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「大人がまずは幸せになること。」 びーんずネット代表金子あかねさん

AIが登場する時代に、努力や我慢ではなく、もっと自由な発想をもって
ひとりひとりに合う教育を選べるような社会にしたいです。

金子あかねさんのプロフィール
出身地:
福岡県北九州市
活動地域:神奈川県川崎市
現在の職業及び活動:びーんずネット代表、親業訓練インストラクター、
産業カウンセラー、国家資格キャリアコンサルタント、
編集者(「青少年問題」編集部)不登校をテーマにしたセミナー、イベント企画・運営。川崎の親子を考える会所属。第7期川崎市子どもの権利委員会委員。不登校インタビュー事例集の出版を主な活動とする市民団体「びーんずネット」を2018年より開始。
出版:不登校インタビュー事例集「雲の向こうはいつも青空」
神奈川県川崎市在住。夫と息子の3人暮らし。
ずっと訴え続けている事:「大人が幸せでいてください」

記者:今日は宜しくお願いします。
金子あかねさん(以下金子、敬称略):宜しくお願いします。

「なぜそこまでして学校に行かなければならないのか?」みんなが疑問をもつことから始めてほしい

Q:金子さんが思い描く夢やビジョンを教えてください。

金子:夢というか、思い描いてる理想、こうなるといいなと思いながらやっていることは「不登校で親も子も悩まなくていいようにしたい」そのために活動をしています。
不登校という言葉さえない、そんな言葉が昔はあったねって言われるような
世の中になることを目指しています。

学校に行ってもいいし、家で過ごしてもいい、どんな所で学び育ってもその子が選んだ所で学べばいいのではないでしょうか。

ホームエデュケーション(学校に通学せず、家庭に拠点を置いて学習を行うこと)や サドベリースクールなど教科がないフリースクールのような特色のあるところもありますし、家で過ごしながら勉強したり、どんな場所でも子どもが健やかに育っていけるのであればいいと思っています。ですので、みんながそんな思いを共有できる世の中になるといいなと思っています。
「不登校」は学校に行っていない現象を表している言葉というだけなのに
不登校になった子どもや親にとって、何か悪いことをしているようなネガティブに受け取られやすいイメージがすごくあります。行った学校が合わなかったというだけの話しです。例えば社会人でしたら、会社が合わなかったら別の会社を選べます。
けれど、学校は合わないとなったら別の学校を選ぶにも引っ越さないとならなかったりするので「合わせなきゃ」と無理したり、先生たちも「何故来られないんだ?」とお互いが努力や我慢することに力が入りすぎるのです。
「何故そこまでして学校に行かなければいけないのか?」とみんなが疑問を持つことから始めて欲しいと思います。

「学校行くのが当たり前」と凝り固まった考えが日本には根深くあります。日本の発展に伴って必要な教育の姿ではあったとは思います。
だけれど、日本の教育だけが昔のスタイルを貫いているように思えてなりません。それこそ、AIが当たり前の時代になっている今、世の中がどんどん変わっていく中で変わらないスタイルを貫くとなると どうしたって歪みが出るはずです。「子どもが適応しなさい!」「子どもが適応するべきだ!」ではなく、もっと自由な発想をもってひとりひとりに合う教育を選べるような社会にしたいです。

大人が変わる必要がある

Q:そのために大事にしていることはどのようなことですか?また、現在はどんな取り組みをされていますか?

金子:そのためには、「固定観念から自由になること」を通して、大人が変わる必要があります。
大人が情報を提供しなければ、どんな学校があってどんな学びがあるか、子ども自身では受け取れないところがどうしてもあります。

情報を渡してあげられる大人になるためには、いろいろな選択肢があることを知っている必要があります。「教育ってこれしかない」とか、「学校へは行かないといけない」「勉強はこうしなければ」という固まった考えというか当然とされる常識などがあると思いますが、自分が経験で得てきた情報や一般常識以外のいろいろな教育があって選べるということを知ることが大事です。ですので固定観念から自由になっていくために親のためのセミナー、勉強会、講座等活動を通して親が変わるお手伝いをしています。

