりバージョンの音楽)

トニー「そんな……急にそんなこと言われても……」
女神「あなたの本当にやりたいことは他にある。しかし、生活に追われ、お金に追われてい るうちにその、本来の目的を忘れてしまった」
トニー「……」
女神「舞台に立つこと」
トニー「な、なんでそれを!? 」
女神「あなたがいくつ仕事を変えても、長続きするわけがないわ。だってあなたはその仕事 を望んでいないんだもの。あなたの本当の気持ちが。魂が」
トニー「……」
女神「そろそろ目を覚ますときよ」
トニー「……おれの、おれの何がわかるってんだよ!くそっ」
 
   逃げ出すトニー。
 
女神「待ちなさい!! 」
 
   追いかける女神。
   トニーがハァハァ言いながら入ってくる。
   そのあとにゆっくり現れる女神。
 
トニー「なんなんだよ、一体!」
女神「あなたにはわからない世界がまだまだあるのよ。でも」
トニー「?」
女神「あなたが知ろうと思えば、知ることができる」
トニー「はぁ?」
女神「ここで逃げることには何の意味もないのよ」
トニー「うるせぇ!消えろ!」
女神「ホントに消えてもいいの!それならあなたは今のままよ。ずっと残念なフリーター」
トニー「さっきから黙って聞いてりゃ……」
 
   あたりかまわず蹴りを入れるトニーだが、全然見当違いの方向。 疲れて地面に突っ伏す。
 
トニー「ちくしょー!」
女神「気が済んだかしら」
トニー「(間)そうだよ!あんたの言うとおりだよ!でも……仕方ないだろっ」
女神「仕方ない……そうやってずっと、生きていくのね。言い訳しながら……」
 
   ハッとするトニー。
 
女神「自分を……そのままの自分を信じる。それだけでいいの。わたしはこれからもずっと、 あなたを見守っているから」
 
   ♪早く気づけよトニー
    今が気づくチャンス最後だよ
    残念なフリーター言われて悔しくないのか

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