その1つに「親業」という 親子のコミュニケーションのプログラム があり、そのインストラクターの資格を持っているので親業講座を提供しています。

親業では、親子関係は全ての関係のベースになります。
そこで信頼関係が築けていけたら、自身の人生を楽しんでいく事ができると思っています。信頼関係というベースを築いていくには豊かなコミュニケーション能力が必要になります。
親が、親をすることについて学ぶってどういうこと?と思いますよね?
子どもを育てるという事は、本当は物凄い一大事業だけれども、親は子どもが産まれたと同時に親になりますよね。けれども親としては素人なわけです。
どんな風にコミュニケーションをとって、親は親として、子どもは子どもとして自立をしていけばいいのかを悩みます。その時に必要なコミュニケーションを知っておくことができたらとても安心できますよね。
私にとっても救急箱のような、困ったときに立ち返る場所のようなものとなったのでこの安心感をいろいろな人に伝えたいと思い活動をしています。

あとは不登校や、発達障害などのテーマで3か月に1回くらいセミナーを開催しています。私自身はファシリテーターとしてゲストの方をお招きして、皆さんで語り合っていただくようなスタイルです。その他、座談会をやったり、気軽なお茶会をしています。
「どこにこの気持ちを話したらいいのかわからない」という思いを持った
親御さんたちが来てくれます。大勢の前で話すのは苦手で個別に相談したいという方にはカウンセリングを個別にさせて頂いたりもしています。

びーんずネットのサイトで不登校に携わる方たちの事例集を2019年3月に紹介しました。
不登校を経験した当事者の方やご家族、支援している方にインタビューしてまとめたものをHPで販売しています。
それを通して私たちの活動を知ってもらったり、それぞれの思いを知っていただき少しでも不安が減り楽になる方が増えるといいなと思っています。

まず、親が幸せになる

Q:日常で気をつけていることは何ですか?

金子:1番には自分が好きなことをして健やかでいようと思っています。
嫌なことも前向きにとらえながらできたらいいなと思います。

びーんずネットのキャッチフレーズとして「まず、親が幸せになる。」というのがあります。子どもにも家族にも、周りの人にも、どんよりした暗い気持ちが伝わってしまうのは残念だと思うので、まずは自分自身が健やかでいることを意識しています。また、私の立場上いろいろな方のお話を聞くことが多く、その中では辛い、苦しい状況を聞くことも少なくはないです。その際その人の状況を何とかしてあげようではなく、辛さをそのまま受け止められるような状態でいたいと思っています。知っている情報は提供しますが、アドバイスはしないように気を付けています。セミナーなど開催する時も、参加される方々が相手の話しをそのまま受け入れられるような場つくりにも力を注いでいます。

良かれと思ったアドバイスが時には人を傷つけてしまう場合もあります。私の場合も「辛い状況にあるんだね」とそのままを受け入れて欲しかったです。アドバイスをされると、「今の状態では、それではダメだ」と言われている気がします。元々自分でもダメだと思っているので、さらに追い打ちをかけられている感じがして苦しくなるのです。不登校の子を持つ親はなんとかしたくて本など読んだり、元々頑張っているんです。不登校で悩んでいる人達がどういう風に向き合っていったのか、どうなっていたのかという話しをただ単に聞きたかったのです。以前専門家の人が書いたものも読みましたが、ピンと来なくて、当事者や保護者の声が書かれた本を読んだ時に「大丈夫なんだ」と思えて安心したのです。ですから、私もそういうものをつくりたいなと思い先ほどお話させていただいた事例集を出させていただきました。

学校とか相談機関に行ってもわかってもらえず「親であるあなたが悪い」と責められている気持ちになったという声を聞きます。「不登校にさせた」と言われて「不登校にしちゃった」と自分を責めてしまいます。でもそうであってはいけないのです。親はすでに十分に自分を責めていますので、責めることから脱出でき、違う考えやいろいろな選択肢が持てるようになる必要があると思っています。


本当に大切なこと、生きるって何だろう?


Q:夢を持つようになったきっかけは何ですか?

息子が小3の夏休みの終わりから不登校になったんです。漢字を書くのが嫌で泣いていました。黒板の文字をノートに移す時に、形をつかめないのです。後でわかることですが、書くことに困難がある学習障害があったのです。これは本人の努力不足ではなく、「特性」なのですが、そのことがわかるまで漢字が書けないことにより「僕は勉強できないんだ」「学校に行ったら、僕の字を笑われた」と否定的に物事を受け取るようになりました。そのうちに学校へ行かなくなり、家で引きこもるようになり「僕は生まれてきた意味が無い。生きている意味が無い」と言ったのです。子どもにそう言われた時は一緒にどんよりと沈みました。この子を産んだ私を非難されているような気持ちになったからです。それがきっかけでしょうか?学校に行かないとなった時に、この子にとって何が大事なのか?子どもにとって、親にとって、自分にとって本当に大切なことは何なのだろう?生きるって何だろう?ということを本当に考えました。その時は必死だったので客観的にみられなかったけれど、その状態を抜けて、サドベリースクールに入りました。授業もなくテストない先生もいない学校で5年間過ごしましたが、その5年間もさらに親としていろいろなことを考えました。


人生を楽しんで欲しい

Q:いろいろなことを考えた結果、気づいたことは何でしたか?

子どもが9歳なのに人生を絶望的している姿を目の当たりにした時に、悲しかったし、諦めている、絶望している、死にたいとは言わなかったけれどきっと思っていると私は感じていました。命に関わる子どもの危機に家族で取り組んだ時に、本当に大切なことは何だろうと、とてつもなく考えました。人生ってもっと良いものだしこれからなのにと思いました。どうしたら人生を楽しんで生きることができるかと思った時に「漢字が書けなくても、学校に行かなくても、とにかく元気に人生を楽しんで欲しい」それだけが残ったのです。
地球に命を持って生まれてきているのは凄いことで、80年くらい生きる意味はあるよと伝えたかった。だから、こうしなきゃ、こうすべきを全部とっぱらって、ただ生きていること、それだけでいいじゃないか!という考えに行きつきました。こう考えることができたことは大きかったです。

学校に通っている子どもだから安心なのかといえばそうとは言い切れません。
その子ひとりひとりが明るく笑って生きていることが大事だと思いました。そんな背景があって「びーんずネット」は生まれました。

Q:びーんずネットの名前の由来を教えてください。

私がソラマメが好きということもあるのですが、お豆がさやに入っているのをイメージしてくださいね、家族 のひとりひとりが独立して一つのさやに入っているのが「家庭」の様子が重なって今の活動にピッタリ合っていると思ったからです。不登校と言ったら、社会からはまだまだネガティブ、可哀想、気の毒、そういうイメージで見られています。辛いのは確かだけれどそんなふうに見られたくないですね。こんなに悩んでいるけれど明るく、楽しく、語れるし、そういう親しみやすい場を用意して待ってますよという思いで、気楽に来てくださいという感じでやっています。

Q:最後に座右の銘を教えてください。

座右の銘ではないけれど自分たちがずっと訴えていきたいことがあります。「川崎市子どもの権利条例」の会に参加していた時に知ったのですが、この条例が制定されたとき、子ども委員会の子たちが大人に対して「まずは大人が幸せでいて欲しい」というメッセージを出したそうです。大人がしんどかったり幸せでないと虐待が起こったりして弱いものにしわ寄せがいってしまいます。だから「まずは大人が幸せでいてください」と。今の時代、子どもが夢や希望を持ちにくい世の中であるといわれていますが、大人が自分の人生に集中して輝いていたら、子供も夢や希望を持つかもしれません。私自身も常に意識していたいし、そんな大人が増えることで子ども達が生きやすくなるのかと思っています。

記者:子ども達のためにも、大人達が幸せであるという環境を作っていきたいと思いました。本日は貴重なお話をありがとうございました。

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【編集後記】

今回のインタビューを担当した高柳、見並、善家です。
ご自身の悩み葛藤から新たな道を開拓され世の中や誰かを責めることではなく、ひとりひとりを尊重する柔らかい力強さを言葉の一つ一つから感じました。自分や家族だけではなく、同じような悩みを抱えた方の安心や幸せを考え、幸せである大人を増やしていくことがこれからの未来を担う子どもたちに必要なことではないかと感じました。新たな親子の関係性が開かれていくようでワクワクする時間でした。